10「忍法解放」

 修一が叫ぶのと共に、鎧を纏う。鞄は鎧の収納空間にしまい、

更に、「ヒーロー」を発動させ、加えてソウルウェポンも発動させる。

この時、修一は、相手が異なるものの、三度目の襲撃で、気が立っていて、

周りの事が気にする余裕が無かった。


 「ヒーロー」にソウルウェポンを発動した事で、リーダー格のくノ一が、


「スーパーサイキッカーとは、聞いてないぞ!」


普通だったら、やっちまったと思うところであるが、

この時、修一は聞いてないと言う方が気になった。


(コイツらも、誰かに依頼されてるんだな……)


教えてくれるとは思ってないが、その事を指摘しようとすると、


「へぇ、桜井ってスーパーサイキッカーって、奴やったんや」


と後ろから鬼姫の声がした。


「!」


振り返ると、その鬼姫が、いつの間にか居た。


「鬼姫、見参!」


くノ一も驚いた様子で、


「お前、いつの間に!」


彼女は、修一の前に出て来ると、彼を指し示しながら、


「コイツの影に隠れとったんや、忍法影隠れって奴でな」


修一が、驚いたように


「いつからだ」


と聞くと、


「学校出たあたりからや、実は、ま……フェイブルの発案で、

交代で、アンタを護衛する事になったんや」


昨日、狙われていると言う話を聞いて、黙っていられなかったと思われる。


「まさか、九尾狐党が出て来るとは、思わんかったけどな」


すると、向こうも


「お前が来るとは思わなかったぞ。エセ忍者め」

「えせ?」

「魔法で忍法を真似るとは、言語道断!」


と鬼姫を、指さし怒号のような声を上げる


「ファンタテーラじゃ忍び魔法って言うてな。

向こうじゃ忍法は魔法の一種らしいで」


特に気にもしてない様子で、


「うるさい!貴様の存在は、忍者への冒涜だ」


その言葉を聞いて、修一は、


(コイツ、エクスマキナと似てるな)


と思う。そして鬼姫は、


「やかましい!透波の妲姫に言われとう無いわ!」


この九尾狐党は、忍法を悪用している半グレ集団。

人殺しだって、躊躇しない連中で、この街に来て、

偶然、鬼姫がこいつらの邪魔をして以来対立関係にある。

なお妲姫と言うのは、九尾狐党のリーダーの女性に付けられる名前。


「まあいい、二人まとめて始末してやる。やっちまえ!」


周りにいた忍者共が襲って来る。


 ここで、鬼姫が、


「容赦する必要は無いで、コイツらは傀儡人形や」

「えっ?」


素早くそれでいて、大勢で襲って来るので、

修一は、メタモルブレードを大鎌に変形させ、応戦。

一方、鬼姫は武器として刀ともう一つ小太刀を持っている。

彼女は、小太刀の方を抜き、構え


「行くで、忍法風暗剣!」


彼女の体に一瞬、魔法陣が浮かんだと思うと、

小太刀が風の様な物を纏う。そして次の瞬間、素早い動きで、

鬼姫は忍者たちを切り裂いていく。これは、風の力で武器の攻撃力を上げつつも、

更には俊敏性を上げ、素早く敵を切り裂く技である。


 そして、切り裂かれた忍者は消滅し、跡には紙で出来た人型だけが残る。

敵と戦いつつも、それを見た修一は、


(なるほど傀儡人形だな……)


そして敵の攻撃を防ぎつつ、


(集団と思わせといて、実態は、あの妲姫って奴だけか)


ここで、修一は敵の首をはねた。

血は出なくて、忍者は消滅、首の当りがちぎれた人型の紙が残る。


(もしかしたら、あの妲姫って奴も人形だったりしてな)


ふとそんな事を思った。


 そして修一は


(人形と分かれば、容赦はいらないな……)


と思い、バーストブレイズを使おうとしたが、

ここで忍者一人が、炎を放った。いわゆる火遁の術である。

どうやら人形ではあるが、忍術を使って来るようだった。

その炎を修一は、回避するが


「熱っ!」


肩をかすめ熱が襲って来る鎧を着ているので、火傷はしてないが、

熱かった。その直後、頭の中で、


【『火遁の術』、解放。】


という声が響いた。そして修一は、釣られる様に印を組み、


「火遁の術!」


と炎を放った。


「忍術だと!お前そんなものまで使えるのか!」


と驚愕の声を上げる妲姫。


 一方、


「忍法雷刃破!」


魔法陣が、現れると共に鬼姫は、左手から強力な電撃を放ち、

忍者たちを、倒していき、倒された忍者は紙になるが、それも黒焦げになって行く。

そして、修一に、


「お前、忍法が使えるんか」

「今、使えるようになった」

「「はぁ?」」


と鬼姫と妲姫が、同時に声を上げた。


 その後も、修一は、バーストブレイズを使うタイミングで、

忍者たちは遁術を使って来た。


(本来、遁術って逃げるための術だったような……)


 修一はこの時点では知らないが、

敵が使って来る忍法は、遠間流忍法と言われる超技能で、

各種遁術は、本来は逃げ隠れの為の術であるが、

それが進化して、攻撃の術に変わったものである。


 受けた遁術は、ギリギリで避けるか、当たっても盾形態のメタモルブレードで

防ぐが、鎧のおかげで、大した怪我はない。

しかし、受ければ受けるほど、修一が使える忍法が増えていく


【『金遁の術』、解放。】


持っている武器を強化する術。敵の刃による攻撃を、

メタモルブレードで弾いた時に解放された。

武器を強化すると言う物だが、見た目的に使っているかどうか、

分かりにくい。


【『水遁の術』、解放。】


水を刃に変えるほか、水が近くに無い時は強力な冷気を発する。

修一が受けたのは冷気だった。火遁の術の様にかすって、


「冷てえ!」


これも鎧のおかげで、たいしたことは無かったが、

冷たさを感じた。そして解放された。


【『木遁の術』、解放。】


周囲の植物を武器に変える術。なお修一が受けたのは太い木の根っこが

襲ってくると言う物で、以前の異界でのエビルフォレストの様に、

大鎌形態のメタモルブレードで対応したが、

根っこを切った際に、使えるようになった。


【『風遁の術』、解放。】


風の刃を発生させる術。これは、敵が何発も撃って来た上、

弾速も早いので、避けきれずにメタモルブレードを盾にして、

何発かは、防御した。最初に防御した際に使用可能になった。


【『土遁の術』、解放。】


石や土を武器に変える術。岩石の射出や、地を這う衝撃波。

そして、修一が受けたのは、地面から岩の壁が出てくると言う物で。

岩の壁で、彼を圧し潰そうとしたが、

無意識のうちに、メタモルブレードをハンマー形態に変化させ

砕いた。その際に破片が当たり、術が使えるようになった。


 その他にも雷遁の術、光遁の術、闇遁の術など、色んな遁術があって、

それらも受けるたびに、「解放」と言う名のもとに、

修一が使えるようになっていった。

そして金遁の術は、気付かれなかったが、残りの術は、解放と同時に

反射的に使用してしまったので、妲姫は、口をあんぐりとさせ、


「何なんだ、お前、受けた忍法を撃ち返してくるなんて」

「お前、中々の使い手やったんやな」


と鬼姫は感心しているように言うが、修一は、


「さっきも言ったけど今、使えるようになったんだ」

「はぁ?」


と訳が分からないと言うような声を上げる。


 その後は、バーストブレイズを使うまでもなく、

これまで、「解放」された遁術と、鬼姫の力もあって、

忍者たちを倒していった。その後、妲姫は、懐から人型の紙を取り出し、

それをバラ撒くと、それらは忍者の姿に変わる。

しかしそいつらも、二人によって倒されていき、


「後は、アンタだけやで妲姫」


その妲姫は口元を歪ませ、悔しそうしていて、


「良いだろう。この妲姫、自ら、お前たちの相手をしてやる!」

「まあ、いつもの事やけどな」


九尾狐党との戦いは、いつもこんな感じである。


「我が忍法の神髄、とくと見るがいい!」


と妲姫が叫び、印を組むと


「忍法劫火灼熱!」


火遁の術とは比べ物にならないくらいの炎が放出された。


「!」


回避するが、その熱は伝わって来る。


【『忍法劫火灼熱』、解放。】


ここで、同じく回避行動を取った鬼姫が、


「コイツはフェイントや、デカい術が来るで」


先の術も強力だったが、あくまでも、隙を作る為のフェイント、

更なる術が発動される


「忍法流星光刃!」


彼女は左手を天に向けるとそこから、空に向けて光が放たれ、

すると空から、無数の光の雨が降って来た。

鬼姫は、慣れているのか手際よく避けていくが


「わわわわわっ!」


修一は、逃げまどう様に攻撃を回避していく。


「逃げろ、逃げろ」


と嘲笑う妲姫。


 修一は、途中からメタモルブレードを盾にして、

降って来た光を防御した。


【『忍法流星光刃』、解放。】


攻撃が止むと修一は、


「忍法劫火灼熱!」

「なっ!」


この術まで、使って来るとは思わなかったのか、

回避したものの妲姫は、遁術の時以上に、驚く。


「忍法流星光刃!」

「えーーーーーーーーーーーーーー!」


自分がやった事を、丸々やり返されたのである。

しかも、自分は使うが、他人から使われたのは初めてなので、


「うわわわわ!」


素早く避けてはいくが、マヌケっぽく、何発かは被弾した。


 この後、妲姫は、自慢の忍法を使うが、修一は、その全てを、

先の遁術同様に、すべて撃ち返して来た。


「何なんだ。お前は!」


と叫ぶ妲姫に対して、


「俺も時々分からなくなるよ」


と答える。これは惚けているとかではなく、修一の本気の答えである。


 次の瞬間、ガラスにひびが入る様な音がした。そう結果を破る音。

そして結界が崩壊し、メタルマギア、フェイブルが姿を見せる。

そう二人が結界を破壊したのだ。


「遅れてごめん!」


と謝るメタルマギア、実は、結界の中からでも外と連絡が取れる

通信魔法で鬼姫は二人に連絡していたのだった。


「こっちは大丈夫や、つーか助けは、要らなんだけどな」


そして、修一が技を撃ち返して来るのと、二人の登場で、

まずいと思ったのか、煙幕を張った。


【『忍法煙隠れ』、解放。】


この煙幕も忍法のようであるが、


「覚えてろよ」


ベタな捨て台詞を遺し、煙が張れると、妲姫の姿は無かった。


 修一は黒幕の事を聞きそびれたので、


(しまった!)


と思いつつも、煙幕の所為で、目立って人が集まってきたようなので、

鎧を脱ぎ、能力も解除。鞄も取り出す。

同様に煙に紛れて変身を解いた三人と一緒に、この場を後にした。

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