14「対決、サキュバス(1)」

 修一は、今朝のニュースを見てから、不安を感じて、

ブレスレットを持ってきていて、既に身に着けていた。

大通りに出ると同時に、鞄を収納空間に仕舞い、黒騎士の鎧を身にまとった。


 あと意味があるかは分からないが分析眼を使う。魔獣なら意味はないが、

相手が、人間が変身しているなら何か効果があるんじゃないかと言う気がした。

ただ数秒で出るはずの、分析結果が中々でない。


 するとナタリアは、


「なんや、その鎧、もしかしてアンタも冒険者やったんか」


なおナタリアは秋人が冒険者であることは知っている。

その秋人も、杖を構え戦闘状態に入った。


 そしてナタリアも、鞄を地面に置くと、宇宙生物のような姿に変身する。

彼女の制服は、変身能力者用の服なので、変身に合わせて、大きくなるので、

破れたりすることはない。


 更に修一は、メタモルブレードを装備した。


「アンタ、ソウルウェポンも使えるんやな」


と言うナタリア。

そしてサキュバスは、目からの光線をやめて近接攻撃を仕掛けてくる


「「「!」」」


最初の一撃は避けつつも、先程までとは違って、

三人はサキュバスに攻撃を仕掛けた。


 修一は


「セイヤッ!」


と言う掛け声とともに、サキュバスに切りかかる。

ナタリアは無言で、長く鋭い爪で引っかきサキュバスに、大きな傷を与える。

秋人は、


「ファイヤーシュート!」


と炎属性の魔法攻撃。なおどの属性が有効化は分からないので、


「ウォーティシュート!」

「ウィンドカッター!」


と言う様に、有効な属性を見定めようと、

違う属性の魔法を順番に使って攻撃をする。


 三人からの攻撃によりダメージを受けたのか、サキュバスはよろめいた。

そして修一はその隙を突いて、メタモルブレードで更なる攻撃を加える。

ナタリアは、長い尻尾を使って連続攻撃を仕掛け、

秋人は、


「炎が一番効いてるね」


と有効な属性を見極め、


「ファイヤーカノン!」


さらに強力な炎魔法を繰り出す。


 なお修一は、亮一から魔物化した使い手への対策は聞いているが、

魔物化した姿は人によって、異なるから、当然戦い方も異なるが、

ただ一つ恐らく共通して効果があると思われる方法がある。

ただ、それはまだ使えない。

だから修一は、とりあえずメタモルブレードで戦っている。


 そしてサキュバスの攻撃を修一たちは避けつつ、隙を見て攻撃を叩き込み続け、

遂に魔物は膝をつく。


(随分と、弱いな……)


と拍子抜けしつつも、


(今なら……)


修一は、例の方法を試そうとした。


 だがその時だった。サキュバスの体から触手が素早く伸び、

修一の腕に絡みつくと、そのまま体を引き寄せる。

あまりの素早さに、避ける事も抵抗もできず、

そしてサキュバスは修一の首筋に噛み付いた。もちろん牙は鎧を貫通した。


「くっ……」


修一は痛みを感じ、すぐに引き剥がそうとするが、

首に食い込んだ牙は離れないし、「ヒーロー」の衝撃波を使ってもビクともしない。


 この状況に、


「修一君、今助けるから」

「辛抱してや!」


と秋人とナタリアも加わって、サキュバスを引き離そうとしてくれるが、

なかなかうまくいかない。


 だが突如として、サキュバスは修一を解放し、衝撃波を放って三人を吹き飛ばし、

結果として間合いを取った。


「修一君、大丈夫。イテテ……」

「イテテ……大丈夫か……」


と言う二人に、


「ああ……そっちこそ、大丈夫か」


と修一は言いながら、嚙まれた場所に触れると


「あれ?」


と素っ頓狂な声を上げる。


「どうしたの。修一君?」

「傷がないんだ……」


サキュバスの牙は、鎧を貫通していたから、

穴が開いていそうなのに、それがなかった。

その上、もう痛みが消えている。


「とりあえず、回復魔法を使うね」


と秋人は言って、修一に回復魔法を使う。


 一方、サキュバスは修一たちを吹き飛ばしてから、

動きを止めていた。今にも何かしそうな雰囲気があり、

そして丁度、修一に回復魔法を掛け終えたところで、

サキュバスは動き始めた。ただ間合いを維持したまま、

立った状態で、宙に浮かび修一たちの、特にナタリアを睨みつけ、

再び目から光線を撃ってきた。


「うわっ!」


と声を上げながら避けるナタリア。


 光線は目だけでなく、両手の指をこっちに向けてきて、

それぞれの指からも、光線を振ってくる。


「うわわわわわ!」


光線は修一たちの方にも飛んできて、必死に避ける修一たち、


「これは、無属性の遠距離攻撃系のスキルだよ」


攻撃を避けつつも、冷静に分析する秋人。


 更に、サキュバスの背に炎、氷、岩石、竜巻みたいなものや

プラズマが現れて、それぞれが、射出される。

竜巻やプラズマは、それ自体は飛んでこないが、

代わりに竜巻からは真空刃、プラズマからは雷が飛んでくる。


 引き続き目や指からの光線も発射されているので、

砲撃の雨あられと言う感じで、敵は接近主体の攻撃から、

遠距離主体の攻撃に切り替えたようであった。

ただ、先ほど膝をついた時とは打って変わって、元気そうに見えた。

あと攻撃は修一や、秋人の方にも来るが、

やはり、ナタリアの方を優先しているようであった。


 そして修一達、正確には既に遠距離攻撃をしている秋人以外も、

遠距離攻撃に切り替える。

ナタリアは、口から赤い光弾を発射する。

それなりに威力はあるが、ただ接近攻撃よりも弱い。

修一は、メタモルブレードをショットガンに変形させ、光弾を撃った。

なおバーストブレイズは忘れていないが、


(アレを使うとやり過ぎる気がするからな)


と言う思いと、インフェクラウンの時と違い、

敵に対して、そんなにムカついてないというのがある。

もちろん、不味くなったら使うつもりであるが。


 更に秋人は、敵の攻撃を避けながら引き続き、

炎系の魔法攻撃を続けていたが、


「なんだか変だな」


さっきに比べて魔法攻撃の効きが悪くなっていた。


「弱点属性が変わってる……」


魔獣によっては、見た目からは、あまり分からない形態変化をする個体もあり、

弱点属性が変わってしまう事もある。


 ここで修一は、相手の攻撃を避けつつも、


「急に敵の動きが変わったのって、俺が噛まれたのと関係はあるのか」

「さあね」


確かに、修一に噛みついたことを境に変わっているから、

そう言う考えを抱くのもおかしい事じゃない。

それに修一は噛まれた時、なにかが吸われたような感じがした。

ただ、血を吸われたというようなものじゃなく。

自分の力を吸われたような感じだった。


(俺の生体エネルギー的なものを吸って、力を得たというんじゃないだろうな……)


ふとそんな事を、考えてしまった。


 一方、秋人は、有効な属性を割り出すために、

先ほどと同じく、様々な属性の攻撃魔法を使い、


「今度は、水が弱点みたいだね」


と弱点属性を割り出し、


「フロストストライク!」


魔法で巨大な氷の塊を生成すると射出する。

氷塊は、サキュバスの攻撃をものともせずに向かって行く。

しかも、結構な速度という事もあり、避ける事も出来ずサキュバスに命中する。


「キシャァァァァァァァァァァ!」


と甲高い咆哮をあげるサキュバス。

氷塊は命中と共に、冷気を放出する。塊により打撃だけでなく、

冷気によるダメージも大きいようであった。


 弱点属性で攻撃ができるのは秋人だけだが、

しかし、それを割り出したことをきっかけにして、状況は修一達に傾いた。

そして攻撃を続けていると、

宙に浮いていたサキュバスが、地面に降り、再び膝をついた。


(今度こそ……)


と思ったが、さっきの事もあるので、注意して、

もう少し間合いを取る。亮一から教えてもらった方法は、

遠距離からでもできる事である。


 しかし次の瞬間


「消えた……」


サキュバスが姿を消したのである。次の瞬間、


「うわっ!」


と言う秋人の声、急いで秋人の方を向くと、

サキュバスは、今度は秋人を捕まえで、首筋に牙を立てていた。

どうやら転移して、秋人を襲ったようだった


「秋人!」

「秋人君!」


今度は、修一とナタリアが、秋人を助けようとしたが、

サキュバスは、秋人に噛みついたまま、

炎や氷、岩、真空刃、雷と言った属性攻撃を使ってくるので、

中々近づけない上に、ようやく近づいて、引き離そうとしても、

ビクともしなかった。


 だが修一の時と同じく、突如としてサキュバスは、

秋人を解放した。しかし今回は衝撃波を使わず、転移で間合いを取った。


(今度は、どうする)


さっきの事があるので、警戒して修一たちも移動し、更に間合いを取るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る