8「エクスマキナの正体?」
翌日、昨日の事を聞きたいと言う事で、空き教室に、
春奈と麻衣に呼び出された修一、そして何故か、メイの姿もあった。
そして修一は、事情を説明した。
「やっぱり、この前の件で仕返しに来たのかな……」
と春奈が言うと、
「それなんだけどな。この前の件とは違うみたいなんだ」
「どう言う事?」
「奴は、最初、俺の事が分からなかったみたいでな、
『思いもしなかった』とまで言ったんだ」
「それじゃあ……何で?」
と麻衣が尋ねると
「この前とは違う理由で、俺を襲ったんだと思う」
「理由に……心当たりは……」
とメイに言われるが、修一は、頭を押さえ
「無いことは無いけど……でも、気付かない所で恨みを買ったかもしれないな。
奴は、この学校の生徒みたいだから」
「「えっ!」」
と驚き声を上げる春奈と麻衣。
「どう言う事?」
「アイツ、『同じ学校の生徒』って言ってたんだ」
「その言い方だったら先生の可能性もあるんじゃ」
と言われた修一は
「後で考えたら、そうなんだけど、その時は、生徒の方が浮かんじゃって、
学生かって聞いたら、『私の秘密を知ったな』とか言ってたから」
ここでメイが
「生徒の可能性……濃厚……」
と言うが、
「ちょっと待って、最初にエクスマキナが現れたのって、
三十年前って聞いた事があるわよ」
「そんなに昔から、活動してたのか。でもあの声は若かったぞ」
「声?」
「お前らが来た頃には戻ってたけど、機械が一時的に壊れたみたいでな。
地声が聞こえたんだよ。若くて女性だった」
「でも……」
と納得いかなそうな春奈だったが、修一は、ふと思いつき、
「襲名してるんじゃないのか。お前らみたいに……」
と言うと、メイが、
「可能性……大……」
すると麻衣が、
「その……じゃあエクスマキナは、この学校の女子生徒……」
「同級生か、先輩かって所だな……」
修一達は、まだ一年なので、後輩はいない。
「もし桜井君の言う通りなら、
奴は私たちの身近にいるかも知れないって事ね……」
「だから、俺が気づかない所で恨みを買ったのかもしれない」
エクスマキナが、この学校の女子生徒である事は当たっているが、
彼女が、当初、修一を襲った理由については、違っていた。
さて、修一は、その日は弁当を持って来なくて、学食で食事をした。
普段は自分で弁当を作って来る彼であるが、
今日は無性に学食のソースカツ丼が食いたくなったのである。
そこに、部長の姿があった。彼女は仮面の口の部分を開き、
豚カツ定食を食べていたが、番長ゆえに周囲の席は空いている。
「正面の席いいですか?」
「良いぞ」
と言って彼女の正面の席に座った。
この学校でこんな事ができるのは、現視研の部員くらいである。
修一は、ソースカツ丼をかきこみつつも、ふと思い立った事を聞いた。
「この学校の生徒で、部長が、凄いって思える。
超科学の技術者っています?」
すると、返事は
「一人いるぞ」
「誰です?」
「ロボ研の部長だ」
この時、修一の脳裏に、下校時に春奈と話をしている上級生の、
西崎絵里菜の事が頭に浮かぶ。
「西崎絵里菜先輩ですか?」
「そうだが知り合いか?」
「いえ、名前を聞いただけで……」
と言いかけて、
「あっ!」
と声を上げた。
「どうした?」
「いえ、ちょっと思い出した事があって……」
そうあの声が、あの時、春奈と話していた絵里菜と声が一緒の気がしたのだ。
しかしながら、すぐ側で聞いたわけじゃないので、
ハッキリ、その通りだと言えないのだが。
「ところで、西崎先輩って魔法嫌いとかは……」
「確かに、そう言うところがある。
だからと言って魔法使いを嫌ってるわけじゃない」
実際、魔法使いの春奈を部に引き入れようとしていたし、
世話を焼いているくらいである。
「ただ、超科学と魔法を混ぜる事を嫌うな。アタシのスーツは超科学だけでなく
魔法技術も取り入れているから、ケチを付けられた事がある。
あとアイツはロボが好きだけど魔機神は嫌ってるな。『超科学への冒涜』だとか」
冒涜と言う言葉を聞いて、エクスマキナの言葉を思い出す。
(やっぱり、エクスマキナの正体は西崎先輩なのか)
状況証拠だけで、確証とは言えない。
「西崎絵里菜がどうかしたのか?」
「いえ、ちょっと気になる事があって」
「何かあるのか?」
「いえ、まだ確証が無いものですから、まだ人には言えなくて……」
そう言うと、ソースカツ丼の残りをかき込む。
部長は、
「そうか……」
と言いつつも、修一が食事を食べ終わったタイミングで、
「良かったら相談に乗るが……」
「いえ、部長のお手は煩わせませんよ」
と言った後、
「ごちそうさまでした」
と言って立ち上がり、
「また部室で」
と挨拶した後、その場を後にした。
いつもの好奇心と言う病気は出ているが、
加えて、なぜ自分を狙ったのか、知りたかった。
しかし、学校で、むやみに接触して、騒ぎにしてはならないと言う気持ちもあり、
校内では、様子見と言う形だった。ちなみに、彼女のクラスは直ぐに分かった。
何故かと言うと、ロボ研の勧誘のポスターに、入部希望者は、
部室か、顧問の教師か、「3Aの西崎まで」と書かれていたからである。
クラスが分かれば、監視も容易い。ただ学校では、
絵里菜は、特に、怪しい行動は取らなかった。
そして今日は、部活が無いので、彼女は、学校を出る。
ちなみに、部活の日は現視研と被っているので、
当然修一も、部活が無いので、彼女を追った。
そして、彼女は、未来電気街へ向かっているようだった。
(おかしい事じゃないよな)
超科学の技術者なのだから、ここに向かってもおかしくない。
それは、エクスマキナも同じ事だが。
彼女を追っていて、ふと思った事があった。
(そう言えば、俺、酷い事言ったよな。全裸で土下座しろって……)
相手が、パワードスーツ形状から男性だと思っていたから、
あんな事を言ったわけだが、女性だと分かると、
相手が、ろくでなしだとしても、罪悪感がした。
さて絵里菜は、電気店を梯子して、コンピューターとか、
機械類を見ていた。今のところ、おかしな動きは見えない。
(コソコソしてないで、直接話して、軽く挑発したら、
直ぐ本性を見せそうな気がするな)
そんな事を思いつつも、今居る電気街は人も多いから、
彼女と接触するのは、まずい。本当にエクスマキナだったら、
何を起こすか分からないからだ。
取り敢えず、迷惑の掛からない場所で接触しようとは思ったが、
(なんだか、女の子を追いかけてる変質者みたいだな……)
そんな事を思い、自己嫌悪がした。
その後、未来商店街を出て、丁度人気のない場所に来た時、
彼女に声を掛けようとすると、周囲の空間が歪んだ。
「!」
直ぐに元には戻ったが、西崎絵里菜の姿は見えなくなっているし、
加えて周囲は異様な雰囲気になっていた。
「まさか結界」
しかしこの前とは、だいぶ雰囲気が違うから、
別人が張ったものだと思った。ただ、昨日とは違い分かりやすかった。
そして修一は、嫌な予感に襲われた。
またおかしな事が起きるのではないかと言う不安を感じたが、
それは当たっていた。修一は、すこしの間、立ち止まって、
周りを見渡しながら、警戒した。少しして、
「ウーーーーーーーーー!」
と言う唸り声が聞こえて来た。
声のする方を見ると、そこには
「狼男……」
人の形をしてはいたが、正確には、毛むくじゃらの体に、
頭は狼の頭をしていて、人型の狼、要は魔獣ワーウルフである。
それが、牙を剥き出しにして唸り声をあげているのだから、
強い能力者でない限りは、逃げ出すだろう。
しかし、修一は、戦える強さはあるが、それ以前に修一が採った行動は、
彼の病気である負けず嫌いが出た所為だが、相手と目を合わせ、同じ様に
「ウーーーーーーーーー!」
と唸り声をあげた。
そしてワーウルフが
「グガァアアー!」
と吠えると、修一も対抗心からが、大きな声で
「ウゥゴオォオオオー!」
と叫んだというか、吠えた。するとワーウルフは腰を抜かしたかと思うと、
道化師に姿を変えた。
「ビビった。チビるかと思った」
と声を上げた。その声は妙に妙に高かった。
(なんだ、海外のホラー小説に出てきたピエロみたいだな)
同時に、幼いころの思い出がよみがえり、イラついてきて、
不機嫌そうに修一は問う。
「誰だお前?」
すると道化師は立ち上がると、
「初めまして、桜井君。僕は、インフェクラウン。
君を殺しに来たよ。あと、逃げようとしても無駄だからね。
ここは僕の世界なんだから」
修一の不安は、的中したのだった。
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