7「エクスマキナの襲撃」

 ロボットは、一見動きが遅そうに見えるが、

思いのほか俊敏で、マジックハンドのような手を修一に叩きつけて来た。


「うわっ!」


その一撃を避ける修一、その際に鞄を落とす。

更に目の部分ビーム攻撃を撃って来る。


「わわわわわ!」


修一は、その攻撃を避けながらも、能力を発動させる。

なお鎧は、持ってきてはいない。

そして引き続き、攻撃を避けつつも、ロボに向かっていき、

メタモルブレードで切りつけた。すると、ロボットから、声が聞こえた。

それは変声機を通しているかのような機械的な声。


「お前、あの時の冒険者か」


今の言葉と、ロボットと言う事もあって、


「お前、エクスマキナか?」

「いかにも……」


それを聞いて、あの日曜日の事を思い出す。


「まさか、この前の事で……」

「確かに、腹は立ったがな、でも違う」

「はぁ?」

「お前があの時の冒険者とは、思いもしなかった」


ますます訳の分からない事を言う。


「しかも、同じ学校の生徒とはな……」


その言葉を聞いて、先生と言う可能性もあったが、

思いついたのは生徒の方だった。


「同じ学校?お前、学生なのか」

「あっ」


うっかり口が滑ったようである。すると、


「私の秘密を知ったな!」


ロボットはマジックハンドで攻撃してきた。修一はそれを避けつつ、間合いを取る。


「口封じしたいなら、先に話した奴を粛清しろよ!」


更に再びビーム攻撃、それも避け、


「ああ、出来ないよなあ。自分で漏らしてるんだからよ」

「うるさい!」


という声が帰って来る。


 その後は、引き続き接近して格闘攻撃に、離れた時はビーム攻撃、

更にはロボの口の当たりが開いて火炎放射。


「熱!」


直撃はせずとも、熱は飛んでくる。

更に、背中の方から超小型のミサイルまで撃って来た。

見た目的には、玩具みたいだが、攻撃能力ありそうで、


「うわわわわわ!」


幾つか避けつつも、避けきれない分は、メタモルブレードを

大鎌に変化させて、切り裂いて破壊する。

破壊された。ミサイルは、極小規模であるが、爆発の様な物を起こす。

これらの攻撃を、別々にではなく、複合的に使って来る。


 これら敵の猛攻に対し、


「くそっ!キリがない!」


そう言って修一は、引き続きロボの攻撃を避けながら、

メタモルブレードをショットガン形態に変形させ、その攻撃と

更に、「ヒーロー」の能力である気弾も撃つ。

修一の攻撃は、すべて当たっていたが、


「その程度の攻撃など、聞かないぞ!」


と相手が言って来るように、敵の装甲は丈夫であった。


 ここで修一は気づいた。


(随分と派手にドンパチしてるけど、全然、人が来ない……)


すると、彼の心を読んだかの様に、


「助けは来ないぞ。ここは外界から切り離された疑似空間だ」


と言いながらビーム攻撃をしてくる。


「魔法を使ったのか……」


と言いながら、攻撃を避ける修一、すると向こうは、


「違う!超科学だ。魔法と一緒にするな!」


と返して来た。


「魔法嫌いか……」


超科学を扱うものの中には、魔法を嫌う連中もいると言うのを、

秋人から聞いた事があった。逆に超科学を忌み嫌う魔法使いもいる。

そして、回避と反撃を繰り返しながら、修一は言う。


「もしかして、お前が、メタルマギアを狙うのは、それでか」


すると、ますます苛立っているかのような口調で、


「魔法で超科学の再現など、そんな冒涜、許せるものか!」


向こうの苛立ちが、反映されたのか、余計に攻撃が激化した。


 敵の攻撃を、気弾や、メタモルブレードの打ち消しつつも、

辛くも回避しつつける修一。


(こうなったら、切り札を使うか、それとも、あの魔法を……)


しかし問題なのは、相手が同じ学校の生徒である事。

ロボは、遠隔操作と思われるから、例えロボが倒せても

相手は無傷である。そうなれば、修一の力が、特に魔法が使える事が、

規格外である事がバレたままと言う事になる。

同じ学校の生徒と言うだけでも気が引けるのに、それが、悪党となれば余計だ。


 修一は、攻撃を回避しつつも、しばし悩んだが。


(そうだ!)


思いついた修一は、


「DXM!」


暫く使ってなかったから、忘れがちになっていた。DXMを呼び出した。


「ブラスター銃か?」


と突如現れたからか、向こうも気にしてるようだった。


「電磁パルス!」


修一が叫ぶと、銃のシリンダーが「カチッ」という音立てて動く。

そして彼は、銃をロボに向けると、引き金を引いた。

しかし弾が発射される気配はない。


「どうした!不発か!」


どうも相手は、笑ってるように思えた。


 しかし次の瞬間、ロボの動きに変化が起きた。

動きが鈍くなり、さっきから放出している炎やら、ビーム攻撃が、止んだのである。


「システムエラーだと、どうした!」


と慌てている様な声が聞こえた。


(効果があるようだな……)


修一は、ひたすら銃をロボに向けて立っているだけであった。


「何がどうなって……」


直ぐに、銃を向けてる修一が何かしていると勘づいたのか。


「お前何をした!」


と声を上げた。


「倫理観ゼロだが、それでも科学者だろ、自分で調べな」


と修一は言い放った。


 やがて、機械が煙を上げ始めた頃、


「電磁パルスだと!確かに、お前が叫んでいたが……」


向こうは狼狽しているようだった。そう強力な電磁パルスの影響で、

機体が誤動作を起こしているのである


「超能力で出せるレベルじゃないぞ。まさかその銃から撃ってるのか!

ありえない。コイツは軍事兵器レベルだぞ」

「何でだろうな、俺も知らん。科学者なら解明してみろ」


実際の所、DXMの原理は修一も知らない。


 そうこうしている内に、誤動作はますます酷くなり、ロボの動きは止まり、

更に、あちこちから煙が上がる。


(もうここまでだな)


電磁パルスの放出時間は、修一も分からないのであるが

ただ何となくであるが残りの時間が、分かった。

もう使い切ったと言う感じがして、修一は、銃を下ろし引き金から、指を離す。

ロボは煙を上げながら、膝をついていた。


(やったか……)


そう思ったが、同時に、


(色々、やっちまったな……)


と言う思いに駆られた。なんせ、エクスマキナは同じ学校の生徒の可能性があり、

規格外である事と、更に切り札であるイーブンの事は隠せたが、

それ以外、特にスーパーサイキッカーである事はバレたようだった。

その事が、彼の望む普通を遠のける気がして、不安を感じた。


 そして、煙を上げながら動きを止めたロボを再度見て、


(取り敢えず、敵は倒せたけど)


あとは疑似空間からどうやって出るかである。

以前は、鎧の魔王こと、秋人が助けてくれたが、

今回も、そうなるとは限らないので、自力でどうにかするしかないが、

しかしどうすればいいか、困ってしまった。


(この場に、居ても仕方ないな……)


そう思った修一は、その場を移動しようとすると


「舐めるな!」


という声と共に、ロボが再び動き出した。


「まだ動けるのか!」


と言っても、さっきの様にレーザーや火炎放射は使ってこない。

ただ、俊敏さはそのままで、接近して来て、

ひたすら、殴りかかると言う格闘戦である。しかも


「まだ終わりじゃないぞ!」

(この声は……)


ロボが不具合を起こしているからか、

声が機械加工されてない。いわば地声となっていた。

その声は、若い女性で、修一には何処かで聞き覚えのある声だった。


(同じ学校の生徒なら、聞き覚えがあってもおかしくないか……)


 その後も、修一は、敵の攻撃を避けつつも、

間合いを取ってDXMのマグナム弾の遠距離攻撃、

或いは隙を見てのメタモルブレードでの接近攻撃を、

繰り返す。しかし、相手は丈夫で、装甲に傷がついていているが、

まだまだ決定的とは言えない。


(電磁パルスは、直ぐには使えないからな)


ちなみに、彼の負けず嫌いと言う病気故に、

この場から逃げ出すと言う考えはなかった。


 そして暫し戦いが続いた後、壁を思いっきり叩いているような音と、

ガラスにひびが入るような音が、聞こえてきた。


(誰かが結界を、壊している)


やがて、修一の背後から、ガラスの割れる音と突風が吹き、


「お前ら!」


振り返ると、メタルマギア、フェイブル、鬼姫の姿があった。

どうやら、三人の魔法少女たちが、結界を壊したようだった。


 そして、修一はロボと間合いを取っていたので、

三人は、修一の前に出て、彼に背を向ける形で

ロボと修一の間に陣取った。メタルマギアは、エネルギー弾、

フェイブルは、マスケット銃による銃撃、鬼姫は、印を組み雷の様な電撃で攻撃。


 そして三人の攻撃で、


「畜生!覚えてろ!」


何ともベタな声が聞こえたかと思うと、ロボは爆発した。

余談であるが、三人が来た時点で機械が調子を取り戻したのか、

エクスマキナの声は機械加工されたものになっていた。


 ロボの破壊を見届けた後、メタルマギアは、


「大丈夫?」


と声を掛けてきたので、


「ああ……助けてくれて、ありがとう」


すると鬼姫が、


「まあ、ウチらの助けは必要なかったようやけどな」


と言った。なお、この三人は日課のパトロールをしていて、

メタルマギアが結界に気づき、サーチを使って、中の様子を確認し助けに来た。

なお結界は強力なので、三人がかりで、壊したと言う。


「でも、どうして桜井君が……」


とメタルマギアが言いかけた所で、フェイブルが、


「人が集まって来たわ。話は今度……」


三人は、去って行った。


(俺も行くか)


能力を解除し、地面に落ちたまま無事だった鞄を拾い、

それにDXMを入れると、さっさとその場から立ち去った。


 そして、


(それにしても、酷い目に遭ったなあ)


と思う修一であるが、これが序の口である事に、修一はまだ気づかなかった。

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