16「結託」

怪獣騒動の後、連中も何かあったのか、修一への襲撃は止んでいた。

そんな日々の中、修一は、護衛を含めた最近の出来事をきっかけに、

五人と連絡先を交換していたので、その中で、春奈、麻衣、千代子に、

連絡を取って、全員に


「お前らの敵は、お前たち自身の手で倒したい相手か?」


と尋ねた。帰ってきた答え、春奈は、


「向こうは、私を目の敵にしてるだろうけど、私としては、

悪事を止めるためにやってるのであって、どうしても私の手で、

奴を倒したいわけじゃないから」


麻衣は


「アイツは、私を……その……宿敵呼ばわりしてるけど……

私は、そんな事はないよ。ただ……奴の悪事を……止めたいだけで……」


千代子は


「別に、身内をどうされたわけやないしなあ、奴が、悪いことしとるから、

邪魔しとるだけで、そこまでは思ってへんよ。

でも奴は、ウチの事を八つ裂きにしたいと思ってるやろうけど」


これらの回答に対し、修一は、


「じゃあ、ほかの誰かが、連中を血祭りにあげたとしても、問題はないよな?」


と言い、三人は共通して、問題ないという答えをした。


 三人からの答えを聞いた修一は、WTWから戻ってきて、

再び棚に飾っているトイモードのメカニサルヴァを見て、


(こいつで踏みつぶしてやろうか)


と思った。ちなみに、修一はリモコンである時計は身に着けるようになっていた。

時計と言うか、いわゆるスマートウォッチ、瞳の言う通り便利そうなので

つけている。それはともかく、踏みつぶすとなると、

結界の中にあるうちはいいが、その瞬間に、結界が解けたとすれば、

周囲への影響は甚大なのでやめた。

ただその瞬間を、想像して修一は、ほくそ笑むのだった。


 そして、結局のところ、


(やっぱり、赤い怪人の力しかないか)


と言う答えにたどり着くのだった。






  一方、どこかの廃工場のような場所に、

特殊装甲服姿のエクスマキナと、インフェクラウン、妲姫の三名がいた。


「なんでお前らここに?」

「呼び出しがあってね」

「我もだ」


そしてエクスマキナも、


「お前らもか……」


ちなみにこの三名、共通して魔法少女の敵であるが、仲がいいわけではない。


 そこに、


「全員揃ったな……」


やって来たのは、仮面をつけた女だった。


「アンタは」


とエクスマキナが言うと、仮面の女は、


「桜井修一の件、状況は、芳しくないな……」


そう女こそが、修一の殺害を依頼した人物であった。


 エクスマキナは、


「邪魔が多いもので、魔法少女に、サイボーグ……」


インフェクラウンも、


「あのサイボーグ、なんだろうね。時々邪魔してくるけど、

チエおばちゃんの娘だけど、殺しちゃおうかな」


するとエクスマキナは、


「それは、許さん!あのサイボーグは芸術品だからな!」


一方、妲姫は、


「邪魔が入る上に、今は雲霧と揉めてるからな。おかげで寝込みが襲えん」


その上、怪獣騒動影響で、ここ数日は、まともに襲撃ができなかった。


 すると仮面の女は、


「お前らは、協力するという考えはないのか?

協力したとしても、成功報酬は等しく渡すと言ったはずだが」


すると三人は、互いに顔を合わせたかと思うと、


「こっちも、予定が会わないし……」

「我らは、ほかの連中とは組まん。特にこのようなガキとはな」


とインフェクラウンを指し示したので


「だれがガキだ!失礼しちゃうなぁ!」


不機嫌そうにする。


 先も述べたとおり、この三者は、決定的に対立はしていないものの、

仲良しではない。すると仮面の女は、


「成功報酬を倍額にする。お前ら協力しろ。あと今後は、協力しなければ、

たとえ奴を殺しても、報酬は渡さん」


すると、


「それは困る。新型兵器の開発資金が」

「こっちも、雲霧一味の所為で、金が要るんだ」

「僕も、欲しいものがあるの~」


と三名は、口々に言う。


「だったら協力して、奴を殺せ。

そもそも、協力すれば、魔法少女共も敵ではなかろう」

「それは、そうだが……」


とエクスマキナが言うと、すると仮面の女は、三名を指さしながら


「とにかく、協力しろ。わかったな!」


女の仮面越しの剣幕に負けて、


「分かりました」

「分かったよう~」

「分かった……」


渋々な雰囲気を出しつつも、三名は了承した。


 そして、仮面の女は、


「頼んだぞ。三人とも」


と言うと、その場から姿を消した。

いわゆるテレポーテーションと言うやつである。

そして残された三人は、再び顔を見合わせるが、

場は、何とも言えない微妙な空気となっていた。






 その日の朝、桜井修一は、なんだか知らないが、

なんとなくだがいつもと違うものを感じていた。

特に何かあったわけじゃない。いつも通りの朝で、

いつものように朝食を作り、今日は洗濯をしてから学校に向かう。

しかし、いつもと違うものを感じた修一は、


(今日、奴らと決着がつくかもしれない。赤い怪人によって……)


と思いつき、それに必要なことを実行しようと思った。





 今日は、部活の日、修一は早々に、部室に向かったようだった。

これまで、連中は学校に乗り込んできたことはないから、

春奈たちは、校内では、気には掛けているものの、別に修一の護衛とかはせず、

時々話をするくらいで、後は、これまで通りの接し方であった。


 さて修一を追う様に、部室に向かう春奈たちと言うか、

現視研ラノベ班であるが、その途中、麻衣が、思い出したように、


「春奈、今、思い出したんだけど……この前、桜井君が電話で……

妙な事、言ってたんだよね」


春奈は


「もしかして、奴らを私たちの手で倒したいかって話?」

「そう……もしかして、春奈の所にも」

「ええ……」


ここで、メイが


「何の話……?」


三人の敵は、交戦経験はあるとはいえ、殆ど無関係な為、

修一はメイには、連絡を入れてなかった。

同じ理由で明菜にも連絡を入れてない。


 春奈と麻衣は、電話の内容をメイに言うと、


「他の誰かが血祭り……多分……自分が血祭りにしてもいいか……って、

事だと思う……」


それを聞いた春奈は、心配そうに、


「まさか、桜井君、自分だけで、どうにかしようって言うんじゃ」

「可能性大……」


とメイは静かに答える。麻衣も心配げに、


「桜井君は、強いかもしれないけど……」


修一の強さは、分かっているが、不安が残る。

だからこそ護衛しているわけである。


 メイは、


「桜井君なら……大丈夫……。彼には……赤い怪人もいるし……」

「赤い怪人?」

「桜井君の従姉……」


春奈は思い出したように


「もしかして、あの恵美って人?」


頷くメイ。そして春奈は、

功美が、言っていた「魔法少女並の強さ」と言う言葉を思い出す。

更に、麻衣が


「そういえば……前にデモスゴードとやりあったときに……

現場に、そんな感じの奴がいたけど……」


メイは、


「見てないから……分からない……でも、もしかしたら……」


と言ったのち、


「ともかく……桜井君の事は……心配ない……」


するとここで春奈が、


「心配ないなら、どうして長瀬さんも、護衛を?」


と疑問を呈する。すると


「桜井君には……恩があるから……」


メイが修一の護衛をするのは、かつての恩があるのと、

それと、この前、学校をサボらせてまで自分に付き合わせた事への、

負い目もある為である。


 さて部室に来たら、部長がいるだけで、先に行ったはずの修一の姿がなかった。

荷物も置いてないので、まだ来ていないようだった。

最初はトイレにでも行っているのかと思ったが、

しかし、なかなか部室に来ない。そして思い立って春奈は、


「部長、桜井君は来てませんでしたか?」


すると返答は


「桜井は、今日は来ないぞ」

「「えっ?」」


部長の話では、修一は昼休みに、部長の元に来て、

今日は、用事があって、部活に来れないと言っていた。


 この事を聞いた春奈は、嫌な予感がして、


「すいません、私も、今日は帰っていいでしょうか?」

「私もです」


更にメイも


「私も……」


すると部長は、


「ラノベ班、全員か……」


部長は、腕を組んで考え込むようなしぐさをすると、


「のっぴきならない事情のようだな……」


と言ったのち


「いいぞ……」


すると春奈と麻衣が


「「ありがとうございます!」」


と声を上げ、メイも深々と頭を下げ、

そして三人は足早に部室を出て行った。


 





 さて修一と目される人物が、学校を出たのを、

エクスマキナ、インフェクラウン、妲姫の三名は

それぞれの方法、エクスマキナは、無人機、

残り二人は共に使い魔で確認し、修一の通学路から、

確実に通ると目される場所に集まり、待ち構えた。


 そして、その場所に修一がやってくると、

結界を展開し、逃げ場を防いだ。そして三人は修一の前に姿を現す。

まだ魔法少女の姿は見えない。もしかしたら魔法で

身を隠していて、戦いが始まると現れるかもしれず、

これまでも、そうだった。だが、今回は三人いるのだから、

問題はないと、三人とも思っていた。


「桜井修一、今日はこれまで通りにはいかないからな」

「そうそう、こっちにも、仲間がいるんだから」

「今日こそ、お命頂戴」


と余裕ぶった様子で、三人は、声をかける。

 

 戦力は、三名だけじゃない。妲姫はいつも通り忍者軍団を連れている。

インフェクラウンは魔物を大勢引きつつれ、

エクスマキナはパワードスーツを着た本人に加え、

ロボット軍団を引き連れている。三名にとって、圧倒的に有利な状況だった。


 しかし相手は、


「皆さん、人違いじゃあありませんか?」

「「「えっ?」」」


三名は驚いた修一と目された人物は女性声で、話したからだ。

よく見ると、恰好こそ、不津高の男子学生服姿だが、

そこのいたのは女性でよくよく見れば、服のサイズもあっていない。


「お前は一体?」


とエクスマキナが言うと、


「アタシは、桜井恵美、修一の従姉、そして……」


彼女の背中が割れ、出てきたものが、

その身を取り込むように、変身する。そう赤い怪人に。


「アンタたちを、ぶちのめす為に来た」


今ここに、三名と赤い怪人の戦いが始まる。

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