14「クエストをこなす」
あれから二人はドラゴス商会に通っているものの、
達也と会う機会はなかった。だが、その後も再現クエストはこなしていく。
余談であるが、再現クエストは連続で受けることができず、前のクエストからは、
少し間が開いていて、その間は商会のクエストを受けている。
二番目の再現クエストとして鳳介が選んだのは「ジュア村防衛」というもの。
ジュア村と言うドワーフの村に迫る巨大戦車「ギガンテス」を破壊する。
内容を確認した、ユウトこと修一は、
(ギガンテス、戦車と言うより地上戦艦だな。何というか巨人の進撃だ……)
このクエストは、魔機神等の巨大兵器の使用は不可。加えて魔法も使えない。
使ってしまうと、ギガンテスが、一斉射撃を行い防衛対象である村が、
破壊されてしまうからである。ただ一撃必殺の超強力な魔法なら、
一斉射撃の前に破壊も可能だが、生憎、鳳介は使えない。
舞台となるジュア村には、クエストを行う鳳介と
すべてを見守るためにユウトの姿もあった。なお今回は、少しばかり手伝いをする。
ただし、破壊には関わらないし、そもそもこの前の様に見えない壁が出来て、
関われない。
既にクエストは始まっているが、鳳介は感慨深げに村を見てた。
「かつて、この村を達也師が救った……」
言うまでもジュア村は、ファンタテーラに実在した村で、
このゲームにおいては、良質な武器を入手できる場所となってる。
そして再現クエストであるから、ギガンテスから村を救ったと言うのは実話である。
そして、ユウトは、
「そろそろ行く?」
「ああ……」
傍には、既に魔機神キュウビのカーマキシ、すなわち車形態がある。
二人はそれに乗り込み出発する。
このクエストは、時間制限があるが、クエスト開始時、
キガンテスから離れた村の入り口から、スタートなので歩きで行くと時間はかかる。かといって乗り物を使っての移動では、物によっては出現させただけで、
敵が一斉射撃を始めて、即失敗となる。
キュウビの車形態は、普通車くらいの大きさなので、
これくらいだったら、問題は無い。
ギガンテスのもとにに向かう途中、改めてネットで調べた攻略法を教えつつ、
「そう言えば、今回の場合はゲームの仕様上、鳳介君一人だけど、
実際の話だと、人間が複数人で近づいた場合も一斉射撃を始めるから、
達也さんは単身で挑んだらしいよ」
「そうなのか」
鳳介は、達也が一人でギガンテスに挑んだのは知っていたが、
その理由までは知らなかった。
そして近くまで車を走らせると、進路から少し離れた場所で車を止める。
「それじゃ、頑張って来てね」
「ああ……」
「異形の四肢」を装備し出発する鳳介、ユウトはすべてを見届ける。
ギガンテスは、単身で向かっていけば、手法は使ってこないが、
代わりに、マシンガン、アサルトライフル、ガトリング砲、光線銃に、
バズーカ砲と4連ロケットランチャーという対人兵器を使ってくる。
しかも、これらは加速系アーツをに連動するので、
持ち前の素早さのみで対応するしかないが、
鳳介は、ゲームの世界に持ち込めた持ち前の体術を駆使して、軽々と避けていき、
「剛……バスターガンズ」
時に遠距離系アーツで弾や、対人兵器自体を破壊、
そしてギガンテスの側面には梯子があるのだが、それを目指して、
攻撃を避け時に打ち消しながら向かっていき、
「テアッ!」
と言う掛け声とともに、跳躍し梯子につかまる。
その様子を見たユウトは、
「ふぅ……」
と一息つき、
(まずは、一区切りだな)
そう、対人兵器による攻撃を掻い潜り、梯子にたどり着くのが、
まずは第一段階である。
ここまででも大変で、ノーコンティニューで行けた事は珍しい。
ギガンテスの攻略手順は、対人兵器を掻い潜り、
本体に乗り込んで、やはり砲台をすべて破壊する。
砲台の破壊の際も、対人兵器を搔い潜る必要がある。
破壊してしまえは、あとは自由だ。
本来なら一斉射撃される事をしても、砲台がないから村が襲われる事はない。
そしてギガンテスの攻略には、最大の罠がある。
(大丈夫だよな……)
鳳介には教えてあるが、不安を覚えるユウト。
やがて鳳介は、登り切ろうとするその時、左腕が盾のようになる。
そして登り切った次の瞬間、素早く左腕を頭の方に持ってくるが、
直後、倒れる鳳介。
「!」
だが直ぐに体勢を立て直し、
「剛……バスターガンズ」
遠距離攻撃を撃つ鳳介。放たれた光弾は、
壁から飛び出たロボットアームの先についているライフルを破壊する。
「ふぅ……」
安堵の表情を浮かべるユウト。
そうこれが、最大の罠。このライフルは、狙いは正確で、
他の対人兵器同様、加速系アーツ等に連動するので、
避けるのは、至難の業。さっきの様に防御するしかない。
鳳介は、左腕を盾にして、防いだものの、衝撃波を抑えられず転倒した。
最大の罠を、掻い潜った後は、苦戦することもなく、
異形の四肢によって、異形の巨大な刃に変化した両手をふるい、
対人兵器による攻撃を避けつつも、
次々に砲台を破壊していき、時間は少しかかったものの、
すべての砲台やミサイル発射管を破壊した。
(史実じゃ、破壊し損ねた武器があって危機一髪だったけど)
今回は攻略情報があるので、それも鳳介は破壊している。
そしてすべての兵装を破壊すると、ギガンテスの傍に、
コンボアスが姿を見せ、そして鳳介の姿が消えた。
実は、コンボアスのクエストをクリアしたことで、
鳳介は、コンボアスを入手していた。その運転席に鳳介は移動する。
武装を破壊したので、一斉射撃の心配がなくなったので、
後はコンボアスの重火器で、破壊する。
なおコンボアスは、存在だけで、その攻撃を誘発させかねないので、
砲台等がすべて破壊されるまで、使用できなかった。
武装は失っても、ギガンテスは丈夫なので、
時間は掛かったが、結構あっさりと戦いは終わった。
戦いを終え、戻ってきた鳳介、なおコンボアスに乗って戻ってくればいいのに、
何故か、アイテムボックスにしまって、歩きで帰ってきた。
ユウトは、その事に疑問を感じつつも、
「頑張ったね」
と労いの言葉をかける。
因みに、コンボアスはクエストをクリアしたからと言って、
手に入るものではない。鳳介は意識していなかったが、条件を満たしたのである。
因みに条件は、プレイヤーのレベルが、特定の範囲内で、
ガントレットとソルレット以外の装備は使わないこと。
異形の四肢は、変化して剣みたいになったりするが、
扱いは、ガントレットとソルレットである。
なお今回も、意識していなかったが、条件は満たしていたので、
鳳介はギガンテスを手に入れることができた。
数日後、次の再現クエストができるようになったので、
選んだのは、「影を祓うもの」と言うクエスト。
難易度は、「ジュア村防衛」よりも高いが元になった出来事は、
ジュア村の一件よりも、前に起きた出来事らしい。
なお、ユウトが別の依頼を薦めていたが、これを選んでしまった。
選んだ理由は、
「何となく」
との事、
「やめておいた方がいいけど」
とユウトが言うが一度選ぶと、失敗しない限りキャンセルは出来ないので、
続行することに。
さて舞台は、インスマスと言う荒廃した港町。
呪いによって、この地に閉じ込められている移動型民族、
ネレイデスの救出。クエスト内容を見たときから、ユウトは、
「まるでクトゥルフ神話だ」
と思わず呟いていた。インスマスと言う地名に、くわえて荒廃した港町。
今回の討伐対象は、ダゴンという名のタコのような姿をし、
ヒュドラという女性型のロボット形態で持つ魔機神。
しかもネレイデスにかけられた呪いは、町から出ようとすると、
半魚人のような姿に変わってしまうと言う者で、クトゥルフ神話のインスマスの住民を思わせる。ただし、ネレイデス達は、美男美女ぞろいであるが。
とにかくクトゥルフ神話を彷彿とさせるものが多いが
ただ異世界の事なので、偶然ではあるただ魔機神の名を除いて、
(魔機神の名は、この世界からファンタテーラに、
飛ばされた人間が付けたものだから、
魔機神の名の由来はクトゥルフ神話なんだろうが)
ダゴンがタコ型と言うのが引っ掛かった。
(タコなら、クトゥルフだと思うんだけどな)
ユウトこと修一は、そんな事を考えていた。
さてクエストの方はと言うと、ダゴンだけでなく、
先ずは街中で暴れるダゴンの眷属と言う小型のタコ型ロボット破壊する必要がある。
だが眷属はそんなに強くはないので、鳳介が、さっくりと倒していき、
全滅させる。しかし問題はダゴンである。
インスマスの浜辺に来る鳳介とユウト、沖合には光柱が見えるが
それは、ダゴンの位置を示している。
もちろん、これはゲームだからであり、実際にはこんなものは無かった。
そして、ユウトは、ネットで調べたダゴンの攻略法について話す。
「ダゴンの本体は、防御スキルで守られているから、
これは、八本の足を破壊することで無力化できる」
「なるほど、狙うは足か」
「ただ、これは魔機神や、強力な魔法を使う時だけで、
生身で接近しての、弱めの攻撃の場合は機能しない
それと、天辺にハッチがあって、そこから中に入ってパイロットを倒しても
クリアになるよ」
攻撃を掻い潜り、本体に張り付き、
天辺にあるハッチに向かうというのが攻略方法だが、
「これは、正直お勧めできないね。海上での戦いだから、
うまく動けないだろうし、ダゴンの攻撃はギガンテスの
対人攻撃以上だからね。素直にストゥムを使った方がいいけど」
だが鳳介は、
「あれは使いたくない……」
頑として拒否した。
「じゃあ、せめてギガンテスを使って、コンボアスじゃ、役不足だから」
「分かった……」
そんなわけで鳳介は、ギガンテスを使っての闘いとなった。
ギガンテスは水上でも航行が可能で、ユウトが見送る中、
ダゴンの元に向かって行った。
「大丈夫かな……」
その様子を見ながら、思わずそんな事を言っていた。
もちろんゲームなんだから、負けてもやり直しがきくし、
負けたからと言ってペナルティーは特にない。
だが、仮想現実だから、生々しくゲームであっても、
不安を感じた。加えて只ならぬことが起きているから、余計であった。
やがて、ダゴンの元に到達し、戦いが始まる。
その様子を見ているユウトに、声を掛ける者が、
「ユウト君?」
「達也……さん。何でここに?」
困った顔で、
「僕も、何でかわからないんだよ。気づくと、ここにいて……」
と言う。
「それより、ギガンテスには鳳介君が、乗ってるんだね?」
「はい」
何でわかるかは聞かなかった。
煌月達也には、そういう力があるとユウトこと修一は聞いたことがあった。
「ダゴンとギガンテス、ギガンテスの攻撃力は強いけど……」
不安気な顔をする。彼にも、不安要素が分かるようだった。
ダゴンの八本の足。その内の三本の足が変形し、二つは大砲、
一つはパラボラアンテナのようになり。大砲からは、それぞれ
光弾と火球、パラボラアンテナからは波上に進む破壊光線。
一本の足は、変形していないが、直進的なビーム攻撃を放つ
一方、そして残り四本の足は、先端がそれぞれ棘鉄球、チェーンソー、ドリル、
電動丸鋸に変形し、接近攻撃を仕掛けてくる。
そんなダゴンに対し、ギガンテスの砲撃で応戦する。
砲撃は、ダゴンの足に命中し、効果は抜群の様だが、
しかし、動きがすばしっこく、避けられることもあった。
更に、ダゴンの攻撃に対しては、ギガンテスは、
その巨体故に、うまく回避できない。そして達也は
「ダゴンは、僕が戦った時よりも、動きがいいね。
それに、海はダゴンの領域だ。
ギガンテスは、火力はあって、海には浮けるけど……」
あくまでもギガンテスは陸が領分であり、海戦は不安だと言わんばかりだった。
ダゴンの攻撃を、受けることがあったが、ギガンテスの装甲は強靭なので、
直ぐに破壊される事は無かった。
しかし、ダゴンに対し決定打となる攻撃を繰り出せていない
そしてギガンテスのコックピットと言うか、艦橋にて、
操る鳳介は、妙に冷静にしていた。
(必ず、機会は来る)
根拠があるわけじゃない。はっきり言って勘である。
でも、妙に自信を感じられた。
そして、ギガンテスの攻撃も、ダゴンにとっては決定打ではないが。
ダゴンの攻撃も、決定打とは言えなかった。
やがてダゴンは、変形させていた足を、すべて元に戻した。
そして接近し、八本の足すべてを使い、ギガンテスに絡みついた。
そのまま、海に引き込もうと言うのだ。
ギガンテスは、水中でも活動は出来なくもないが、
それでも領域外には違いなく、一部の武装が使い物にならない。
引き換え、ダゴンにとって海の中は領域なので状況は一気に、ダゴンに有利になる。
さて、このまま引き込まれれば不利であるが、この状況に鳳介は笑みを浮かべた。
(来た!)
鳳介は、転移で外に出た。しかもダゴンが接近していたので、
ダゴンの胴体の上に転移することができた。
しかし目的の場所には、まだ距離がある。
そこで足を異形化し、足委の裏、スパイクにして、
滑らないようにしながらも、胴体を駆け上がって行く。
この状況にダゴンは、ギガンテスを海に引き込もうとしつつも、
先に銃器が付いたロボットアームが出てきて、銃撃で、
鳳介の進行を止めようとするが、彼は、それを軽々と避け、
時に、異形化した腕で打ち消し、時に、
「バスターガンズ!」
遠距離攻撃で、ロボットアームを破壊しながらも進んでいき、
ハッチにたどり着く、もちろんハッチは鍵がかかっていたが、
異形の腕で、こじ開け中に入り、道なりに進んで、
コックピットにたどり着いた。
中にいたパイロットらしき男は、鳳介がやって来ると、
襲い掛かて来たが、まったく強くなく、パンチ一発で伸びてしまい。
そのまま消失する。
クエストのクリアを告げるメッセージウィンドウが出現する。
「あっけないな」
思わず言ってしまう。
そして、ダゴンが手に入った事を告げるメッセージが出たかと思うと、
次の瞬間、鳳介はユウトのいる浜辺に転移した。
鳳介が現れた事で、ユウトは
「クリアしたんだね。おめでとう」
と声をかけるが、鳳介は達也がいたので、大きく目を見開き驚いたように
「達也師……」
達也は、
「すごいね、君は、また僕のできなかった事をした」
「いえ、そんな事は」
達也に褒められ嬉しそうだが、謙遜する鳳介に
「君は、かつてダゴンを倒そうとして、
死んでいった冒険者たちがやろうとしていた事をやってのけたんだ。
僕なんて、魔機神に頼りっぱなしだったからね」
と達也は自虐的に言う。そんな彼に鳳介は
「そんな事はありません」
と言ってさらに何か言おうとしたが、達也は文字盤と共に、消えた。
「多分、目が覚めたんだよ」
というユウト、そしてもっと話がしたかった鳳介は、
特に何も言わなかったが、見るからに残念そうにするのだった。
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