6「部活中」
魔法少女の一件があって、数日。学校にて、廊下を歩いているとメイから、
「ちょっと来て」
と言われ、空き教室に、腕を引っ張られ、半ば強引に連れていかれ、
「ねえ……御神さんと……夢沢さんと……何かあった?」
と修一は、メイから、そんな事を言われた。
確かにあれ以来、二人に会うと妙に気まずさを感じていた。
そして現視研ラノベ班として、二人と行動を共にすることの多いメイが、
気付かぬはずはなかった。
「特に何も……」
と修一は言うが、
「心拍数……脈拍……嘘ついてる……」
各種センサー持つサイボーグ相手に、嘘をつくのは至難の業である。
修一は観念したように、
「ああそうだ、ちょっと人に言えない事があってな」
「魔法少女……」
「!」
「心拍数……脈拍……図星……」
と言った後、メイは淡々と、
「私は……あの二人が……魔法少女って……知っている……」
と驚くべき事を言った。
最初は驚いていた修一だが、考えて見れば、先に記したように
二人と行動する機会は多いわけだし、
加えて、元々メイは、諜報活動を目的としたサイボーグなのである。
だから、人の秘密を探る事は造作でもないわけで、
(知っているとしても、おかしい訳じゃないんだよな)
と修一は、納得していた。
「どうして知ったの……」
と言われたが、
「そっちこそ、何処まで知ってる?」
「ロストルナ以外……」
それを聞いて、自分は5人全員を知っていると話し、
昨日の出来事を蒼崎明菜の事と部長の事も省いて話したが、
「部長も……関わってる?」
と言われた。なんでも、春奈と麻衣が部長と接する時に、
修一と似たような感じになるので、もしかしたらと思ったらしい。
各種センサーで、ウソがばれてしまうのだから、部長の事も正直に話した。
「部長は、イクシードの事までは、知らない」
と念押しした。そしてすべてを聞いたメイは、
「分かった……」
と言った後、
「じゃ……」
と言って教室から出て行った。
「満足したのか……」
一人残された修一は、そんな事を口走ってから、後を追う様に空き教室を後にした。
その後、何事もなく部活の時間を迎えた。
部活では、相変わらずプラモ作りをしている。
今回は、部長宅の3Dプリンターを借りて、
一部のパーツを生成し、既存のプラモと合わせたもの。
「差し替え変形のキュウビを完全変形に改造とは、すごいねぇ~」
と制作中の作品を見て愛梨が誉める。
「いえ、ビースト形態の再現が難しくて、それに、自動人形形態や、
最終形態も再現できませんし」
「ビースト形態の再現はさすがに無理よぉ~
残りも変形と言うより変身だからねぇ~
さすがに再現は魔法を使わない限り絶対に無理だから、
気にしなくていいよ。プラモづくりに魔法は禁じ手だし~」
更に修一は
「それに既存のパーツを使ってるんで、フルスクラッチには遠いですよ」
と謙遜するも
「でも~、ハードスクラッチじゃん。多分大会に出れるよ~」
「いえ、以前の大会で、フルスクラッチの完全変形型キュウビが出てたんで、
出せませんよ」
と修一が言うも
「それは出せなくても~、腕前は良いみたいだし~、
今度、大会に出たらどうかなぁ~、ねえ部長」
部長も話を聞いていたのか、
「そうだな、そろそろ大会の時期だしな」
そして部長は修一の方を見ると、
「次の大会に、出たらどうだ。賞はとれなくともいいから、
とにかく、出場をもって現視研プラモ班の、完全復活を宣言しようぜ」
「そうだね~!昔みたいに、さあ~」
この学校には、模型製作をする部活は無いので、
過去に賞を取ったと言う事もあって、
現視研と言えばプラモと言う時期があったと言う。
妙に盛り上がる部長と愛梨に少し、引き気味になる修一は、
「はぁ~、班と言っても俺一人ですけどね」
すると愛梨は、
「それは最初だけだよ~、復活を宣言すれば、プラモ好きの生徒が
入部してくれるかもよ~」
復活宣言には、部員集めと言う目的もある。
「とにかく桜井、考えとてくれるか大会の事?」
「はい……」
プラモの大会に関しては、修一は興味が無い訳では無い。
ただ、妙に目立ってしまいかねない事に抵抗はある。
それが、彼が望む「普通」から、外れるきっかけになりそうな気がするからだ。
(まあ、プラモの大会で、そんな事にならないと思うけど)
そんな事を思う修一であった。
そして愛梨は
「プラモの事は、ここまでにしてさあ~」
と前置きするように言った後、
「ここ最近~、御神さんと麻衣ちゃん、
桜井君と部長を気にしているみたいだけどぉ~何かあったぁ~?」
と言って来た。
「特に何も……」
と修一は言い。
「何も無いぞ……」
と部長も言った。すると愛梨は、
「ふ~ん」
と言いつつ
「まぁ、いいけどね~」
意味ありげに言う。
春奈たちの話題が出た事で、気になって、ラノベ班の方を見ると、
メイと麻衣がいるものの、春奈の姿が無かった。
今日は登校していたので、欠席じゃないはずなので、
「そういえば、御神は?」
と修一が言うと部長は、
「今日はロボ研に行ってる」
「ロボ研?」
すると愛梨が、
「あの子、ロボ研のこれだから~」
と言って手をだらんと垂らして、まるでオバケのような仕草をした。
「幽霊部員って事ですか」
「そう、部員が足らないらしくて~、まあウチにも、
前に部員が足りない時に、ロボ研の部員に幽霊になってもらったから。
その借りって事で」
修一は、ふと思いたって、
「その人は、蒼崎って人ですか?」
「違うよ~、まあ蒼崎先輩も幽霊だったけど~」
「そうなんですか」
ただ幽霊とはいえ、時々顔見せの必要があるので、
今日、春奈はロボ研の方に行っていると言う。
ここで愛梨は
「そう言えば、蒼崎先輩の事を?」
と聞いてきたので、
「この前、会ったんです。母さんの知り合いとかで、
それで、現視研の幽霊部員だって聞いて……」
「ふ~ん」
とまたしても愛梨は意味ありげな態度を取りつつも、
「蒼崎先輩は、特撮班だったなあ~」
「特撮班?」
すると部長が
「今はいないが、特撮の研究のほか、コスプレ班のように、
スーツを自作したり、変身アイテムとかの小道具を作ってた連中だ」
丁度、明菜が入って来たころに出来て、
その後、彼女が卒業する頃に、他の面々も卒業したので、
特撮班はいなくなった。
(そう言えば、部室に特撮の変身アイテムのレプリカがあったのは、その所為か)
なお、そのレプリカは、子供用のおもちゃではなく、
自作したもので、実際に撮影で使われたものと、
寸分たがわぬ大きさをしているという。
さて、その後も修一はプラモ作りを続けた後、下校時間が来たので、
作業を一旦中断して、帰る事に、作りかけのプラモは
部室に置いていく。そして部室を出て、学校を出ようとすると、
春奈が先輩と思われるポニーテールの女子生徒と、
「ねえ、本格的にロボ研で、活動しない?
これまで通り現視研との掛け持ちで良いから」
「すいません、現視研の方がいいんで……今後も、幽霊って事で」
「勿体ないなあ、才能あるのに……」
と言うようなやり取りをしているのを見かけた。
女子生徒はロボ研の部員の様だった。そして、二人が別れた後、
ふと気になった修一は、気まずさよりも、好奇心が勝り、春奈に声を掛けた。
「桜井君、何?」
と魔法少女の件があるからか、警戒している様子で
何処か棘のあるような言い方である。
「そんなに警戒しないでくれよ」
と修一は言いつつも
「さっきの生徒は誰?」
そう言うと、少し安堵したような様子で
「あの人は、西崎絵里菜先輩、ロボ研の部長」
春奈がロボ研の方に、顔出しすると、
ロボ研の方を主体にしないかと、誘ってくる。
「私、興味だけじゃなくて、機械いじりも少しできるから、
それで、勧誘してくるの」
という事であった。
「そうか」
「あの人には、色々とお世話になってるから、心苦しいだけどね」
彼女にとっては、いい先輩で、幽霊部員のなったのも、
日頃のお返しと言う意味と言う。
その後は、特に話もなかったので、春奈とはその場で分かれ、
学校を出て、帰路についた。だがその帰り道、事態は起きた。
それは、転移でやって来たのか、突如として目の前に現れたのだ。
「ロボット……」
それは、見るからにロボットであった。
デザイン的には、昔ながらのロボットと言う感じで、
箱っぽい感じの人型をしていて、手はマジックハンドの様な形をしている。
そして、ロボットは修一に襲い掛かった。
人気のない場所に、春奈、麻衣、千代子の姿があった。
三人は、改めて人がいないのを確認して、
春奈は、腕をまくりブレスレット型のウェアラブル端末を露にする。
麻衣は、小さなステッキを取り出す。先に宝石のようなものがついている。
千代子は、懐から小さな巻物の様なものを取り出す。
これも、中央に宝石のようなものがついている。
これらが変身アイテムである。
春菜は、ブレスレットが付いている腕を胸に当て、
麻衣は、ステッキを上に掲げ、
千代子は、巻物を持った手を、前に突き出し、
「「「マジカルジュエル・メタモルフォーゼ!」」」
と変身の呪文を叫ぶように言う。
するとそれぞれの変身アイテムが輝くと、
春奈は周囲に、装甲が出現し、それが彼女の体に装着されていく
麻衣は、ピンク色の光の帯が、体に巻き付くと、
ドレスへと変わっていき、最後に鉄の仮面が右手に出現すると、
手で顔に装着する。
千代子は、煙のようなものが体を覆っていき、それが晴れると、
忍び装束に姿が変わった。
こうして、人気のない場所で変身した三人は、
「それじゃあ、行こうか」
いつもの様に日課のパトロールに向かうのだった。
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