4「クエスト終了」
その後も現れる敵はキメラだった。それこそいろんなキメラで、
次に会わられたのはタコのような触手を持ったワーウルフ。
「あれは、あれはワーウルフとスキュラのキメラですね」
と説明するベル。スキュラと言えば下半身が蛸足の女性型のモンスターだが
このワーウルフは女性型だが左腕がタコのような触手になっていた
ほかにも、半身が石でできたオークも襲撃してきた。ユウトは、
「まさか、オークとゴーレムのキメラっていうんじゃあ」
「そうでしょうね」
ベルが肯定する。さらには下半身が蜘蛛の女性型のサイクロプス、
「あれは、サイクロプスとアラクネだな、前に異界で見たぞ……」
と鳳介は言う。どうやら実在するキメラもいるよう。
ほかに上半身がハービーで、下半身が馬な、
ハービーとケンタウロスのキメラ、
蛇の下半身を持ったリザードマンと、ラミアとリザードマンと思いきや、
「あれは、バジリスクですね」
リザードマンとバジリスクのキメラなど、
とにかくいろいろなキメラがいて、そいつらが襲撃を仕掛けてきた。
どれもゴブリンやゴブリンのキメラに比べて、強く。
レベルが上がっているとはいえ、最初のうちは鳳介一人では苦戦気味となるので、
ユウトとベルが援護する。それでも鳳介の体術もあって、
二人は援護までで、キメラを倒していくうちに、得られる経験値も多いのか、
直ぐにレベルアップしていき、援護さえいらなくなっていった。
そんなこんなで、進んでいくと突如、洞窟が現代的な建物へと変わった。
「どこかの研究所みたいですね」
と言うベル。ファンタジックなゲームで突然、現代的な研究所とは、
珍妙かもしれないが、彼らがプレイしているゲーム、CTWシリーズは
「型にはまらないRPG」と言われる代物。
時折、ぶっ飛んだイベントが起こるのはいつもの事。
特に「ゲート事件」以降、異世界から来る情報、
特にファンタテーラの情報を取り入れていった結果、
シリーズを重ねるごとに、ぶっ飛び加減に磨きがかかっている。
「ここも、異世界からきた研究所と言ったところでしょうか」
こういうような場所は、ゲーム内にいくつか存在する。
S市にゲートが出現し、いろんな物がやって来るように、
ファンタテーラにも、そういうのがあり、それを取り入れたもの。
さて、研究所を探索しながら、時折襲ってくるキメラを、
主に鳳介が倒していく。
(それにしても、研究所って、やっぱり……)
ユウトこと修一は、これまでゲームをやってきて、
こういう場所に何度か来ている。
そして、出現している敵から、ここがどういう場所かは予想がついた。
ちなみに、こういう所には、ほぼ確実にレアアイテムがある。
(なんか妙だな……)
あと修一は、どことなくであるが鳳介のおかしいと思った。
研究所に入って以降、
「セイヤッ!タァ!トリャ!……」
と言う掛け声を出すことはあっても、一切話をしない。
ずっと無口になっているのである。しかも、顔が険しい。
そして、ある部屋に入ると、
「やっぱり……」
そこには、五つカプセルが並んでいて、中にはキメラが入っていた。
これを見たベルは、
「おそらく、ここはキメラを実験するための研究所なのでしょう」
と言う。まあわかっていたことだった。
これまで、こういう研究所に来ると、
必ず研究所にかかわる敵が徘徊していたからだ。
さて鳳介はキメラが入っているカプセルの前で、立ち止まり、
じっと見つめる。その姿は悲しげに思えた。
「鳳介君?」
とユウトが声をかけると、
「何でもない。行こう……」
ここに来て、初めて掛け声以外の声を出し、
そして部屋を出ようとしたとき、カプセルにヒビが入った。
「イベントだ……」
直後、カプセルが割れ、中のキメラが出てきた。いわゆる戦闘イベントである。
しかし、現れたキメラを前に、
「………」
鳳介は、無言のまま部屋を出て行った。
「え?ちょっと待って!」
次の瞬間、扉の前にシャッターが下り、閉じ込められ、
追うことはできなかった。
そして、ユウトは銃を構え、出現したキメラの方を向く。
状況から考えて脱出にはキメラを倒す必要があると思ったからだ。
ベルも同じようで、剣を構え敵と戦う。
なお二人は一応、見た目の割には高レベルなので、
キメラ達はサクッと倒したが、シャッターは開かない。
「どこかに扉を開けることスイッチがあるんでしょう」
という事で、二人係で探して、
「これかな」
ユウトが、ボタンを見つけ、それを押すと、シャッターが開いた。
「よし!」
そしてベルが、
「鳳介君を探しに行かないと」
と言って、二人は鳳介を探して、建物の中を移動する。
そして途中で襲ってきたを倒しつつも、
ようやく廊下で壁にもたれて座っている鳳介を見つけた。
「鳳介君……」
とユウトが声をかけると、ゆっくりこっちの方を、
「置いてきぼりにして、すまない……あの場にはいたくなくて……」
そして、再び合流したのは良かったが、以降、鳳介は、
これまでのように、敵と戦おうとはせず、
敵を見ると逃げ出すようになってしまった。
「ちょっとどうしたんだよ」
「すまん……ここの敵はどうも苦手だ……」
「急にどうしたんですか?」
とベルが訪ねるも答えようとせず、
「とにかく、帰りたい……」
と言い張るので、ユウトは、
「まあゴブリン討伐は成功したし、レベルも十分上がっただろうから、帰ろうか?」
ベルは、
「仕方ないですね。レアアイテムは惜しいですが、
今日は鳳介君のレベル上げが目的ですからね」
とベルも賛同する。
そして、いざ脱出用のアイテムを取り出そうとした時、鳳介が、
「えっ?」
と声を上げた。
「どうしたの?」
とユウトが尋ねると、
「声が聞こえる……」
と言い出した。
「声?」
「お前らには聞こえないのか……?」
確かに、ユウトやベルには聞こえていない。だが思い当たる節はある。
「多分、イベントだね。しかも条件性の」
更にベルも、
「これは、レアアイテム可能性がありますね。まだ帰らない方がいいですよ」
と言い出す。
そして鳳介は、
「声が俺を呼んでる」
と言い出し、ユウトは、
「じゃあ、それに従った方がいいよ」
そして三人は、移動開始する。なおこの声は、罠の可能性もある。
ただ、その場合、鳳介一人にしか聞こえてないのだから、
彼一人分にしか、対応していない可能性が濃厚。
もし大人数に対応なら、全員に聞こえるはずなのだ。
途中、何度かキメラと遭遇したが、鳳介は逃げの一択で、
逃げられる場合は逃げたが、逃げられない時は、
ユウトとベルが倒し、そして、
「ここだ……」
大きな金属製の扉の前にたどり着いたが、扉は機械式のようで、
「ここにカードキーを当てるんでしょうが……」
とベルが、扉の傍に付いている非接触型のカードリーダーらしき物を、
指し示しながら言う。
「じゃあ、カードキーを探す必要があるのかな?」
すると鳳介が
「カードキーってこれか……?」
手には、カードキーが握られていた。
「どうしたの、それ?」
「今、『カードキーを入手しました』って出てきて、
アイテムボックスに勝手に入ってたんだ」
それを取り出したと言うわけである。
実際に、カードリーダーに当てると、扉が開いた。
そして鳳介が中に入り、あと追ってユウト達が入ろうとすると
「「うわっ!」」
二人とも見えない壁のようなものにぶつかって弾かれる。
「これは……」
「私たちは条件を満たしてないいから入れないと言う事でしょうか」
そして、扉が閉まった。
さて、扉が閉まり鳳介は閉じ込められる形になったが、
鳳介はさほど気にせず、部屋の奥へと進んだ。
そこには、カプセルがあった。中には、目を閉じた人の、女性の姿があった。
正確には、人ではない。
半人半魔、人間と魔物を混ぜあわせたような、まさしく異形であった。
(この人も、俺みたいなものなのだろうか……)
そのカプセルをどこか悲しげに見る鳳介。だが突如、女性の目が開く。
「!」
そして、カプセルが割れ、異形の女性が出てきた。
「「………」」
互いに、黙ったまま見つめあうが、少しして女性が両手を広げた。
鳳介は、思わず近づく、そして女性はハグをしてきたので、
彼も女性を抱きしめる。
すると、声が聞こえて来る。
「私は、貴方の力になります……」
すると女性は消えた。そして
『装備品、異形の四肢を入手しました』
という表示が出て、その上、大量の経験値が取得され、レベルが大きく上がる。
その直後部屋の扉が開き、ユウトとベルが入ってくる。
なお一度、弾かれてるので、入れるかどうか確認していた。
「大丈夫だった?」
と言うユウトに
「ああ……」
「何があったんですか?」
とベルが言い、鳳介はここで会ったことを話す。
「なんだろう、その異形の女性って、なんか、ここのボスって感じはするけど」
「それに『異形の四肢』と言うのは聞いたことがありませんね。
『異形の籠手』なら聞いたことがありますが」
コンソールを開き、装備の説明を見ると、
『異形の四肢』と言うのは、両手両足に装備するもので、
籠手と足手がセットになった装備。
ユウトやベルも聞いたことがないとの事で、
「もしかしたら。レアアイテムかも」
武器として高性能で、特殊なスキルも保有していたので、
その可能性が高かった。
そして部屋に転移ゲートが出現した。それはクリアを意味している。
三人は、冒険者ギルドに転移し、受付に行って報酬をもらう。
こうして、鳳介は初めてのクエストを終える事が出来たが、
成功の喜びは無い、何とも言えない気分だけが残った。
「どうする?引き続き、違うクエストに行く?」
ユウトに対し、
「いや、今日はもう帰る。付き合ってくれて、ありがとうな……」
そう言うと、鳳介は、ログアウトし、現実世界に戻った。
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