17「赤い怪人VS魔法少女の敵(1)」

 赤い怪人と、エクスマキナ、インフェクラウン、妲姫、

各配下の軍団との戦いが始まった。まずは、配下の軍団との戦いである。

ロボット軍団、魔物軍団、忍者軍団は、大人数で、

正に多勢に、無勢の状況であったが、赤い怪人はまず、例のロボットを召喚した。


「イレブンだと!」


とエクスマキナが声を上げる。

なおロボは、敵のロボット軍団や魔物軍団に大型の敵がいたので、

そっちの相手をさせるために呼び出した。

赤い怪人の力をもってすれば、倒せる相手ではあったが、

念のためと言うところである。


 ロボが大型の敵を相手にしている間、赤い怪人は、人間大、少々大柄のもいるが、こっちの相手を始めた。しかし、ロボが相手をしている大型の敵に比べ、

数は途方もなかった。しかし、赤い怪人は一騎当千であった。

右腕の高周波ブレードで敵を次から次へと切り裂いていく。

切り裂かれた忍者は、紙の人型になり、怪物は消滅し、

ロボットはスクラップになっていった。

そして、大勢で囲まれたときは、刃の付いた触手で、囲んだ敵を串刺しにした。


 三名、特にエクスマキナは赤い怪人が呼び出したロボに、驚きはしたが、

皆は、赤い怪人を初めて見たわけだから、その力は知らなくて、

多勢に無勢だと思い、


「イレブンはやばいが、奴を倒せば、問題ないだろう。

そうだ、あのロボは、私がもらうからな」

「いいだろう、我はロボに興味はない」

「僕も、ロボのおもちゃは好きだけど、あんなに大きいのだと、

置き場に困るから」


と言うような、会話をしていて、最初は余裕たっぷりであった。


 そして、軍団の数が減ってくると、


「補充しなければ」


そういうと、妲姫は懐から紙の人型を取り出し、地面に撒くと、

それらは、忍者へと姿を変え、さらなる戦力となった。


「こっちも、魔物を追加しなきゃ」


そういってインフェクラウンが手を叩くと、

地面からおどろおどろしい魔物が表れた。


「私の方も、増援を呼ばないと」


エクスマキナは、腕を組んだ体制で、そう言うと、

さらなる、人間大のロボットが、転送で現れた。

三名は、それらを赤い怪人へと嗾ける。

このように、倒されても補充ができるうちは、まだまだ余裕であった。



 一方、赤い怪人は右腕の高周波ブレードだけでなく、

左腕からは強烈なパンチを繰り出す。それは、衝撃波を伴っていて、

直接食らったやつは、もちろん周囲にいたやつも、ぐしゃぐしゃになって吹っ飛ぶ。

忍者だろうが、魔物だろうが、ロボットだろうが関係ない。

ロボは鉄の塊になるが、忍者と魔物は、消滅する前に

ぐちゃぐちゃな肉の塊になるので、高周波ブレードで切り裂かれるよりも

グロテスクな形相をみせた。


 加えて足技も強烈、左足から繰り出される蹴りは、素早く真空刃を伴うので、

刃はついてはいないが、蹴られると、当たった敵だけでなく

周囲の敵も切り裂かれていく。右足の蹴りはゆっくりしているものの、

一撃が重く、しかも当たると爆発のような物を伴うので、

直撃したものを、ぐしゃぐしゃにしつつも周囲の敵も、吹き飛ばす。


 加えて本体のスピードも速く、攻撃は簡単に避けられていく、

更には、左の掌から、火炎弾を発射、魔物に命中すると、爆発を起こし

周囲にいる魔物や、忍者たちを火だるまにする。

右の掌からは、ロボット軍団に向けて電撃の様なものを放出し、

受けたロボットたちは、次々と過電流によって火花を発し、

動きを停止していくと言う様に、近距離だけでなく、

遠距離攻撃でも敵を倒していく。


 加えて、怪人は印を組むと


「火遁の術!」


放たれた炎が、各軍団を襲い、魔物と忍者は火だるまになり


「風遁の術!」


風の刃によって、ロボット軍団も含め、切り裂かれバラバラとなっていき、


「雷遁の術!」


更には雷が落ちて、全員黒焦げとなった。


 戦いながら、怪人は思う。


(今回は楽でいいや)


ここでいう楽とは、別に敵が弱い訳では無い。先ずここは結界の中なので

周囲を破壊して、外の世界には、何も影響が無いのと、

加えて、孤立無援の状態なので、気を使う人間が、いないと言う事。

そして何よりも、多くの敵は、人では無い。全員人形みたいなものだから、

無茶苦茶にしても、問題ないと言う事。それ故に気兼ねが無い問う事である。


 これまで、不良の時も、ブローカーの時も

それなりではあるが周囲に気を使って戦っていた。

しかし、今回はそれが無いに等しいので、思いっきり戦う事が出来るのである。

故に、赤い怪人の力は、これまで以上に圧倒的な力を見せつける事になった。


 赤い怪人の戦いぶりを前にエクスマキナは、


「何て奴だ」


と驚愕の声を上げた。更に妲姫も、驚いたような声で、


「まさか、忍術も使ってくるとは……」


加えて、三人ともそろそろ手駒が少なくなってきた事もあり、

焦りが見え始めた。ここでインフェクラウンは、


「アイツ、やばいよ。今からでも僕の結界に切り替えよう」


とエクスマキナに向かって言った。


 そう今、張ってある結界はエクスマキナが展開した超科学による物。

何でエクスマキナが張ったかと言うと、

他の三人の結界に比べ、維持に負担がかからないからである

インフェクラウンと妲姫が結界を張る際や、維持に僅かながら力を消費するが、

この結界は、バッテリー式で、エクスマキナが着ているパワードスーツとは、

別に電源を用意しているので、三人に影響がないからだ。

しかし、閉じ込めておく事しか能がない。それは妲姫も同じ。


「僕の結界なら、空間を自由にできるから、空間そのものを戦力にできるよ」


インフェクラウンの結界なら、有利な状況を作れることは間違いない。

ただ結界を切り替えるには、今の結界を一度解除する必要がある。

うまくタイミングを合わせれば、入れ替えは瞬時に行われるので、

逃げたり、逆に入られたりすることは無いが、


「却下だ」

「なんでだよ!」

「我も反対だ。お前の事が信頼できぬ」


この三名は、決定的な対立はないものの、

信頼関係なんてものは無い。インフェクラウンの結界は、

裏切られた際に、世界が襲って来る様なものだからダメージが大きい。

だからこそ、可もなく不可もない結界が選ばれたわけであるが、


 この信頼の無さが、三名の首を絞めていた。

お互いに、信頼し協力はしていないのだから、

故に各軍団は、協力と言うものは無く、別れて動いている状態で、

連携が取れていない。もしも連携が取れているなら、

いくら怪人が圧倒的とはいえど、もう少しまともな、

立ち回りができたはずであった。


 この期に及んでは、もはや手遅れ、そして赤い怪人は、

左手を空に向けると、一筋の光が撃ち出された。妲姫は、


「流星光刃か!」


確かに、この後、空から無数の光が降ってきたので、

一見同じように見えるが、


「違う、こいつは別物だ!」


振ってきた光の量とその威力は、段違いで、降り注いできた光は。

レーザー砲のようなもので、当たれば爆発を起こし、各軍団を巻き込んでいく。

この状況に、三名とも、とっさに回避ではなく、

それぞれ、バリアーのようなものを張り、防御に徹した。

これに関しては英断であった。降り注ぐ光の量は、半端な量ではなく、

回避しきれなかっただろう。なおこの光は撃った怪人と

怪人が召喚したロボには、全く影響がないようで、

両者ともに、爆発に巻き込まれたものの、傷一つなかった。


 三名は、どうにか耐えきったものの、軍団はと言うと、

ロボと戦っていた大型の手駒も、だいぶ破壊され、他も全滅状態。

新たに補充はできなくもないが、妲姫は懐から、残りの人型を取り出すと


「もうこれだけか」


エクスマキナも、残りの兵器を確認するが、


「残りの機体は少ないな」


更に、インフェクラウンは


「もう使い魔が足りないよぉ~」


泣き声をあげる。補充要員も残り少ないようであった。


「ねえ、ここは逃げよう。僕らが倒すべきなのは、

桜井修一であって、従姉じゃないんだよ~」


結界を解除しないと、逃げられないのは、三名も同じこと。

だから、二名、特に結界を張っているエクスマキナに頼むが、


「まだ、まだやれる」

「我も引く気はない……」


両者ともに、喧嘩を売られたからには、黙ってられない性分で、

敵は、桜井修一ではないが、それでも、最後まで戦う気でいた。

なおこの両者、色々と意見はあっているが、信頼は皆無である。












 さて赤い怪人を含め、敵の三名も気づいていないことだったが、

実は結界内には、鬼姫がいたのである。


(なんつう奴や……)


いま彼女は、忍法影隠れで、怪人の影に身を隠していた。

なおこの影隠れとは言うが、実態は影に擬態し、

特定の対象に、取り付くというもので、実際は影がなくとも使える。

でも、影ができない場所で使えば、かなり不自然なものとなる。

そして対象が取り付いてしまうと、解除するまで、離れることはないが

消滅すると、強制的に解除される。

あと影になってる間は、一切の攻撃が効かず、誰からも気づかれないが、

術の解除以外、身動きが取れない。


 鬼姫は、姿を見せる機会を失って、影になったまま、

この状況を見ていた。そして赤い怪人の圧倒的な強さに驚きつつも

ある疑問を感じていた


(おかしい、確かに取り付いた相手は桜井やったはず……)


鬼姫こと千代子は、今日は彼女が護衛当番で、

自分の学校が終わると、直ぐに不津高に向かった。

本来は、修一たちの部活の事も考え、遅くに来るはずだったが、

本人の勘違いで、早めに来ていたのだった。


(そうや、今日は春ちゃん達の部活の日や……)


だから、どこかで時間を潰そうと思っていたが、

校舎から出てくる修一の姿を見つけ、彼の影に取り付いたはずだった。

なお一旦術を解除しなければ、別の人間に取り付くことはできない。

したがって、途中で別の人間に移ることは、あり得ないのだ。


 そうなると校舎から出てきた段階で、修一は恵美と入れ替わっていた事になる。

二人は容貌が似てる上、男子学生服を着ていたわけだから、

間違えても、おかしくないのだが、


(やっぱり、あれは桜井修一やったはずや……)


千代子は、どちらかと言えば間違えれば素直に謝るような人間である。

ただ今回は、自分の間違いを認めることができず、

頭を悩ませることとなった。


(とりあえず、お手並み拝見やな)


とにかく、今は、状況を見守ることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る