3「淫獄の書(1)」
少しした後、修一たちとナタリアは、桜井家一階のリビングにいた。
ナタリアはシャツと黒いズボンと言う格好をしてる。
「いやあ、私の服のサイズが合ってよかったわ」
と笑いながら言う功美。
反面、暗い顔のナタリアは、
「ありがとうございます」
と礼を言いつつも、彼女に対し修一は、
「なんでウチの納屋に、しかもあんな格好で」
すると里美が、
「おおかた体力を消費して、変身が維持できなくなってんでしょう」
実際、ナタリアは暗いだけでなく、疲れているようにも見える。
「綾崎さんでしたっけ、貴女が変身露出狂ですね?」
「………」
肯定も否定もせず、黙ったまま気まずそうにするが、
その姿が、事を肯定しているように思えた。
ここで修一が思い立って、
「図書室で俺の事を見てたのも、それ以前に、
俺と秋人が話してるところに声をかけてきたのも、気づいてるかどうか、
気になったからか?」
ナタリアが変身露出狂だとしても、修一が出くわした奴かは分からなかったが、
そう聞いてみた。だが引き続き
「………」
気まずそうに黙ったままで、否定も肯定もしない。
だが修一が、
「しかし、学校じゃ風紀に人一倍うるさい風紀委員が、
学校の外じゃ、風紀を乱す露出狂とはな。まったく世も末だな」
と言うと、ナタリアは
「アタシかて、好きでやってるんやない!」
と激高した。
ここで、蒼穹が冷静な口調で
「じゃあ何で、あんな事を……」
と尋ねると、ナタリアは、トーンダウンしたようになって、
「アタシにも分からへん。最近急に裸になって、外に出たくて仕方なくなるねん」
頭を抱えて、涙目で言う。ここで功美が
「変身するのは、やっぱり罪を逃れる為かしら?」
すると
「アタシ、他人に変身体は知られてへんから、バレへんかなって」
なおマスクをつけたりして、顔を隠すと衝動を満たせないが、
変身した場合は満たすことができると言う。
ここで里美が、
「ところで、背中に魔法陣が書かれてましたが、あれは一体?」
「えっ?」
と驚いたような顔をするナタリア。修一も
「何の話だ?」
と聞くと、
「貴方は見てないでしょうが、
彼女の背中には、魔法陣が書かれてたんですよ」
なお修一は、目隠しをされていたし、ナタリアが着替え終わるまで、
別室にいたので、里美の言う通り彼は見てなかった。
そして里美はメモ帳に、その魔法陣を描き、
「こんなのです」
見せてきたが、
「なんやこれ?」
と言うナタリア。
「アタシ、魔法は、からっきしなんよ」
修一も、
「俺も、魔法はあんまり……」
蒼穹も、
「私も、魔法はちょっとね……」
と苦手そうにする。
すると里美は、蒼穹に、
「貴女は、魔法が使えないとはいえ、知識くらいは持っておいた方がいいですよ」
と苦言を言いつつも里美は、
「まあ私も、始めて見る魔法陣です」
とも言った。すると功美は、
「どっかで見た事がある魔法陣ね。思い出せないけど」
と言いつつも、
「もしかしたら、ナタリアちゃんは妙な呪いにかけられているのかも」
と言い出した。
修一が、
「どういう事?」
と尋ねると、
「うろ覚えだけど、もしかしたら何かの呪いの魔法陣だった気がするのよ。
まあ、まあ自信はないんだけどね」
と言いつつも、修一には、断定的に言っているような気がした。
修一は呪いかどうかはともかくとして、
(正体不明の魔法陣か……)
彼の病気の好奇心が出てきて、
「明日、秋人にでも聞いてみるかな……」
と言うと里美は、
「それは、良いですね。有間君なら、魔法に詳しいですから、
なんせマギウス学園の優等生でしたから」
と言いつつ、思いついたように、
「そういえば、貴方は秋人君とお知り合いでしたわね」
「ああ」
と修一が答えると、
「彼が、マギウス学園をやめた理由はご存じですか?」
「いいや、つーかその学校にいた頃の話自体したことないな」
「そうですか、すいません話が脱線して」
と言いつつ、メモを修一に渡しながら、
「これも何かの縁ですから、分かったら教えてくださいね」
と言った。
その後、ナタリアの事は、何かありそうなので、
お咎めなしという事になり、今日は遅いので功美が車で家まで送っていくことに。
帰り際にナタリアは、
「服は後日返しに来ますんで……」
功美に対しては、再度、礼を言うが、修一に対しては複雑そうな表情。
「今日の事は、黙っておくよ」
と修一は言うのだったが、
「………」
ナタリアは、変わらず複雑な表情。蒼穹は、
「私たちが、ここに住んでることは内密にね」
「分かった……」
とナタリアは答えた。そしてナタリアは功美に送られて変えていき、
蒼穹達は、二階に戻って行った。
残された修一は、好奇心が出てきたものの、
厄介ごとに足を突っ込んでいるような気がしていた。
なおお土産は、その後功美が、蒼穹たちの元に持って行った。
翌日、学校で秋人にメモを見せて聞いたが、
「これは、もしかすると……」
すると、秋人は周りを見渡し、
「これは、ちょっとデリケートな話だから、ここじゃあ、ちょっと……」
この時、二人は教室にいて、周りには生徒がいて、
後、昨日の事もあってか、ナタリアも修一の方を見ていた。
「わかった……」
二人は、場所を変えた。
空き教室にて、
「ここならいいかな?」
と言ったのち秋人は、
「あの魔法陣は『淫獄の書』のものだと思う」
「淫獄の書?」
「魔導書だよ」
と言った後、思い出したように、
「修一君は、魔法書と魔導書の違いは?」
と質問されたので、修一は、
「魔導書は聞いたことがあるけど、魔法書ってなんだ」
「魔法書と言うのは、魔法の事を書いてるだけの本」
「それが、魔導書じゃないのか?」
「違うよ。魔導書はね、魔法の知識だけでなく、
魔法の発動の手伝いをする補助道具でもあるんだ」
それは魔法使いの杖の様なもので、魔法の発動の際には魔導書を手にすることで、
発動の補助や、増幅等が可能である。
中には、魔導書を手にした状態でない発動できない専用の魔法と言うのもあって、
「この魔法陣は淫獄の書の専用魔法だよ。
ただこれだけじゃ、どの専用魔法かは分からないね」
と言いつつ、
「この魔法陣はどこで?」
と聞かれるも、
「それは、ちょっと……」
と答えることは出来ないが、
「それもそうだね……」
と言えないこと理解があるようだった。
それは、秋人の言うデリケートな事と関係があった。修一は、改めて、
「淫獄の書って何なんだ?」
尋ねると、秋人は恥ずかしい気に、
「相手に淫らな事をさせる魔法が載っている魔導書だよ」
「何だそれ?」
「ただ、これを使って、恋愛対象をおとす事は出来ないけど」
秋人によると、魔法は恋愛対象外となる性別にしか使えない。
異性愛なら同性、同性愛なら異性と言う感じで、
両性愛者は、使用不能。
「あくまで、相手を社会的に破滅させることが目的なんだ」
「じゃあ、その魔導書を使えば、第三者に変態的な行為をさせることが、
できるって事か」
「まあそうなるね……」
と言いつつ
「言うまでもないけど、淫獄の書はファンタテーラで作られたものだけど、
ゲートを通して、この世界でも持ち込まれていて、使用されたって話もある」
なお、これは魔導書の多くに言えることだが、「翻訳」と言うスキルを持っていて、この世界に人間でも、読むことができると言う。
「それと淫獄の書は複数冊あって、いくつかは回収されたけど、
まだ人知れず、出回ってるのもあるかもしれないよ」
「そうなのか……」
何とも言えない表情で答える修一。
ここで空き教室の扉が開いて、ナタリアが入って来た。
「アンタら、また変な話をしとるんやないやろな」
すると修一は、メモを見せて、
「この魔法陣について聞いてたんだ」
するとナタリアは
「どんな話やった?」
「なんでも淫獄の書っていう魔導書に載ってる魔法って話だけど」
ここで
「ちょっと修一君!」
と秋人が声を上げるが、
「これだけじゃ、具体的な魔法は分からないらしい」
するとナタリアは
「そうか……」
と言った後、ナタリアは、教室の扉を閉め、
二人に背を向けると、服を脱ぎ上半身下着姿になった。
「何やってるのナタリアさん!」
「ええから、背中を見てや!」
ここで秋人は
「あっ」
魔法陣に気が付いた。
「こんな風になっていたのか」
と言う修一には、
「アンタは、見んでええ!」
と声を上げる。
そして秋人は、
「確認するから、サーチ……」
と分析魔法をつかう。
「もうわかったから、服を着て」
と声を上げて、ナタリアは服を着て、振り向くと秋人に
「どうやった!」
と詰め寄る。
「いや、その……」
「ちょっと、落ち着け。秋人が怖がっているだろうが」
と修一が言うと、ナタリアはハッとなって、
「すまん……」
と謝るが、秋人は、
「別に大丈夫だよ」
と言いつつも、気まずそうに、
「ただこれは、これは少し厄介かも」
と言うのだった。
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