11「VSコンボアス」

 現れたのは、10tくらいのコンテナもついた黒いトラック。

これがコンボアスである。一見、ごついトラックと言う感じだか、

先にユウトが言っていたが、コンテナから様々な重火器が飛び出し、

攻撃を仕掛けてくる。


 しかし最初の内は、重火器は使ってこなくて、単純に突進してくるだけ、


「剛煌……じゃなくてバスターガンズ!」


コンボアスに向けた右手の掌から、気弾が発射される。

だがコンボアスは、転移で避けた。

しかし、ユウトから聞いて分かっていた事だから、

大した驚きはない。


 今は、ひたすら突進を使ってくるという、単純な攻撃だけだが、

こちらからの攻撃を、転移を使って回避を行う。

ただし正面からで、尚且つ接近戦なら回避をしないので、攻撃は当てられるが、

走ってくるトラックに正面から向かっていくのは

危険なのは言うまでもなく、現状で、攻撃を当てるのは容易ではない。


 この状況下で、鳳介は向かってくるコンボアスを避けつつも、

気弾を撃つ他、アーツで素早さを上げ、側面や後ろから接近攻撃を行うが、

もちろんすべて避けられる。

このように、無駄な事をしているように見えるが、

実は、意味があることなのである。


 この状況を、続けた後、最後の転移で、離れた場所に移動し、

鳳介の方にコンテナの側面を見せる形で停止した。

その姿を見たユウトは、


「鳳介君、気を付けて、重火器の一斉射撃が来るよ」


と声をかける。鳳介は


「わかった……」


と言いつつ、コンボアスへと向かっていく。

それと同時に、コンボアスのコンテナの側面の一部が開き始めた。

ウィングボディみたいな感じじゃなく、側面の所々が開いている。

ここで達也が


「あの時と一緒だ……」


と言う。


 そして開いた側面からは、ロボットアームの先に引っ付いている様な形で

マシンガン、アサルトライフル、ガトリング砲、バズーカ砲、

4連ロケットランチャーが、出現した。

それらは鳳介の方を向き、一斉射撃を始めた。


「!」


鳳介は、最初の攻撃をアーツで高めた素早さで避ける。

なお敵の攻撃は、最初こそ鳳介を狙っていたが、

彼の回避に合わせて、追っていくことはなく、後は、ひたすら乱射であった。

しかし、四方八方に攻撃をするので、

狙っていないとは言っても、大変であった。


 鳳介は、それらを避け、時に異形化した手足で、

飛んでくる弾丸、砲弾を破壊しつつも、敵に向かっていく、

そして、接近すると。腕を大剣のように変化させ、


「セイヤッ!」


と言う掛け声で切り裂く、コンボアスは転移で回避はしなかった。


 実は、コンボアスの転移により回避には制限があって、具体的な回数は、

毎回変わるから、これぞという数値は無いが、

一定回数の転移を行うと、一定時間、転移による回避ができない。

この瞬間が、攻撃を行う絶好の機会であるが、

ただ、その際は、このようにコンテナの重火器により、

乱射があるので、攻撃は容易ではない。


 しかし鳳介は、この状況をチャンスとした。

攻撃を避け、時には打ち消しながら、攻撃を掻い潜り、

敵に攻撃を仕掛けていく。なお、このクエストの勝利条件は、

単純に敵の破壊の他、左側の扉が半ドアになっていて、

そこから中に入り、運転席の鍵を抜く。


 ただし、破壊も容易ではないが、運転席に入ってカギを抜くのも容易ではない。

なお鳳介は、破壊の方を選んだようで敵の攻撃を掻い潜り、

敵に攻撃を仕掛け続ける。


 ただ殆どの武装が乱射で、鳳介を狙ってこないが、

一つだけ、ロボットアームの先についた光線銃みたいなものから

発射される光弾、これだけは、正確に狙ってくる。

しかも、光弾は小さい割には威力が大きく、打ち消すのは容易ではなくて、

回避しかなく結果として、間合いを取らざるを得えず、

結局、再び、重火器の攻撃を掻い潜らざるを得ない。


 幸い運転席の接近以外では、こちらが攻撃を仕掛けても

直ぐには撃ってこないので、一定時間は攻撃を与えることができる。

そして、光線銃を撃ち出す時間は決まっているので、

撃ってくるであろう時間まで、攻撃を仕掛け時間が来ると、

その場を離れ、回避に徹する。光弾は一定回数発射すると、

しばらく撃ってこないので、光弾が発射されなくなると、

再び重火器の攻撃を掻い潜り、コンボアスに接近し、


「セイッ!ヤァ!タァ!……」


と言う掛け声とともに、刃に変形した腕で切りつけ、


「迅雷……じゃなく無くて、サンダーカッティグ!」


雷を纏った刃で切りつけるアーツであるが、このように、

時折アーツを使うというように、攻撃を仕掛けるという事を繰り返す。

なおゲームの仕様上、現時点では、アーツは連発は難しい。


 更に一定時間が経つと、重火器が引っ込み、今度は再び、突進攻撃に切り替わる。

鳳介は、最初と同じように攻撃を回避しつつも、

ダメージは与えられないものの、攻撃を仕掛け転移を誘発させ、

回数を使い果たさせ、重火器の乱射状態へと移行させる。

以降は、先に述べたように、乱射を掻い潜り接近攻撃、

時折光弾を回避のため、一旦間合いを取りつつも、

再び乱射を掻い潜り、接近攻撃の繰り返し。


 戦いを見ていた達也は、


「凄いね、鳳介君は……」


鳳介の闘いを見て感心しているようだが、


「ところで、ユウト君」

「何ですか?」

「彼の使ってる技は、違うんだけど、基本的な動きが煌月流と、

同じなんだよね。彼は、煌月流を齧った事があるのかな?」


NVRLIMIは、煌月流の技とかは反映されないが、

基本的な動きは、反映させることができる。

ちなみに、ゲーム内の職業である武闘家を選ぶことで、

専用の体術が得ることができるが、自分本来のものも使えるので、

鳳介は本来の方を使っている。


 ユウトは、達也の質問に対して思わず、


「彼は、リアルじゃ煌月流の使い手なんですよ」


と言っていた。それを聞いた達也はキョトンとした顔で


「リアル?」

「ええ、NVRLIMが、反映しないんで……」

「?」


ここで、達也は訳が分からないという仕草を見せるものの。


「まあいいか、夢なんだし」


と呟いた。その言葉に、


(まただ、さっきも夢って言ってたよな)


ユウトこと修一は、これまでの事もあってか、

得体のしれ合い何かを感じつつも、今は鳳介の戦いを見つめた。


 ここで達也は、


「それより、鳳介君はすごいね。僕が出来なかった事をしようとしている」


ユウトが、


「それって、コンボアスの破壊ですか」

「そうそう」


彼は達也の話を知っていたので、


「あの時は、確かカオスセイバーへの捕食を優先してて破壊できなかったのでは」


と指摘すると、恥ずかしそうに、


「そうだったね」


と自分の頭を摩りながら言った。


 その後も、鳳介は、コンボアスと戦いをうまい具合に進めていき、

そして、鳳介は、乱射時ではなく、突撃を行ってくる状況で、

向かってくるコンボアスに、正面に立ち



「巨……ギガンティックカッティグ!」


刃とかした右手を、大きく振り上げると、それは巨大化し、


「チェスト!」


と言う掛け声で、振り下ろした。


 正面からで、尚且つ、一応、近距離攻撃と言う事もあって、

コンボアスも転移で避けることはなく、斬撃を受け止め、

そのまま、真っ二つになった。その様子に達也は、


「お見事!」


と声を上げた。真っ二つになったコンボアスは、

勢いが残っていて、鳳介の前で二手に分かれるかの如く、

少しの間進んで、そして両方、横転した。直後、光に包まれて消えた。

そう、鳳介が勝ったのである。


 鳳介が、勝利するとクエスト終了だからか、見えない壁は消えた。

そしてユウトと達也は、鳳介の元へと駆け付ける。

コンボアスに買った鳳介は、手ごたえのある戦いだったのか、

妙に満足げな顔をしていた。


「頑張ったね。鳳介君」


と称えるユウト。そして達也も


「すごいよ、鳳介君。コンボアスを破壊するなんてね」


鳳介は、達也に褒められたから、


「お褒めいただき、ありがとうございます!」


嬉しそうに、声を上げる。


 その後、転移ゲートが出現し、三人は事務所へと戻ると、


「それにしても鳳介君、強かったね。僕も、手合わせしたいと思ったよ」


すると鳳介は期待にあふれた目をしつつ、


「それじゃあ……」

「もちろん、今すぐじゃないよ。

コンボアスとの戦いで疲弊してるだろうし」

「いえ、俺は大丈夫です」


と鳳介は言うが、


「ダメだよ勝負はね、お互い万全じゃないと」


と達也が言うと、鳳介はがっくりしたように


「分かりました」


と答えた。


 そして次の瞬間、


「あれ、達也さん体が薄くなってる……」


ユウトは達也の体が薄く、それこそ消えていこうとしていた。


「達也師!」


同じく気づいた鳳介が声を上げると、達也は穏やかな口調で、


「多分、目覚めの時だ。じゃあまたね」


と言って、時計の文字盤のようなものが浮かび上がったかと思うと、

消えてしまった。


 なおこのゲームでキャラがログアウトした時も、

目の前で消えてしまうが、その時は光に包まれると言う演出がある。

役目を終えたNPCが消えるときも同じだ。

なのでこのような消え方は、初めて見るから、

何が起きたのかわからず、二人はしばし呆然としていた。

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