12「状況の整理と今後の事」

 さて今後の事を話しあう前に、情報の整理をした。


「ここまで、桜井君を狙って来たのは、エクスマキナ、インフェクラウン、

九尾狐党、どういうわけか全員、私たちの敵ね」


ここで修一は


「魔法少女は五人だから、まさか残りも……」


ここで瞳は


「他の皆みたいに、固定の敵とは居ないよ~」


と何処か不真面目な口調で言った。


 イクシードの敵は、怪獣や大型魔獣。

しかしこれまで戦って来た敵には黒幕的な奴は居ない。

なお特撮の巨大ヒーローの様に、

宇宙人や異次元人とかとやり合ったことは無いらしい。


「後、敵と言えば、零也君と真綾さんの恋路を邪魔する奴らかな」

「そいつらは、俺を襲ってくることは無いだろう」

「どうかな、分からないよ」


と笑いながら、瞳は言うのだった。


 あとはロストルナであるが、春奈によると、


「あの人、活動歴が長い分、敵も多いから」


すると麻衣が、


「今は、ラビリンスじゃ……」

「ラビリンス……」

「知ってるの?」


と春奈に聞かれ


「いや、俺の知ってるラビリンスと同じかどうか……」


ここで、瞳が


「それって、真綾さんが居た組織と対立してた所でしょ」

「そうだけど、名前しか知らないけど」


以前、真綾が居た、要はメイが居た組織の情報に、

対立する組織として、名前が載っていた。

しかし名前だけで、詳細は確認していなかった。


「そこで、合ってると思うよ~」

「どういう奴らだ」


春奈が


「私が聞いた話だけど……」


と前を置きして、話を始める。


 春奈の話によるとラビリンスは、秘密結社支援組織と呼ばれ、

所謂、悪の組織相手に商売をする連中で、それなりに大きな組織である

当初は武器の密売だけを行っていたが、現在は手を広げ、

武器、違法薬物、その他の製造販売、技術提供、情報提供、

作戦提案、その代行など多岐にわたり、そして多くの組織を顧客に持ち、

利益を上げている。


「ラビリンスは、あの組織の対立組織と取引があったから、

目を付けられてたみたいね」


と瞳が言い。


「よくそんな事、知ってたな?」


と修一が聞くと、


「調べたんだよ」


と瞳は言った。修一は何時もの病気が出てないから、

それ以上深く聞かなかった。それよりも、今後の事である。


「やっぱり次に来るのはラビリンスって事か?」

「可能性はあるよ。何者かに雇われてと感じだと思うけど」


と春奈は言った後、


「桜井君、敵に身に覚えとかない?」


と聞くが、修一は目線を逸らしながら


「正直言うと、この街に来る前、色々とあったから、

その、身に覚えがありすぎて……」


ここで蒼穹が、


「アンタ、これまで何しでかしたの」

「まあ、色々な、でも警察沙汰は無いし、

まあやり過ぎた感はあるけど、こっちに非は無いからな」


と弁明するように言うが、場は変な雰囲気になった。


 そして春奈が


「助けはいらないかもしれないけど、アイツらが

関わってきた以上、私達も放っては置けないから、

暫くは、桜井君の護衛をさせてもらうから」


なお瞳は、


「私はパス、他にもやる事があるし、

それに私の力は護衛には大げさでしょう。

まあ怪獣や大型魔獣に襲われたなら、助けてあげる」


との事。どこか人を馬鹿にしたような言い方である。


(やる事って、どうせ天童達のストーキングだろ)


と修一は思った。


 とにかく引き続き護衛はすると言う事で、話は決まった。

ちなみに、エクスマキナ、インフェクラウンは、

夜は活動しない。九尾狐党とラビリンスは、夜でも活動するが、

さっきの事があったから、九尾狐党は、

今日の所は来ないと思われる。ただラビリンスの事が心配なので


「今日は、泊めてもらうから」


と春奈が言うと、普段から身に付けているブレスレットに

手を当てる。

麻衣は、小さいステッキを取り出す。

そのステッキには頭にハート形の宝石のようなものが付いている。

千代子は、巻物の様な物を取り出す。それにも宝石のようなものが付いている。

そして光と共に、三つの鞄と寝袋が出てくる。


「これは……」

「収納空間に入れていたの」


それは、石の魔法で作った物で、三人とも同じものを作っていて

変身時に荷物を持っていた際に、荷物を保管するために使っている。

今日はそこにお泊りセットと寝袋を入れてきたと言う

ちなみに、この収納空間は、


「ちなみに、春ちゃんのアイデアや」


との事であるが、何故か千代子は自慢げに言う。なお瞳はと言うと、


「私は、自分で思いついて作ったよ」


と彼女も似たような物を持っている。


 収納空間の事は、さておいて、修一は、突然の事に、ビックリした様子で、


「ちょい待ち、ちょい待ち。聞いてないぞ」


声を上げる。更に麻衣も、


「事前に、話して無かったの?」


すると春奈は、気まずそうに、


「だって忙しくてさあ……」


なお急な話と言う事もある。春奈が麻衣から連絡を受けたのは、昨日の夜。

朝になって、九尾狐党とラビリンスが関わって来る可能性に気づいて、

修一の家に泊まり込むことを思いついた。


「でもクラスが一緒だから、話は付けとくって……」


と麻衣が言うと、更に気まずそうにする。すると、瞳が笑いながら


「あらら、うっかり春ちゃんかな?」

「………」


ここで修一が、


「うっかり?」


と言うと瞳が、


「忙しいってだけじゃなくて、どうせ忘れてたんだよね」


すると、千代子が、


「そうなんか?」


少しの沈黙の後、


「ごめん……」


と言って、二人に頭を下げた。


 そして修一は、


「護衛してくれるのは嬉しいけど、流石に、家に泊まるのはちょっとな……」


と渋るが、


「いいんじゃない、私が許可するわ」


という声が聞こえ、


「!」


声のする方を見ると、丁度表玄関に向かう方の扉が開いてて


「母さん……」


功美の姿があって更に、後ろの方には、


「お邪魔します……」


蒼崎明菜の姿があり、この瞬間、修一宅には5人の魔法少女が全員そろっていた。

明菜は、バッタリ功美と会って、夕食に誘われたとの事。


「あら、あなた達、こんにちは」


すると、千代子が、


「えっ?先生が桜井の母親?そういや名字が一緒や」


どうやら千代子は以前から功美と面識があるようだった。更に、瞳も


「ご無沙汰してます」


と挨拶したので、彼女も面識があるようだった。


「今日は、大人数のようだから、私が食事を作るわね」


と言って、台所に行こうとすると、瞳が、


「あの~私もお泊りしていいですか?」


と言って、いつの間にか、お泊りセットが入っているであろう鞄を持っていた。

おそらく彼女の収納空間に仕舞っていたものと思われる。


「いいわよ」


と快諾する功美。ここで修一が、


「ちょっと母さん……」


勝手に事を進めていく、功美に対し声を上げる修一だが、


「別にいいでしょ、泊まる部屋はあるんだし、食事は私が用意するわ」


そして蒼穹の方を向くと、


「ねえ蒼穹ちゃん、二階のお風呂は、使わせてくれるかしら」

「いいですけど」

「ありがとう。一階のお風呂だと、おかしな事が起きて、

修一が困るといけないから」


そう言うと、彼女はニヤリと笑みを浮かべた。

何とも言えない表情をする修一であった。


 そして功美は、


「蒼穹ちゃんも夕食どう?里美ちゃんも一緒にね」


その日の桜井家の夕食は、異界の冒険の打ち上げ以来、

随分と賑やかな物となった。


(それにしても、買い出しの翌日で良かったな)


昨日、家に帰ると功美の電話があって、

彼女は食糧の買い出しに行っていて、修一が、学校に行っている間に、

冷蔵庫に仕舞っていると言うものだった。

確かに冷蔵庫を開けると、食糧がいっぱいであった。

そのおかげで、今日の夕食を賄えているわけだが、


(何だか出来すぎだな……)


と思う修一であった。


 一方、食事に呼ばれていた里美は、


「あのこれは、これはどう集まりなんですか?」


春奈と麻衣は、修一の同級生で同じ部活だから分かるが、

初めて見かけた千代子と、里美も良く知っている明菜が、

ここに居る理由が分からないし、そして何よりも


「創月さん、なぜあなたが居るんですか」


彼女も、瞳の事を嫌っているのか、不快そうに言った。

しかし瞳は、気にしてない様子で


「まあ、楽しそうだから、あと桜井君の事も気になるし」


と言った後、修一の方を向き、


「言っとくけど、二番目だよ。それと一番と二番との間は、

越えられない壁が有るからね」


修一は面倒そうに、


「さいですか」


と言った。そして里美は、


「まあ、私達には関係のない事ですから別にいいですけど」


その後は、特に何も言ってこなかった。

それと、二階の風呂を使う事に関して、里美は、


「まあ、大家さんの頼みなら仕方ないですね」


と承諾した。



 取り敢えず夕食の後は、修一と功美とで、後片付けをした。

蒼穹と瞳以外、手伝いを申し出たが、


「お客さんに手伝ってもらったら悪いわ」


これに修一も同意し、後片付けは二人だけでやった。


 その後は、各自宿題をやるくらいで、特に何事もなく、夜も更けていった。

そして、修一が風呂から上がって、パジャマ姿で自室に戻るところ、

ちょうど二階で風呂に入っていた女子たちが降りて来た。

そこには、明菜の姿があった。夕食前に、修一が狙われている事を聞き、

ラビリンスの関与の可能性が有ると聞いて、彼女も護衛に参加した。


「それじゃ、おやすみなさい」


と挨拶し、修一は、自室に戻った。そして女子たちは、空き部屋で

寝袋は持って来ていたが、来客用の布団を引いて、

寝る事になっていて、準備は修一と功美で行った。

部屋割りは、春奈、麻衣、千代子と、瞳と明菜と言う部屋割りになった。


 ただ実際の所は、瞳以外交代で夜通し起きて、護衛するらしい。

一方、修一は、どうも落ち着かなかった。

家に女性を止めたと事と言えば、メイの時だけ、あの時は、一人だけだった。

蒼穹たちは、同じ家とは言っても、別の家と言う感じ、

しかし、今回の様に、大人数の女子を家に泊めるのは初めてで、

どうも、気を使って仕方なく、寝付けなかった。


「……あの手を使うか」


それが功を奏したのか、眠れた。


 翌朝、目を覚ますと、喉は乾いたので、台所に向かった。

水を一杯飲み、部屋に戻ろうとすると、丁度起きて来たのか、

それとも護衛の途中なのか、パジャマ姿の春奈と鉢合った。


「おはよう」


と挨拶すると


「おはようございます……って誰!」

「えっ、何を言って……」


次の瞬間、背後から、


「おはよう、恵美ちゃん。急に呼び出して悪かったわね」


声をかけてきたのは功美だった。彼女もパジャマ姿である。

そして、桜井恵美はハッとなったように、


「君は誰?」


どことなく、ワザとらしく言い出す。ここで功美が


「この子は修一の同級生の御神春奈ちゃん、

こっちは、夫の姪っ子の桜井恵美ちゃん」

「それじゃあ、桜井君の従姉なんですね」


と春奈は言う。


「修一が狙われてるって、小耳に挟んだから助っ人として呼んだの。

この子、凄いんだから、魔法少女並みにね」


功美は食事の準備をしつつも春奈たちが、夕食前に

その事を明菜に話した時の会話を聞いていたとの事。


「アタシ、ちょっと、外を見廻ってきますね」


と言って走り去る。残された春奈は、


「いつの間に来たんですか、私たち全然知らないですけど?」

「さあ」


と惚けるように答える功美。


「それに、パジャマの柄が桜井君と同じような」

「同じ柄の、予備のパジャマを貸したんじゃない?」


とやはりどこか惚けている様な口調で答える功美であった。


 その後、修一も含め、皆起きて来て功美が作った朝食を食べたが、


「あの恵美さんは?」


と春奈が言うと、修一がピクっとなった。功美が、


「朝食は、要らないって、連絡があったわ」

「そうですか……」


この後は、学校に行くのだが、瞳は、先に同じ学校の蒼穹たちと出て行った。

修一は明菜と一緒だった。彼女によると、これまでの傾向から、

登校時間、襲って来るのはラビリンスの可能性が有るらしい。


 他の三人は、離れた位置にいる。これは、ラビリンスに三人の顔バレを防ぐため、

ただ、明菜だけは顔バレしているので、修一の側に居た。

そして修一は、申し訳なさげに


「すいませんね。手間を掛けさせてしまって」

「別にいいのよ。今日は、大学、一限目は無いし、方向も一緒だしね」


気にしてないと言う様子で答える。


 しばらく歩いていると、急に人気が無くなった。


「結界よ!」


すると戦闘員のような奴らが、二人を囲んだ。身構える二人。


「身構える必要は無いわ」


という声と共に、フルフェイスのヘルメットをかぶって、

スーツを着た奴が、現れた。話し方もあるが、体格的に女性の様。


「ラビリンス首領……」

「いきなり!」


と驚愕の声を上げる。それもそうだ、ラビリンスの襲来は予想でいるが

いきなり首領がやって来るとは思わなかったからである。

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