19「赤い怪人VS魔法少女の敵(3)」
戦いが続く中、突然、三名の動きが止まった。
更に体に、魔法陣が浮かび上がる。
赤い怪人は、突然の事に警戒して、攻撃を止めるが、
攻撃停止命令を出して無かったのでロボはお構いなしに、
ビームガンのような物で、劣化ベルゼビュートに攻撃を仕掛けた。
だがビームは命中するものの、弾かれる。
やがて、魔法陣から、黒い靄の様なものが発生すると、
三名、それぞれの体に吸収される。
「………」
直後、劣化ベルゼビュートは無言で動き出した。
動き出した後は、攻撃が通じるようになったが、さっきとは様子が違った。
動きが洗練され、本物には、程遠いには違いないが、明らかに攻撃力や防御力、
更には素早さ上がっていて、あっという間に、形勢が逆転される。
動き出したのは、劣化ベルゼビュートだけじゃない。
エクスマキナと妲姫も動きだしたが、動きがさっきとは違っていた
(何だ一体!)
こっちも、動きが変わって、洗練されている上に、
「痛っ!」
攻撃力は上がっていて、かすった程度の攻撃でも、
さっきまで感じなかった痛みを感じ、
更には、こっちの攻撃も効きづらくなっているように思えた。
「「………」」
しかも、さっきまでとは違い、静かになって、と言うか感情的なものが、
感じられなくなった。
(まるで、機械と戦ってるみたいだ)
もっとも厄介なのは、両者が連携を取るようなった事だ。
連携の悪さを突いて来た赤い怪人としては、これが結構つらかった。
だが一番の問題は、
(このままじゃ、抑えが効かない)
特に連中が機械的になってしまったのが、それを後押しする。
((………))
ここで、エクスマキナが腕から発生するビームソードで、
妲姫が刀で遅い掛かる。
「!」
赤い怪人は、メタモルガンの大剣形態でビームソードを、
高周波ブレードで、刀を防ぎ、
「うおおおおおおおおおおお!」
押し返した。
だがすぐに、妲姫が接近してくる。武器を構える怪人。
そこに、
「てやっ!」
と言う掛け声とともに、現れるのは、
「鬼姫……」
突如出現した鬼姫は、妲姫と刃を交わす。
「なんや……いつもよりも強いなあ……」
何度か刃を交わしたのち、間合いを取る。
この間、エクスマキナの相手をしていた赤い怪人は、
同じタイミングで、間合いを取り、
「お前、何時からいた?」
「最初からや、まさかアイツと入れ替わっとったとは、気づかんかったで」
「忍法影隠れか」
「せや、よう知っとるな」
なお忍法影隠れからの登場と言うのは、鬼姫が人前でよくやる事で、
その際に、影隠れの事は口にすることはあるので、
わりと知られてることである。
直後、鬼姫と妲姫、怪人とエクスマキナと言う形で戦いとなった。
劣化ベルゼビュートは、優勢ながらもロボとまだ戦っている。
そして両者再び、間合いを取った時、
「やっぱ、こいつら、何時もとちゃうけど、さっきの魔法と関係あるんかなあ」
「だろうなぁ。おおかた黒幕に何かされたんだろうな」
「まぁ、ようある話やなぁ……」
そして、鬼姫は鋭い目つきの横目で見ながら、
「アンタ……」
と言いかけたところで、敵の攻撃が来たので、いったん中断しつつ、
少々やりあった後、再び間合いを取った時に、
「アンタ、馴れ馴れしいとは言わんけど、初対面って感じでもないなぁ、
どっかで、おうた事あるか?」
「いいや……」
「そうやろうな、アンタの従弟とも、おうたばかりやし」
直後、再び戦いとなる。エクスマキナは、ビームとミサイルの嵐、
妲姫は、各種忍術で炎や、風、冷気を放ってくる。
赤い怪人は、ビーム攻撃を回避しつつも、回避しきれないミサイルは、
触手で潰していく。
鬼姫は、敵の忍術に合わせ、印を組み、魔法陣が出現し
「忍法氷龍破!」
「忍法地龍刃!」
「忍法烈火撃!」
氷塊生成の後の射出、地を這う衝撃波、
そして強力な炎と、敵の術対抗する術が発動する。
ただ敵が強くなってるので、押され気味であった。
そしてロボの方も、とうにか耐えてきたものの、押されつつあった。
この状況に、
(あれを使わせるか、だけど……)
横目で妲姫と戦う鬼姫を見て、
(彼女を巻き添えにしかねないな)
ここで。エクスマキナと戦いつつ、考える。
(でも、あの劣化ベルゼビュートをどうにかしないと……)
ロボが倒れれば、敵はこっちに向かってくる。本物にはほど遠いとはいえ、
謎の強化によって、強くなった奴が、こっちに加わるようなことがあれば、
状況が、悪くなるのは言うまでもない
(どうにかする方法は一つ、しかし……)
そのためには、この場を離れ、あっちに加勢する必要がある。
しかし、それには、鬼姫一人にここを任す事になる。
今のエクスマキナと妲姫を同時に相手にさせるのは、かなりまずい。
だからと言って、一緒に向こうに行けば、奴らの合流を促すことになる。
かといって、敵を一人一緒に連れて行くわけにもいかない。
攻撃に集中できないからだ。
(こいつら二人相手じゃ、あれも効果が薄い気がするし……)
ここで、戦いながらも、少し考え、
(こうなったら……)
ちょうど、二人が敵と間合いを取った時、赤い怪人は左手で鬼姫の腕をつかみ、
移動を始める。
「ちょっと、何すんねん!」
「いいからこっちに!」
二人の後を追ってくるエクスマキナと妲姫。
そしてたどり着いたのは、エクスマキナの軍団の残骸が散らばってる場所。
ちなみに、劣化ベルゼビュートからは、離れた位置。
「なんや一体?」
「ちょっとな……」
そう言うと、怪人は左手を、地面に当てる。
すると手のあたりから影のようなものが広がる。
そしてエクスマキナの軍団の残骸が沈んでいく。
まるで沼に、沈んでいくようである。
「ちょ、ちょ、ちょ、何やこれ!」
「大丈夫、君は食えないから」
「はぁ?!」
途中、敵が追いついたので、怪人は地面から手を放し、応戦したが。
左の掌からは、黒くて粘っとした感じの物が伸びいて、
左手は使わず戦う。
やがて、大型の敵のも含め、すべての残骸が沈むと、影のような、
黒くて粘ったした感じのようなものは、すべて、左の掌に吸い込まれた。
すると、赤い怪人の視界にメッセージウィンドウは映る。
これは、もちろん怪人にしか見えていない。
そこには「召喚可能まで」という日本語による表示と、
シークバーが表示されている。
(召喚までは、時間がかかるな、ロボは持ちこたえれるか……)
残念ながらその想いは、打ち砕かれる。
この時、ロボは、かなりボロボロな状態で、
直ぐに、体のあちこちから火花や煙を出して、ついには倒れ
足元に地面に黒い沼のようなものが現れると、
それに沈むように、消えていき、ロボを飲み込んだ沼は
小さくなって、怪人のもとに向かってくると左手に吸い込まれる。
そして、メッセージウィンドウが出現して、ロボの顔写真と
同じく、「召喚可能まで」という表示と、シークバーが表示された。
そして、ロボを倒した劣化ベルゼビュートは、無言で怪人と鬼姫の方を向く。
(まずい……)
かなり都合が悪い状態、しかし捨てる神あれば拾う神あり、
この時、壁を思いっきり叩いているような音と、
ガラスにひびが入るような音。それは結界を壊す音。
そして、ガラスの割れる音と突風が吹いて、
メタルマギア、フェイブル、更にはメイの姿もあった。
三人の登場に、エクスマキナも妲姫も動きを止める。
やって来たメイは
「久しぶり……」
フェイブルは
「確か、デモスゴードの時にいた……」
そしてメタルマギアは、
「貴女が、恵美さんなの?」
と声をかけてきたが、赤い怪人は、
「ちょうどよかった。そこの二人の相手を頼む」
そういうと、赤い怪人は、劣化ベルゼビュートの方へと向かっていった。
エクスマキナと妲姫は強化されているが、三人がいれば大丈夫だろうと、
思ったからである。
妙に軽い言い方で、向こうの方に行ってしまったので、
「えぇ!」
とメタルマギアは、妙に素っ頓狂な声を上げた。
ここで、エクスマキナは、メタルマギアが向かってきて、
「………」
ビームソードで襲ってくる。
「!」
メタルマギアも腕の部分から発生するビームソードで応戦する。
「前よりも、強くなってる上に、なんかロボットみたいね。
何されたんだか」
更にメイが、拳銃を装備していて、無言でメタルマギアを撃つ。
銃弾は、全く効いていないが、注意を、引き付けることは可能で、
メタルマギアはメイの方にも攻撃を仕掛けてくるが、
メイは、サイボーグゆえの高い機動力を発揮し、尽く避けていく。
一方、フェイブルは鬼姫に助っ人に入る形で、
二人係で妲姫の相手をする。
強化された妲姫の相手は、二人でも大変だった。
「こいつは、どういう魔法なの?」
メタルマギア、フェイブルは、魔法で、メイはサーチで、
結界の中が分かっていて、連中が魔法でこんな風になっていることは、
知っていた。
もっとも、どういう魔法で、このようになったかは分からなかったが。
ただ三人とも、恵美と同じく、それが三人に修一の殺害を依頼した。
黒幕が関わっているであろうことは、理解できていた。
さて単身で、向かっていった赤い怪人が、向かいながら、
高周波ブレードを引っ込めた。
(アレを使うには必要ないからな)
そして一気に接近すると、飛翔し
「うおおおおおおおおおお!」
鳩尾に一撃、
「………!」
声は上げなかったが、大きく怯む。それを皮切りに、
「オラオラオラオラオラオラオラ!」
と言う掛け声と共に、敵をタコ殴りにしていく。
怪人と劣化ベルゼビュートとの体格差は、結構あるが、
パンチが当たるたびに劣化ベルゼビュートの体は大きくのけぞる。
怪人の攻撃力も上がっているようだが、攻撃範囲も広がっている。
その様子は、怪人がタコ殴りにしていくのではなく、
同サイズの見えない何者かが、タコ殴りしているかのよう。
その様子を見たメイは、呟いた。
「イーブン……」
まさしく、それはイーブンであった。彼女は、組織にいた頃から
話は聞いていて、ゲームセンターの一件で、
修一が使用するのを、見る形で、実物を確認している。
「恵美さんも……使える……?」
超能力は親子とか、親戚とかで同じ能力を使える場合がある。
しかし、これまでの記録ではイーブンの使い手が
二人同時期に現れたケースは初めてだった。
いくら親類とはいっても、釈然としないものを感じた。
そして、
「どりゃ!」
と言う掛け声とともに、思いっきり力を込めたパンチを食らわせる。
左手による一撃であったが、衝撃波などの効果はない。
ただ勢いがあって、体重が乗ったようなパンチだ。
それが、鳩尾に入り、
「!」
悲鳴を上げることもなく、そのまま、劣化ベルゼビュートは地面の倒れ、
そしてその体は、元のインフェクラウンに、姿を変えていた。
なお気絶しているようで、そして魔法陣が浮かび上がったかと思うと
さっきとは逆に体から黒い靄が出てきて、魔法陣が崩れるようなエフェクトで
消滅した。魔法が無力化されたように見えた。
「これでよし……」
当面、インフェクラウンは戦えないだろう。たとえ起きてきても
強化は解かれている。そんな気がした。
後は、エクスマキナと妲姫である。今、魔法少女三人と、
メイが戦っているが、状況は芳しくないようであった。
赤い怪人は、視界にメッセージウィンドウを表示させる。
(行けるな)
そして、赤い怪人は大声で、
「今から援軍を呼ぶ。鹵獲した敵機体だから、
間違えて、攻撃しないでくれ」
メタルマギアは、戦いながら
「はぁ?」
と声を上げた。直後、怪人は、左手を地面に置いた。
すると再び影が広がる。そして、そこから浮き上がってくるように、
エクスマキナのロボット軍団が、姿を見せた。
しかも全機、修復を終えている。
「それ、エクスマキナの!」
と声を上げる鬼姫。そして、赤い怪人は
「目標、エクスマキナ及び妲姫、
そして両者と戦う者たちの援護」
と言ったのち
「行動を開始せよ」
するとロボットたちが動き出す。
そして赤い怪人がロボットたちを引き連れてくるように、
両者のもとに向かっていた。
ロボットたちは、赤い怪人の命令を忠実に実行する。
すなわち、エクスマキナと妲姫に攻撃を仕掛け、
更には、魔法少女たちとメイの援護を行う。
この状況に、メタルマギアは、
「何か起こってるわけ?」
と声を上げるが、メイは
「捕食スキル……」
「えっ?」
「怪人の左手には……捕食スキルがある……」
あの黒い影は、その捕食スキルで、あれに吸収されたものは、
赤い怪人の物になるらしい。
「対象は……基本非生物……。ただし魔獣は食べられる……」
すると鬼姫は
「ああ、それで……」
赤い怪人の「食べられない」の意味が分かった気がした。
さて現状は、赤い怪人がエクスマキナのロボット軍団を味方として
召喚したが、状況は圧倒的に有利と言うわけではなかった。
この二人は、謎の力による強化もあって、一騎当千の存在なのだ。
ロボット軍団を容易に蹴散らすことができる。
しかし、まったく無意味ではない。3人の魔法少女と、メイと赤い怪人がいる。
5人にロボット軍団を加えることで、
圧倒的ではないにせよ。有利な状況に立てたのだ。
ここで、5人は一基の攻勢に出た。
「メガバーストシュート!」
メタルマギアのSFに出てきそうなエネルギー弾みたいな強力な魔法弾。
「狼の贖罪!」
以前、フェイブルがデモスゴードに使っていた。狼の形をした炎。
「忍法超嵐」
鬼姫が放つ様々な属性攻撃魔法の嵐。魔法に詳しい奴らからは
「メギドレインもどき」とも呼ばれる。
「………」
メイは、左手を砲身に変形させて、無言でプラズマ砲を撃った。
「くらえ!」
怪人は、先に劣化ベルゼビュートに使おうとした強力なエネルギー弾を放つ。
これらにロボット軍団の攻撃も加わり、敵を追い詰めていく。
向こうも、エクスマキナは超化学兵器、妲姫は忍術で、
しかも強化された攻撃で抵抗してきたので、一方的ではなかったものの、
大人数で追い詰める形になっていたので、
(なんかズルくないか)
と赤い怪人は思うのだった。
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