6「更なる犠牲者」
マチルダが増える形で、再びリビングに集まる面々、
なおナタリアが、返しにきた服は、そのままマチルダの服になった。
幸いサイズは合った。なお修一、秋人の目隠しは既に取られていて、
「お前、良く先生だって分かったな?」
「いや、単純に以前に、先生が変身した時に立ち会った時があるから」
余談であるが、秋人とマチルダは、秋人が高校に入る前から面識がある。
そして、騒ぎを聞きつけたご近所さんには修一が応対して、
どうにか誤魔化した。なお蒼穹の姿は、集まってきた人たちには見られていない。
そして、リビングにてマチルダが落ち着いたあたりで、里美が
「背中に、綾崎さんと同じ魔法陣がありました」
蒼穹やナタリアも、
「私も見たわ」
「アタシも」
男性陣は、目隠しをされていたから、分からなかった。
なお秋人は、サーチで確かめたかったらしいが、
その為には、背中を見せて貰わねばならないので、
この状況では、それは出来なかった。
しかし、マチルダもナタリアと同じく、『真実』の魔法を掛けられているとして、
なぜ修一の家の庭に、来たのかが分からなかった。ナタリアと同じく、
警察から逃げて来た可能性もあったが、
「先生、どうしてここに?」
と修一が尋ねた。するとマチルダが言いづらそうに、
「詳しくは言えないけど……問題が発生して、
解決してもらおうと、先生……桜井君のお母さんに会いにきたの」
「母さんに?」
「前に同じようなことがあって、解決してもらったの」
「そうだったんですか」
修一も知らないことであった。
「でも今日は、母さんは留守ですよ……」
「そうなの……」
と残念そうにするマチルダ。
「連絡は入れますけど……」
連絡は入れるが、留守電であったので修一はメッセージを入れる
その後、修一は、
「先生の身の上に何が起こっているかはわかりますよ。
それは、淫獄の書と言われるものの仕業で……」
「貴方たち、淫獄の書を知っているの……」
マチルダも知っているようだった。
そして横から割り込む形で、ナタリアが自分も被害にあっている事を話す。
「綾崎さんまで……じゃあ、あの変身露出狂が……」
学校には、警察から変身露出狂への注意喚起が、出回ってきていると言う。
「そこまで、話が大きくなってるのか……」
と言う修一に、
「これは早くどうにかしないと、いけないですね」
と里美は言うと、マチルダは、
「先生がいれば、どうにかしてくれるんだけど、前に私もしてもらったし……」
この言葉に、
「えっ!」
と声を上げる秋人以外の面々、ナタリアの魔法陣を知った時、
うろ覚えとは言っていたが、どうにかできそうな素振りは見せなかったからだ。
功美の事は、置いておくとして、マチルダが被害にあってると言う事で、
「先生を、恨んでいる人は少ないだろうから、犯人が絞られる気がするよ」
と秋人が言う。そうマチルダは、生徒を叱ることが少ないのと、
その美貌で生徒に人気があるからだ。
一方、修一は、一つの可能性にたどり着く。
「つーか、東雲が怪しくないが、綾崎や先生のどちらにも逆ギレしてたしな」
「そうだね……でも他にもいるかも」
ここで、ナタリアを逆恨みしてて、尚且つ、古本屋に出入りしている人間で
過去に、マチルダが指導して、尚且つ反省の色がなさそうだった生徒を聞いてみた。
すると麗香を含め、三人の女生徒が該当した。
余談であるが、古本屋と言うくくりを外しても、三人だけだという。
そして、三人とも魔法使いじゃない。
「もしこの中に、犯人がいるとして、どうやって絞り込むかだよな」
と修一が言うと、里美は、
「しかし、魔法の発動には体の一部が、必要なんですよね?」
「そうだよ」
と答える秋人。
「しかし、髪の毛でもいいとの事ですけど、学校という集団生活では、
抜け毛とかでは、本人のものかは分からないのでは?」
確かに、彼女たちの髪の色は日本人離れしてるものの、
この街は国際色豊かだから、当然生徒たちも国際色豊かで、
同じ色の髪の女生徒は大勢いる。
「入手ルートから、絞り込むいいんじゃないですか?
確実に髪の毛とかが手に入れられる人間とか?」
ここで修一が、
「でも、唾液とかでも行けるんだろ?」
すると秋人が、
「行けると思うけど」
「だったらさあ、自販機とか」
校内には、自販機がある
「そう言えば、綾崎や先生も自販機は?」
「よく使うけど」
「アタシも……」
そして修一は、
「気持ち悪い話だろうが、飲み物を飲んだ後、
直ぐにゴミ箱から缶を回収すれば……」
蒼穹は、
「それじゃあ、誰でもできるって事じゃない」
修一は、頭を掻きながら
「そうなんだよな、魔法残滓って奴から使用者の特定もできないんだろ」
八方塞がりの様であった。
取り合えず、秋人が、マチルダに防御魔法をかけて、今日は遅いので、
今日の所は解散とした。そして翌日、結局、妙案が浮かばないまま、
取り敢えず二人に秋人が、再度、防御魔法を掛けて凌ぐしかなかった。
さらに翌日、学校では、街で露出狂が捕まったという話で持ちきりだった。
もちろん、ナタリアでもマチルダでもない。学校の近所に住む年配の女性だった。
「まさかな……」
この件が、淫獄の書と関係があるかは不明だが、捕まった女性は、
迷惑な人として生徒間では有名で、
生徒の多くとトラブルになっているとは聞いている。
加えて蘭子の取り巻き連中が、
「あの女、ホント迷惑な人ですわね。この前は蘭子様に、
煙草の煙を吹きかけてました……」
取り巻き連中の話では、女性が、以前、蘭子にすれ違いざまに、
煙草の煙を吹きかけたそうである。
そのまま、女性は立ち去っていくし、蘭子も気にせず、追わなかった為、
何でそんな事をしたのかは不明だが、
麗香を含めた取り巻き連中には、許しがたい蛮行に違いない。
(つまり東雲には動機がある……)
この事で、絞り込めるあと思ったのだが、
先も述べた通り女性は生徒の多くのトラブルとなっていて、
残りの二人も、女性とトラブルになっていて、
そこから絞り込むのは、難しいようだった。
この件について秋人は、
「まあ、今回はクスリをやってたって話も聞くし、
淫獄の書と関係あるかは分からないね」
とは言っていたが、
「もし、淫獄の書によるものなら、かなりまずいよ」
秋人が危惧するのは、今回、女性が捕まったのが、
昼間だと言うのである。
これまでは、魔法使いでないが故に、効果が薄く、
ナタリアも夜だけであったが、
昼間と言う事は、それだけ力が強くなっていると言う事。
「ナタリアさんは、防御魔法を掛けたから、問題はなかったんだと思うけど」
「まてよ、先生は夜だったぞ」
「それだって、夜になってから初めて、魔法を使ったのだとすれば……」
つまり、効果が薄いのではなく、使った時間帯故とも言えるのである。
その日も進展がないまま、二人に防御魔法をかけて、
取り敢えず抑えたが、修一は家に帰った後、気になって
ネット検索を行った。捕まった女性の写真がネットに上がってないか、
調べたのである。
(白昼、露出狂が出たとなれば、写真を撮ってネットにあげてるだろう)
別にいやらしい目的じゃない。確認したいものがあるからだ。
ただこの街の情報はネットに載りにくいので、
上がっているかは不明だが、幸いと言っていいのか、
とあるネット掲示板に、女性の後ろ姿の写真がを見つけた。
女性が捕まった場所は、聞いていて、
写真の背景は、その近隣なので、間違いないと思った。
(ちょうど背中なのがいいな)
そして画像を拡大すると
(あった……)
例の魔法陣が書かれていた。女性も淫獄の書にやられたようだった。
この事を、秋人に伝えようと、携帯電話に手を伸ばした時、
「何見てるの」
「〇△□×!」
突然、背後から、功美に声を掛けられて、
びっくりして、訳の分からない悲鳴を上げる修一。
「何だ母さんか、いつ帰って来たの」
と言いつつ、画像を消す。あまり親には見せたくない画像だから、
「今、何消したの?」
「いやその……」
追及されたくないので、誤魔化しもかねて
「留守電聞いてくれた?」
「ええ、マチルダ先生が大変みたいね。何があったの?」
修一が吹き込んだメッセージは、時間の関係上
マチルダが、大変な事があって、功美を頼ってきたとだけで、
言っていた。
修一が詳しい話をして、そして淫獄の書の話をすると、わざとらしく、
「そう言えば、あの魔法陣は淫獄の書のものだったわね」
と言ったので、修一は、
「先生は、母さんがどうにかしてくれたって言ってたけど」
疑いの目を向けながら言うと、
「それね、私がやったんじゃないの」
「えっ?」
「あの時、実際に助けたのは、龍宮君って人で」
「龍宮!」
「知ってたの、まあいいわ。今回も彼に頼めば、どうにかくれると思うわ。
ところで住所は知ってるかしら?」
と修一に確認すると、
「知ってる」
「そう、じゃあ彼に会いに九龍に行ってきなさい」
今日まで会う機会のなかった龍宮と言う男。
まさか、こんな時に機会が来るとは思いもしなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます