15「魔獣軍団との決着の時」
上級魔獣が残り三体となったところで、親玉は冷静さを取り戻していた。
「なんてこった」
折角の商品がことごとく失うことになって、
かなりの大損をしている事の実感が湧いてきたのである。
こうなって来ると、バジリクスを手に入れたところで、
割が合わない。最悪破産の可能性もある。
これだけの魔獣を集めるのに、かなりの金を使ったのだから。
「こうなったら、あの小娘だけでも」
再び、自棄になる親玉。
しかし問題は、動けるのは自分だけと言うこと、他の連中は
魔獣を操るだけで手いっぱいなのだ。
特にレックスドラゴン、レッドドラゴン、デモスゴードは
一匹につき複数人で操っている。
うち何人かは、既に倒された上級魔獣と掛け持ちで、
赤い怪人が、察したリスクと言うのは、
ギイザアイをコントロールしていた奴が、
レッドドラゴンの担当の一人だったので、一人欠けることで
暴走を誘発であった。
この時点で自分以外に動けそうだったのは、
メデューサを操っていた奴だが、こいつは、掛け持ちはしてなくて、
魔獣を倒された。自由に動けるのだが、こっちは赤い怪人の所為で
のびている状態。しかし、相手はイノだけでなく、三人の少女がいる。
いくら戦闘慣れしてないとはいえ、武装はしている上に複数人
こっちも一人で複数人を相手にできる戦闘のプロと言うわけじゃない。
むしろ一人じゃ何もできないのだ。
自棄となった親玉は、ナイフを取り出し、イノの方を見た。
そして、魔獣に気を盗られている彼女の方に向かっていく。途中で足を止める。
「何だ、こりゃ……」
親玉の体に、光のロープみたいなものが巻きつき、体が動けなくなる。
「拘束魔法か……」
親玉は、自身の魔法を使い解除を試みるが、駄目だった。
低級魔獣と戦うイノ達、先に魔獣が動きを止めている間、
だいぶ倒したが、それでも、まだまだ敵は残っている。
(キノセさんやエミさん達が頑張っているんだから、
私たちも頑張らないと)
と思うイノ、他の三人も同じ事を思っているが、彼女たちは
蘭子の事しか眼中にない。その後も、敵を倒していたが、
「リべレーション!」
という声が聞こえたかと思うと、火炎弾、氷塊、岩、光弾、暗黒弾、
空気弾が現れ、魔獣たちに襲い掛かる。
しかも、それらは上手い具合に、イノ達を避ける。
「これはメキドレイン!」
やがて低級魔獣は、全滅した。
更に、低級魔獣のみを操っていた奴も光の紐で拘束される。
ちなみに、操っている魔獣が死ぬと、魔法陣が消滅するので、
そこから、見分ける事が可能である。
一方、この少し前、レッドドラゴンと、レックスドラゴンと戦う三人とロボ、
赤い怪人とロボが、レッドドラゴンを担当し、
蒼穹と蘭子は、レックスドラゴンを担当。魔獣は強かったが、二人係である為、
たいして苦戦はしない。
レッドドラゴンはロボが、体を押さえつけ、
赤い怪人が、防御スキルの弱いところから、
これまで通り、高周波ブレードと大剣の二刀流で攻撃していった。
時折、火炎弾を撃って来たが、体を押さえつけられている為か、
狙いは大きく外れていて、回避するまでも無かったが、
(なんだか、凄く卑怯な事をしているな)
と赤い怪人は思い、自己嫌悪を感じた。
レックスドラゴンの方はと言うと
「バーストブレイズ!」
これで一気に、ダメージを与える。
「これがバーストブレイズ……聞いてはいましたが、見るのは初めてですわ」
レックスドラゴンが口から放つ、炎、雷、毒霧と、言った攻撃を避けつつも、
「蘭子、あなた、この魔法を知ってるの?」
先の攻撃に加え、足の爪からは、地面を這う形で火弾、
尾を振るたびに、放たれる空気弾。
更には両腕から発射されるレーザー光線。それらを回避しながら
「はい……大叔母さま……から……聞きました」
蒼穹は、回避しながら、会話するなんて器用なことができないので
返事はしない。
この後、蘭子が右腕を刃物に変形させ、それで、尻尾を切り落とす
「キシャァァァァァァァァァァァァァ!」
と言う悲鳴を上げるレックスドラゴン。
そして蒼穹は、バーストブレイズでレックスドラゴンの足をふき飛ばしたが、
妙に疲れのような物を感じた。
鎧姿なので、見た目には分からないはずだが、蘭子から、
「お疲れの様ですね。その魔法の使いすぎだと思いますわよ」
「よくわかるわね」
「何となくですが」
ここで言ったんバーストブレイズを使うのをやめ、真空刃を飛ばし、
腕を切断する。
一方赤い怪人はと言うと、引き続きロボで押さえつけさせ
ドラゴンに攻撃を続けていた。途中ロボを振り払われたので、
一旦、間合いを取った。
するとレッドドラゴンは、向かってきて赤い怪人に向かって炎を吐く。
「!」
怪人は、跳躍しながら、炎を避けると、ドラゴンの背に乗った。
ここは防御スキルが弱くなっていて
「くらえ!」
高周波ブレードと大剣でドラゴンの背中を切り裂く、
「グォォォォォォ!」
と言う咆哮を上げる。
そして、何度も切りつけた後、降りて、ドラゴンの前に立った。
(止めだ!)
ここで、さっきは、次に戦いの為に出し惜しみしていた
攻撃を使おうとして、ソウルウェポンを仕舞い、
高周波ブレードを引っ込めた。こうしないと使えないのだ
そして両手をドラゴンに向けた。
だが、その技は使われることは無かった。使おうとしたその時、
「リべレーション!」
という声が響き、属性攻撃の雨あられ、メキドドレインが
魔獣のみを狙って降り注ぎ、低級魔獣は全滅し、
レッドドラゴンもレックスドラゴンも止めを刺された。
「今のは……」
ここで
「大丈夫ですか皆さん!」
「秋人……」
メキドドレインは、秋人が引き起こしたもので、
親玉を含めブローカー連中を拘束したのも彼であった。
別に狙った訳では無いのだが、みんなに知られずに、
この疑似空間に入って来たのだった。
「そう言えば、里美は?」
と言う蒼穹に
「置いてきました。今の、あの人は少し問題なので」
「問題?」
蒼穹は、思い当たる節があるのか、
「確かに」
と言った。
ここで更にイノ達も合流する。
「私も、手伝います」
少女達も、
「私たちも」
と言うがイノはともかく少女たちは、役に立つかは分からない。
とにかく、残る魔獣のデモスゴードである。
さっきの魔獣よりの強い魔獣故に、コントロールに手間取っているのか
直ぐには動かなかった。
「ここは、総力戦で行きましょう」
と言う蘭子。
なお魔獣は動きを止めているが、この時点で手を出すと暴走の危険性が有るので、
動き出すまで、手を出さない。
しかしここで異変がピシピシと言う大きな音が聞こえたと思うと
空間にヒビが入り始めたのだ。
「疑似空間が崩壊し始めてる!」
すると拘束されているブローカー連中の親玉が
「そんなバカな!」
と言う声を上げる、連中にとっても予想外の事らしい。
「多分、不良品のマジックアイテムを掴まされたんだよ」
次の瞬間、物凄い音と共に、疑似空間は崩壊した。
強力な衝撃波が、襲って来る。赤い怪人は咄嗟に左手をかざすと
「魔法障壁!」
と驚く秋人に、
「鎧の専用魔法だ……」
と赤い怪人は答える。展開した魔法障壁は大きく、
蒼穹や蘭子、秋人、イノ、三人の少女たちを守る。
なお今回は咄嗟だったので使ったが、
(咄嗟の事だから仕方ないな)
基本的に忌避しているので、ギイザアイ戦では、使わなかった。
疑似空間の崩壊により、外の世界に戻ってきたが、
突然巨大な魔獣が突然現れたのだから、その場は一気に騒然となった。
さらに厄介なことが起きる。
「グウォォォォォォォォン!」
と言う咆哮を上げるデモスゴード。
「ヤバい、コントロールが失われてる」
と声を上げる赤い怪人。その事実をサーチで知ったのである。
実は疑似空間崩壊の衝撃で、操っていた奴らが吹っ飛ばされ、
のびちゃったのである。
デモスゴードは、赤い怪人たちの方へ向かって,
口から火を噴いた。
「!」
ロボは防御し、それ以外は、全員回避する。そして火が消えると
こっちに向かって来る。
「マズイ、僕らを狙ってる」
敵が、コントロールしている内は、まともに操れないだろうから
まだ戦いやすかったかもしれない。
しかし今は違う、恐らく苦戦を強いられる可能性が有った。
その事は、赤い怪人は分かっていたが
(それでも、やって来るやら、やるしかない)
と思い身構える。他の面々も同じことを持ったのか、身構えていた。
ただ蘭子は、イノ達に、
「あなた達は、早くお逃げなさい」
と言ったが、イノは、元は自分の事だから、逃げなかったが、少女たちは
「蘭子様を残して逃げる訳にはいきません」
と言ってその場に残った。
さて全員、身構えてはいたものの、戦いの時は、来なかった。
突然、デモスゴードは光弾のような物で攻撃を受けたのだ。
「なんだ!」
そして現れたのは、全身に白い特殊装甲服を、体型から見て
恐らく女性と思われる人物。しかも、空を飛んでいる。
更に、デモスゴートを銃撃する者が、
その人物は、赤いフードを被り、お姫様の様な服
右足はガラス、左足は赤い鉄のブーツと言う姿、
左腕には茨が巻きついていて、顔には鉄の仮面を装着している少女。
こっちも宙に浮いていて、マスケット銃で銃撃している。
更にデモスゴートを炎が襲う、炎が来た方角にいたのは、
「忍者?」
黒い装束を纏う、フィクションで見られる典型的な忍者
体格から女性と分かるのでくノ一。
あと帯刀していて、印を組んで炎を出している。
ただ魔方陣が出ているので、忍術ではなく魔法の様。
ちなみに、凧に乗って飛んでいる。
装甲服の人物は、光弾の他、レーザービームや、小型ミサイルで
デモスゴードを攻撃する。
全ての武装を使う前に魔法陣が浮かぶので、全て魔法による物らしい。
鉄の仮面の少女は、銃撃の後、魔法を使う。その時、使ったのが、
炎魔法の様で、炎が数匹の狼の様になって、
デモスゴードに襲い掛かるが、どことなく、恐ろしさ、グロさを感じさせる。
くノ一は、炎の他、氷弾や竜巻、雷など、様々な属性系の攻撃を使う。
魔法陣が出現するので、魔法のようだが、どう見ても忍術にしか見えない。
他にも手裏剣とかも飛ばすが、魔法陣と共に出現するので
魔法で生成されていると思われる。
三人の力は、圧倒的で、あっという間、デモスゴードを倒し、
何処かに去っていった。
「何なんですか、あの人たちは?」
と言うイノに対し、秋人は、
「あれは、『5人の魔法少女』の三人だよ」
と言うと、赤い怪人が
「魔法少女って、一人は分かるけど、ほかの二人もか?」
「そうだよ、『鉄の魔法少女メタルマギア』、
『物語の魔法少女フェイブル』、『忍の魔法少女鬼姫』」
話しを聞いた赤い怪人は
(魔法少女って、一人はそれっぽいけど、残りは違うだろ)
そんな事を思うのだった。
しばらくして、警察が騒ぎを聞きつけたのか、
パトカーのサイレン音が聞こえていた。
「後は私に任せて、ネメシスさんは、帰られた方がよろしくてよ。
色々と面倒でしょうから」
その通り、面倒ごとが嫌な蒼穹は、
「じゃあ任せたわ。蘭子」
鎧姿のまま、その場を立ち去った。
一方、
「あれ、恵美さんは?」
とイノが言い。秋人も
「どこに、行ったんだろう?」
赤い怪人も召還したロボごと居なくなっていた。
その後、警察が到着し、蘭子が中心になって、事情を説明し、
ブローカー連中は、脅迫罪と、魔獣を魔法で操って襲わせることは、
傷害罪に抵触し、その容疑で逮捕された。
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