15「ロボット怪獣の後始末」

 さて昨日の事なので、街は完全に元通りとは言えなかったが、

それでも、日常は戻っていて、

あと学校は怪獣の襲撃の影響を受けなかった事もあって、

休校になっておらず、修一は普通に登校した。

 

 学校では、怪獣の話題でいっぱい。特に最初に現れた怪獣よりも

メカニサルヴァの方が話題になっていた。

そして意外なのは、最初に現れた怪獣の名は知らないのに、

みんな、何故かメカニサルヴァの名前を知ってることだった。


「なあメカニサルヴァってあのロボット怪獣の事か?

なんで名前知ってるんだ?」


と秋人に聞くと、


「それは、あの怪獣と同じ世界、テクノスガイア出身の人がいて、

その人から話を聞いたんだよ」


修一も、ロボットは超化学の存在だから、テクノスガイアかと思ったが、

その通りだったようである。

ちなみに、その人物は、怪獣退治に参加していたボランティアの一人で、

あの時現場で話をしていて、同じく参加していた者たちから、話が広がっている。


「なんでも、ロボットは三体作られてたらしいよ」

「あんな奴が、三体も!」

「聞いた話だと、一体は消息不明。もしかしたらなんだけど

魔機神に似た奴がいたから、ファンタテーラに飛ばされたのかも」


それを聞いた修一は、


「そういえば、マキプラに似たようなのがあったな。名前忘れたけど……」


そして、秋人は話を続ける。


「残り二体のうち一体は、有人機で、対巨大生物用の兵器として、

運営されてるらしいけど、残りが無人機として改修した後、暴走したらしい」


その暴走したのが、あのメカニサルヴァである。


「聞いた話じゃ、メカニサルヴァと言うのは、

元々はすべて有人機で、しかも開発者のこだわりとかで

完全自立起動機にされないように、細工してたらしいよ」


 そのメカニサルヴァの開発者は、ロボットが強大な力を持つがゆえに、

AI制御の際、暴走を恐れたらしい。

そのためシステムの根幹に、とにかく人を乗せないと、起動しないようにしていた。


「でもね、その細工にも穴があったらしくてさぁ、

人さえ乗せておけば、完全自立起動が出来たらしいよ」


人が乗っているから、無人とは言い難いが、

でもその人物は、座っているだけで操縦する必要はないとの事。


「なるほどそういうことか……」


 修一が捕まった時に、彼女が座ってるだけでいい

と言った理由が分かったような気がした。


「そういう事って、どういう事?」


と言われて、ハッとなったようになり、


「いや、なんでもない、なんでもない……」


と言って、誤魔化しつつ、


「しかし、実際に暴走したってことは、開発者は慧眼だったって事か」


と言った。


 修一の様子に秋人、怪訝な表情を浮かべつつも、


「確かに、そうなんだろうけど、ただ、あれが動いていたと言う事は、

誰かが捕まってたんだろうなあ」


別に、修一が、その誰かだと疑われてるわけではないが、修一は緊張した。


 ここで、秋人は不安気に、


「でもメカニサルヴァは、破壊できたわけじゃないからね。

どこかに身を隠しているだけだと思うから、再出現の可能性もあるし、

何より捕まってる人が心配だよ」


修一は、大丈夫と言いたかったが、

なんで大丈夫か聞かれると、困るので、言えなかった。


 さて、昨日の余波なのか、その日も襲撃はなかったが、

代わりに、修一宅の裏玄関につながる路地で、


「やあ、桜井君」


と創月瞳と鉢会った。偶然会ったというよりも、

待ち伏せされているような感じだった。そして彼女は、笑みを浮かべていたが、

どことなく意地の悪そうな雰囲気を感じた。


「なんか用か?」


あまり彼女に好印象を持っていないので、棘のあるような言い方で返すが、

彼女は、特に気にしてない様子で、笑みを浮かべたまま、


「今日、チミの家に行ってもいいかな?」

「なんで?」


彼女は笑みをますます意地の悪そうな感じにして、


「ロボット怪獣のフィギュアを見せてほしいの」

「!」

「持ってるよね?」


メカニサルヴァの事を言われていると思ったが、

とりあえず誤魔化そうと


「なんの、フィギュアだ。俺、まだ学生だから、

人様に、見せびらかせるほど高級な奴は持っていないぞ」


と言うと、彼女は両手で、修一を指差し、


「そんなこと言っちゃって、知ってるんだよ。チミはすごいフィギュアを、

手に入れたそうじゃない。本物の怪獣に変身するフィギュアをさ」

「!」


この一言に、修一は緊張した。すべてを知られていると思ったからだ。

だが、秋人から聞く形でメカニサルヴァのトイモードの事が、

一般に知られていることも知っているから、カマを掛けてる気がした。


「それって、昨日のロボット怪獣の事か、確かフィギュアに擬態できるんだっけ、

なんで俺が、それを持ってるって話になるの?」


と返した。すると彼女は、笑みを浮かべたまま。


「知らないと思うけど、イクシードは透視ができるんだよ」

「えっ?」

「あの時、メカニサルヴァのコックピットじゃ、誰かさん捕まって、

コードで縛られてたみたいだよ」

「!」


修一の表情が強張る。


 更に、瞳は、修一に接近してきて、


「それとイクシードは、千里眼も持ってる……」


修一は、圧迫感を感じたが、病気である「負けず嫌い」が出てこなくて、

後ずさり、壁まで追い詰められる。

そして、追い詰めた瞳は、修一の真横に手を置いた。

思いっきり叩きつけたわけではないので壁ドンとは言えないが、

傍目から見たら、壁ドンされてるような体勢だった。


「転移で、逃げたって無駄なんだから……」


もう観念するしかないと思ったとき、さらなる追い打ちがあった。


「おい創月、何しとるんや?」


どこからともなく鬼姫が姿を現した。影隠れで隠れていたものと思われる。


「ちょっと瞳、何やってるの」


春奈と麻衣が、やって来た。


「どうしたん二人とも、パトロールは?」


と言う鬼姫に、


「瞳から、メカニサルヴァの居所が分かるかもしれないから来てくれって」


彼女たちも消息を絶ったメカニサルヴァの事を、気にしていて、

その件で瞳に呼ばれたのだった。ちなみにメイはメンテナンスで今日はいない。


「いやあね、桜井君がメカニサルヴァの居所を知ってるからさぁ、

聞き出そうと思ってねえ」


すると、全員が、


「「「えっ!」」」


声を上げ、修一に注目する。


 そして修一は、観念したように、


「分かった、俺の家に来いよ」


と言った後、移動を始めるが、瞳と残りの三人がついてくるが、


「あと、そこの忍者、変身は解けよ」


と修一に言われ、千代子は変身を解いた。


 そして全員修一の家に着くと、彼は自室に案内した。部屋に着くと、直ぐに瞳が、


「これだね」


と言って、


「おい、ちょっと……」


と言う修一と無視して、勝手に棚に飾ってあったトイモードのメカニサルヴァを、

手に取って、机の上に置いた。


 一方、千代子はトイモードの事を知らないのか、


「なんや、この人形、昨日の怪獣によう似とるなあ」


と言いながら、まじまじと見ている。すると麻衣が、


「そのものだよ……」


千代子は、笑いながら、


「ちょっと麻衣、面白いこと言うなあ。そんなわけないやん」


すると春奈は、真剣な顔で、


「トイモードのこと知らないの?」

「なんやそれ?」


瞳が笑みを浮かべたまま、


「あのロボット怪獣は、フィギュアに擬態できるんだよ」

「ちょっと、冗談きついで、なあ……」


と笑いながら、修一や、春奈達の方を見るが、全員笑ってない。

むしろ真顔。


「マジなん?」


全員が、照らし合わせて居ないにもかかわらず、頷いた。


 すると千代子の表情から笑いが消えて、焦ったような表情で


「ちょっ!ちょっ!ちょっ!ちょっ!ちょっ!大丈夫なん!

こんなところに、あんなバケモン置いといて!」


と声を上げると、瞳は笑ったまま、


「大丈夫だよ~まあ桜井君次第だろうけど」

「「「えっ!」」」


春奈、麻衣、千代子の視線が一斉に、修一向いた。

修一は、気まずそうにしながら、


「ちょっと創月、俺に話を振らないで……って、何やってる!」


瞳は、修一の机の引き出しを勝手に開けていた。


「見つけた」


と言う瞳に、


「プライバシーの侵害だぞ!」


と怒る修一に、瞳は笑いながら、


「ごめんごめん」


どう見ても反省してない様子で言った後、机の中から、時計と言うか、

メカニサルヴァのリモコンを取り出した。


「こっちの方も確認したくてね」


そして瞳は、修一に時計を、投げつけた。


 修一は、それを受け止めつつ


「おいちょっと」


と声を上げると、


「それは身に着けておいた方がいいよ。ソーラー発電で

電波時計に、その他もろもろ、いろんな機能がついてるし

便利だろうし」


春奈は、


「何なのその時計?」


瞳は、笑いながら、それでいてさりげない言い方で、


「あのロボット怪獣のリモコン」


と言ったので、


「「「「えっ!」」」」


瞳以外の三人が驚き顔で声を上げた。


 ただ修一は他の三人とは違う意味で、驚いていて、


「何で知ってるんだ!」


メカニサルヴァの情報は、ある程度、噂になっているがリモコンの事は、

聞かなかったからだ。


「知り合いに聞いたの」


修一は


「その知り合いって、パソコンのモニター越しで話しかけてくる

ファンキーなグラサンのクズ野郎じゃねえだろうな」


すると瞳は笑顔のまま、


「チミ、アニメの見過ぎだよ~。その子は、テクノスガイアからの来訪者」


瞳の話では、今流れているメカニサルヴァの話は、この人物が情報源で、

リモコンに関しては、親しい間柄である瞳にしか言っていないとの事。


「まさか、その子って天童の」

「そうだよ。見守る会の会員」

「やっぱりか」


額に手を当て、何とも言えない気分になる修一。


 ここで春奈が、


「ところで、桜井君は、どうしてメカニサルヴァを持ってるわけ?」

「それは……」


この時、修一は躊躇したが、瞳が、


「それは、桜井君がメカニサルヴァのパイロットだからだよ」

「パイロット?もしかして、桜井君が捕まってたの!」


と春奈が声を上げると瞳が、


「そう、透視で確認したよ。桜井君は、自力で拘束を解いて、OSを初期化して、

AIを消したの」

「でも……どうして、AIを消したって……」


と麻衣が言うと、


「聞いた話じゃ、AIは無理やり搭載されたものだから、

いろいろと不具合があるんだよ~、まあ戦闘には支障はないけど、

トイモードは、使えなくなってるみたい」


トイモードが使えると言う事は、AIは消えた事を意味するという。

この事は、瞳の知り合いが、後で思い出して、瞳に話したことなので、

まだ知られていない。


 ここまで話を聞いた千代子は、


「ほな、急に怪獣の動きが止まったんは……」

「桜井君のおかげだよ」


と瞳が言うと、再び修一に注目が集まる。


 修一は、


「言っとくけど、まぐれだからな。まあ、外の状況は分かったから、

どうにかしたいと思ったけど、どうしようもなくて、

結局、やけっぱちで弄繰り回して、まぐれ当たりだったんだから」


すると春奈は、


「それでも、この街を、私たちを助けてくれたんだよね。ありがとう」

「ありがとう……桜井君……」

「ほんまや、ありがとな」


と礼を言うが、


「まぐれ当たりだからなあ……」


今、思い返すと、変なボタンを押しちゃって、

余計に状況を悪化させるかも知れなかったわけで、

そう思うと、素直に喜べなかった。


「結果オーライって奴だよ。チミがこの町を救ったんだ。

メカニサルヴァはその報酬として、ありがたく受け取っとけばいいさ」


 この言葉に、春奈は、


「それはだめでしょ、WTWに持って行かないと」

「でもさ、メカニサルヴァは桜井君の操縦者と設定してるからね」

「待って、OSを初期化したらパイロットの登録とか消えるんじゃ」

「そうだね。でも初期化した後、リモコンを最初に手にした人間を、

パイロットにしちゃうらしいよ」


ここで修一は、


「そういや、初期化の後、モニターにリモコンを取ってくれって出て、

つい触っちゃって……」


と言った後、


「でも、どうして、俺がパイロットだと……」


と尋ねると、


「コックピットから転移で出れるのも、トイモードが使えるのも、

パイロットだけらしいよ」


と言った後、瞳は、意地の悪そうな笑みを浮かべたまま


「とにかく、もらっちゃいなよ。それがあれば抑止力になると思うよ」


と言ったが、春奈は


「ダメよ、WTWに届けた方がいい」


と反対した。


 修一は、フィギュアとしては欲しいのだが、

物騒な代物なので、春奈の意見を聞いて、届けることにした。


「もったいない」


と瞳は不満げに言う。


 なお、まだ外は明るいし、受付はまだやってるようなので、

早速、WTWに届けた。ちなみに護衛で、春奈たちも付いてきた。

そして瞳は、


「見るもの見たから、満足……」


といって満足と言う割には、届け出に反対してたから不満げに言った。


 ちなみに、届け出る際に捕まったことやパイロットの事は隠し、

拾ったと言う事にして、渡した。ちなみに届け出た理由としては、

メカニサルヴァのトイモードの事を聞いて、気になったと言う事にした。

なおリモコンの方も、一緒に落ちていたから、持ってきたと言う事にした。


 そして二日後、修一宛に宅配便が届いた。


「なんで……?」


それはWTWからの物で、中身はトイモードのメカニサルヴァと

リモコンであった。同封されていた手紙には、

これが、メカニサルヴァと分かった上で、

修一に渡しても問題ないと判断したという事が書かれていた。


「どういう判断だ?」


判断理由は書いていない。

どこか釈然としないが、メカニサルヴァは晴れて修一の物となった。


 この瞬間、怪獣騒動は終わったことになるのだが、


(結局、五人の魔法少女の全員の敵と接触したんだよな)


今も、襲撃をしてくるエクスマキナ、インフェクラウン、九尾狐党。

早々に、手を出さないことを約束したラビリンス。

まさか、襲ってくるとは思わなかった怪獣。


「はぁ~」


修一はため息をつく。


(あ~もう、面倒だ。終わりにしよう。赤い怪人の力で)


そんなことを思う修一だった。

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