20「戦いの終わり」

 攻撃を受けて、ついに両者が吹っ飛んだ。ちょうど二人は、

インフェクラウンの傍に、落ちる。そして同様に体から黒い靄が出てきて、

魔法陣が崩れるような感じで消滅した。ただ二人とも気絶には至らなかったようで、


「あれ、何してたんだ」


正気に戻ったようだったが、


「痛……なんでお前らが!」


と痛がりつつも妲姫は声を上げる。そしてインフェクラウンも意識を取り戻し、


「イテテ……」


痛がるような素振りを見せつつも


「えっ、えっ、なんで、なんで!」


急な状況の変化に軽く混乱しているようだった。

そしてエクスマキナは肉体的な怪我はないようだが、

パワードスーツからは煙が上がり火花も出ている。


「どういう事だ、いつの間にスーツが……なんで破壊されたロボが!

コントロールが効かないだと!」


一番混乱しているようだった。


 そして、インフェクラウンは


「ねえ、逃げようよ!」

「そうだな、結界を解け撤退だ」

「わかった……」


ここで、メタルマギアは、


「逃がさない!」


と言うが、三人が、煙幕のようなものを発生させた。

それは、魔法や超能力さえも、阻害する特殊なもの。

その所為で、魔法少女たちだけでなく、メイのサーチも妨害するので、

逃げる連中の追跡が、出来ないのだが、


(見えた!)


妨害は最初だけ、赤い怪人は、煙幕の効果は直ぐに消えた。

そして、このタイミングで、結界は解除される。



「待ちやがれ!」


 三人はバラバラの方向に逃げていく。

そして、ちょうど一番近くにいたエクスマキナに赤い怪人は向かっていく


「クッ!」


逃走のためにエネルギー弾による攻撃を仕掛けてきて、

着弾し、ダメージは受けたが構わず突っ込んだ。

回避したら、その隙に逃げられそうな気がしたからだ。


「捕まえた!」


赤い怪人は、エクスマキナに抱きつくように、拘束する。


「離せ!」


しかも相手はブースターを吹かせながら、飛翔し、

どうにか振り払って逃げようとする。

しかし、赤い怪人は逃がすまいと、背中から伸びる触手まで使ってまで、

相手にしがみついた。結局、そのまま両者は飛んで行った。

ちなみに、ロボット軍団は、結界が消滅する前に、

劣化ベルゼビュートにやられたロボと同じく、地面に沈むような感じで消えた。




 


 残された魔法少女達とメイは、エクスマキナと赤い怪人が、

飛んで行ったから、唖然としていたが、とりあえず追うとしたが、

煙幕の影響は煙が消えた後も残り、二人を追う事はかなわず。

その後、三人は変身を解き、更にはメイと合流していた。


「大丈夫かな、恵美さん……」


と心配する春奈。そして麻衣は、


「そう言えば、桜井君は……」


恵美と、入れ替わった修一が、どこに行ったのか気になった。

ここで、メイが、


「家……」


と言い出し、今いる場所は、桜井修一の家に近いと言う事もあり、

4人は向かうことに。


 家に着くと、ガキがかかっていて、呼び鈴を鳴らしても反応がなく、

煙幕の効果も切れた事で、サーチを使うメイ。


「誰もいない……」

「じゃあ家には、いない?」


と言う春奈。


 ここで千代子が、


「あのさぁ、桜井ってさあ……」


彼女はある仮説を話した。


「……という事ってあらへんか?」


春奈は、あることを思い出しながら


「まあ、ありえなくもないけど……」

「そうなんだ……」


と信じ固いという様子で麻衣が答える。

メイは特に表情を変えることなく、


「ありえなくない……でも……確かめる事はできない……

私のサーチ……当てにならない……」


とだけ答えた。


 そんな話をしていると


「何してるの、あなた達?」


と声を掛けられる。


「天海さん?」


と言う春奈。そう声を掛けて来たのは、天海蒼穹で、

そう4人は、うっかり表玄関の方に来ていたのだ。

蒼穹は、一人ではなく里美も居て、その上に、


「あれ~皆さんお揃いで、どうしたのかな~」


何故か、瞳の姿もあった。千代子はジト目で、


「何で、おんねや……?」

「だって、私たち、学校一緒だよ」


すると、里美が不機嫌そうに


「仲良く一緒に帰ってきた訳ではありませんよ。

ついそこで会って、方向が同じだというんで、一緒に来たんです」


すると瞳は、頭をさすり、笑いながらも


「いやあ、私としたことが、ドジを踏んじゃってさあ。

もしかしたら、桜井君なら助けてくれるかなあって思って」


その話を聞いて、何とも言えない顔をする春奈、麻衣、千代子。

瞳の言葉を意訳すると、ストーキングしていた零也と真綾に逃げられて、

ひょっとしたら知り合いである修一が、匿ってるんじゃないかと、

確認に来たというところである。

三人は、幼馴染ゆえに、その魂胆がわかってしまったのであった。


 すると瞳は、笑顔のまま軽い口調で、


「あなた達の所為だからね」

「何で私たちの?」


と春奈が言うと、


「あなた達に気を取られたから」


瞳は、変身してなくとも、結界の中を見ることができるので、

さっきの一件に気づき、気を取られ、零也と真綾を見失ったと思われる。

彼女は、笑顔で軽い口調だったが、春奈たちは恐ろしさを感じていた。


 ここで、メイが


「桜井君はいない……確認した」


すると、瞳は、


「そう言えば、君はサーチが使えたね」


そういうと、メイをじっと見つめ


「嘘も言ってなさそうだし、いないなら、仕方ないなぁ~」


と言ったのち、片手を上げて


「それじゃあ。またね~」


と言って、去って行った。


 残された春奈たちは、何とも言えない気持ちを抱えたが、

修一がいないから、ここにいる理由もないので春奈が、


「私たちも、桜井君に用があったんですけど、居ないなら仕方ないですね。

それじゃ」


と言って、春奈たちもその場を去った。



 一方、エクスマキナと赤い怪人は、街外れの山中に落下した。

しかし、山中と言っても険しい場所ではないので、

よほどのことがない限りは、遭難することはない場所。

パワードスーツのおかげで、怪我はないが、

先の戦いと赤い怪人を振り払おうと

無茶な動きをした上、落下の衝撃で、パワードスーツはボロボロ、

落下の際に、怪人とは離れることはできたものの、

まともに動けない状態だった。


 そして離れた怪人が、近づいてきた。そして、ヘルメットに手をかけた。


「やめろ!」


外されまいと、抵抗はするが、パワードスーツがまともに動けないので

大した抵抗はできず、ヘルメットを外される。


「やっぱりエクスマキナの正体は、西崎絵里菜先輩か……」


エクスマキナこと絵里菜は、怪人を睨みつけながら、


「だったら、どうなの?」


外したヘルメットを地面に置きながら


「別に、正体がわかっただけで十分。何を目的にこんな事をしてるかは、

興味はない。ただこの様子は記録してる」

「口止めが欲しいわけ?」

「ああ、お……修一の殺害を依頼してきた奴の事を教えろ」

「それは……」

「お前らみたいな悪党に守秘義務なんてないだろ」


彼女は黙り込んだ。


「ロボ研の連中は、このことは知ってるのか?あと御神……」


すると絵里菜、血相をかけて


「皆には言わないで、特に御神さんには!」


と懇願してきたので、怪人は悪いことをしている気分になったが、


「だったら話せ。依頼人の事を」


すると困ったような様子を見せて、


「知らないのよ!ホントよ。仮面をつけた女で、

結構な前金をくれて、その上、高額な成功報酬をチラつかされて」

「お前、金に困ってるのか?」

「仕方ないでしょ、泥棒に入られたのよ」


盗まれた金は、新しい兵器の開発資金だったが、

悪事で手に入れたものなので、警察に相談出来ず、

困っていたところに、仮面の女がやって来た。

前金と成功報酬を足せば、開発資金に更におつりがくる額だった。


「悪銭身に付かずだな」

「うるさいわね。とにかく、金さえくれれば、こっちは良かったから、

だから、身元はどうでもよかったの!」

「そうか……まあ、お前を信じたわけじゃないが、

依頼人にたどり着けないんじゃ仕方ない。依頼を反故にしろ」

「えっ?」

「二度と修一を襲うなって事だ。破れば、今記録してる情報を

動画共有サイト、各種SNS、マスコミ、警察、

考えうる限りのあらゆる場所に送ってやる。

もちろん、学校とロボ研の連中にもな」


ロボ研の事を持ち出したあたりで、彼女は、涙目になって


「お願い、それだけはやめて、ロボ研の皆には、特に春奈には!」


と懇願する。


「だったら、この依頼からは手を引け、わかったな」


しばしの沈黙の後、


「分かったわ。もう桜井修一は狙わない」


答えを聞いた怪人は、


「言っておくが、バレなきゃいいと思うなよ。確証はなくとも、

疑いだけでもバラすからな」


そういうと、赤い怪人は姿を消した。

そして、絵里菜は悔しそうに地面に、こぶしを叩きつけるのだった。

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