14「魔獣軍団との戦い(3)」

 赤い怪人とメデューサとの戦い、ギイザアイの援護の元

大きな腕の鋭い爪を持った手でメデューサ襲い掛かる。

赤い怪人は、素早く避けつつ、高周波ブレードと大剣でメデューサの手を切り裂く。


「シャァァァァァァァァァァァ!」


防御スキルは弱まっていて、指が落ち、血が噴き出しながら、

のたうつメデューサ、その血は赤い。そして追い打ちとして、

この攻撃でスキルが弱まった腹を切り裂き、

更に血が噴き出し、怪人の体を染めるが、元が赤なので、特に変わりは無い。


 ここで、ギイザアイへの攻撃へと移る。二体の魔獣の攻撃を避けながら、

引きつづき遠距離攻撃で、目を潰していくが、

途中で、口を開き、触手が飛び出してくる。

回避行動を取るが、その動きは素早く、避けきれずに、

絡みつかれる。ギイザアイは、この触手で獲物を捕まえて

食べてしまうのである。


 絡められた赤い怪人は、


「うおおおおおおおおおおお!」


という声と共、力任せに引きちぎった後、

更に飛んでくる触手を高周波ブレードと大剣で、

片っ端から切り裂いていく。

更に、ここでミサイルのような物が飛んできて、ギイザアイに命中し、

煙が上がる。そして撃ったのは、赤い怪人が召還したロボであった。

ロボはグリフォン、サイクロプスを倒し終え、

主人である赤い怪人の援護に、やって来たのだ。


「目玉の化け物を頼む」


ロボにギイザアイの相手をさせ、メデューサの方に向かう。

 

 体がボロボロに、成りながらも、メデューサの攻撃が熾烈になっていく

これは、魔獣が怒っていると言うより、弱らせることで、

敵がコントロールし易くなった結果である。

そして頭の無数の蛇が、伸びて赤い怪人に、襲い掛かるが、

触手とは異なり、今度は避けずに、片っ端から切り裂いていき、

そして、背中に回り込んで、二刀流で何度も切り裂く。


「シャァァァァァァァァァァァ!」


と咆哮をあげ、苦しそうに、腕を振り回すが、すっかり防御スキルが、

弱まっている故に、


「トォリャ!」


赤い怪人は、メデューサの両腕を切り落とせた。

そして更に胸を切り裂く。


「!」


もはや声も上げられないようだった。


「トドメだ!」


防御スキルは完全に失われ、大剣で首を切り裂き、そのまま切り落とした。

地面に、落ちるメデューサの首。


「よし、後は」


 ロボと戦うギイザアイの元に、向かう。両者は、遠距離攻撃の

撃ち合いをしていた。

そこに参加する赤い怪人。ギイザアイも弱っているが故に、

コントロールし易くなったのかその攻撃は、熾烈となるが

だが、弱っていることには違いないので、

徐々に赤い怪人達に押されていく。


 そして、閉じていた大きな目が開いた。ここが弱点である。

防御スキルは消えている。あとは、ここに集中攻撃をすればいいのだが

強力な光系スキル、すなわちビーム攻撃が、襲ってくる。


「うわっ!」


赤い怪人とロボは、回避する。属性攻撃は撃ってこなくなったが

代わりに、このビーム攻撃の雨あられとなった。

しかも、厄介な事がある。それは瞼を開くまで分からなかった事だが

目の部分には特殊な防御スキルがあって、遠距離攻撃を弾くという。

止めは近距離攻撃で、倒さねばならない。


(ビーム攻撃は無限じゃないけど)


赤い怪人のサーチで、ビーム攻撃は一定数撃つと、

少しの間、撃てなくなることが分かっていた。

それは本当にわずかな時間である。赤い怪人のサーチで

タイミングは分かるが、それでも接近するとなれば、ダメージ覚悟である。


(対処法はあるけど……)


それを使えば、ダメージは受けないが、別のリスクがある。

 

 しかしここで。


「シャアアアアア!」


メデューサの首が襲ってきた。


(コイツ、首だけでも動けるのか)


赤い怪人を噛み殺そうしたいのか、口を大きく開けながら襲って来る。

その上、防御スキルが復活している。

あと石化光線は使ってこない。


(弱点は口か)


そこだけが、防御スキルの効果が無いのである。

更にこの時、ギイザアイのビーム攻撃がメデューサの首に当たるが

跳ね返ったのである。防御スキル影響だろうが、

しかし、これが怪人に光明を見出した。


(コイツを使えば)


 赤い怪人は、敵の攻撃を避けながらも、隙を見て、

ある場所に右手をかざし、衝撃波を撃った。


「うわああああああああああああああ!」


と言う悲鳴と共に、ブローカー連中の一人が吹っ飛んだ。

すると、メデューサの首の動きが止まる。

赤い怪人のサーチを使えば、誰がどの魔獣を操っているか分かった。

そう吹き飛ばしたのはメデューサを操っていた奴である。

ソイツを吹っ飛ばしたので、一時的に動きを止めたのだ。だがすぐに暴走が始まる。


 暴走する前に倒せそうと言う事もあるが、

その前に、赤い怪人は、その腕力で、首を持ち上げると、

ギイザアイの方へ向けて、突っ込んでいく。ビーム攻撃が襲って来るが、

首は動きを止めても、防御スキルは生きているので、それらは跳ね返される。


(これぞ、メデューサの盾!)


そのまま接近し、ビーム攻撃が撃てなくなる瞬間を見計らって、

メデューサの首の前に飛びだした。

するとギイザアイの瞼が閉じようとしていたので


「させるかぁ!」


と叫びながら、高周波ブレードと大剣で目玉を突き刺した。

そしてギイザアイは、振り払おうとする如く藻掻くが

赤い怪人は、必死で喰いつき


「うおおおおおおおおおおお!」


と声を上げながら、高周波ブレードと大剣を深く押し込んでいく。


 やがてギイザアイは動きを止めた。サーチで確認できている。

魔獣は、絶命したのだった。だがもう一匹、メデューサの首がある。

そして丁度、動き出そうとしていた。

赤い怪人は、高周波ブレードと大剣を引き抜くと、

今度は、メデューサの口へと突っ込んだ。

すると口から血を吹き出し、動きを止めた。

赤い怪人は、サーチで確認した。そうメデューサは絶命したのだ。






 一方、蒼穹は、特に苦戦することなくキマイラと戦っていた。

キマイラ、及びフォグタートルの様々な攻撃を避けつつも、

的確に、キマイラに対し攻撃を叩き込んでいく。


「チェスト!」


山羊の頭部に炎を宿した拳を叩き込む。


「メギャァァァァァァァ!」


と言う悲鳴を上げ、頭が割れる山羊。防御スキルの効果は薄れていた


(よし、いい感じね)


更なる追撃をしようとした時に


「プオォォォォォォォォォォォォ」


とフォグタートルが咆哮をあげたので、


(いいとこなのに!)


口を開けているフォグタートルの方に行かなければならない。

この瞬間が唯一の攻撃のチャンスなのだから。


 そして攻撃を避けつつも、口が閉じるまでありったけの攻撃を叩き込む。

口が閉じた後、特に何の変化も見せない。


(効いてるのかな?)


なにぶん体の中の事なので、状況が目に見えない。

その上、キマイラの方に、戻ってみると、


(また治ってる!)


山羊の頭の傷が治っていた。自己修復があるのか、

毎回じゃないが、フォグタートルの相手をしている間に

キマイラの傷が治ってしまうと言う事が、何度かあった。


 加えてフォグタートルが口を開けるタイミングは、分からない。

間隔が長い事もあれば、極端に短い事もあり


(ああもう、せわしない!)


と思う事も多々あった。


 ここまでの事は、蒼穹を苛立たせた。

そう戦いで苦戦はしなかったが、彼女のイライラが募る一方だった。


「こんちくしょう!」


と叫びながら、ここまでのイライラをぶつけるように、

拳で山羊の頭を叩き潰した。


 そして思う。


(次に、口を開けたらエレメンタル砲でもぶち込もうかしら、

でも、チャージは間に合わないし、中途半端で撃つと悪い事が起こるし、

あっ!)


ここで彼女は、思い出した。


(前に異界で使った。この鎧の専用魔法!)


その後も、蒼穹は異界に行く機会はあったが使うことが無かったので、

今日まですっかり忘れていた。


 丁度、次の瞬間


「プオォォォォォォォォォォォォ」


とフォグタートルが口を開けた。

蒼穹は、攻撃を避けながらも、フォグタートルの前に立ち、

口の方に右手をかざし


「バーストブレイズ!」


右手の前に、魔法陣が浮かび上がり、赤く小さな光弾が、

数発ほど発射され、口の中へと入って行く。

もちろん、これだけでは終わらない。口が閉まるまで、何発も撃ち込んだ。


 そして、フォグタートルの口が閉じた時、


(効いたのかな?)


と思ったが次の瞬間、再び口が開かれ、咆哮を上げず、

変わりに火を噴いた。フォグタートルは、火を吐かない。

これはバーストブレイズの炎である。

そしてフォグタートルは動かなくなった。そう絶命したのだ。


 なお蒼穹は


(危なかった……)


口を閉じた時、キマイラの方に行こうとして移動していたので、

巻き込まれずに済んだのである。


 そして、フォグタートルを倒したので、


(これで、キマイラに集中できる)


と思いつつ、ここまでの流れで、

バーストブレイズをキマイラにも使用した。

この魔法は、威力も強いが、着弾後の攻撃範囲も広く。

防御スキルの効果がある場所、無い場所すべて巻き込むので

あっという間に、敵を弱らせていき、更には、相手の攻撃も打ち消すので

最後は、完全に一方的な感じになり、


「グウォォォォォォォォン!」


と言う咆哮と共にキマイラは絶命した。


 蒼穹は、


(もっと早く思い出して、使っておけばよかった)


と思ったが、今となっては、どうしようもない事である。






 ガシャドクロとクイーンアラクネと戦う蘭子。

その姿を見たイノは思った。


(なんだろう。戦ってるって感じじゃない)


もちろん敵の攻撃を、避けつつも、刃に変化させた右腕と、

異形の手となった左手を武器に戦ってはいたのだが、


(なんだか舞っているみたい)


イノの目には、そう見えた。実際に、敵の攻撃を回避する際の、足取りは妙に軽く、華麗で優雅な動き、特に、回避の際に回転動作は、

まるでバレエダンスをしているようにも見える。

その上、攻撃時の動きも、何処か華麗で優雅に見え、

美しく舞っているようである。なお本人は全く意識していない。


(何だろう。攻撃を繰り出すたびに花びらが見えるような)


やがてイノは、その姿に見とれていた。


 しかし見とれていたのは彼女だけでなく、三人の少女たちも


「蘭子様……」

「木之瀬さん……」

「お姉さま……」


とうっとりとして、祈りを捧げるような仕草をしながら、

蘭子の姿に見とれていた。ここでイノが、ハッとなったように、


「ちょっと皆さん、戦闘中ですよ!」


と声を上げると、少女たちも、正気に戻り、


「そうでしたって……あれ?」


どういう訳だか、周りにいた魔獣たちが、動きを止めていた。


「今です!」


イノ達は、攻撃を再開する。戦闘経験が無い少女達でも

低級魔獣なら、上級個体であったとしても、どうにか対処は出来る。

動きを止めているとなれば、なおさらで、イノ達は、魔獣たちを片っ端から、

倒していく。


 ちなみになぜ魔獣が動きを止めているかと言えば、


「テメェら、見とれてんじゃねえ!」


とブローカー連中の親玉が、怒号を上げていた。

どうやら見とれていたのは、低級魔獣を操っている連中たちも同じらしい。


 さて蘭子の方はと言うと、刃と化した右腕で防御スキルの弱体化を狙って、

ガシャドクロの関節を外していた。外れた関節は時間が経つと元に戻るが、

ダメージは残っていて、防御スキルは弱まったままである。


 そして、外れた関節が元に戻り、攻撃も鬼火とレーザーの他

口から青い炎による火炎放射と、雷攻撃が加わる。

しかし蘭子は、これらの攻撃を、軽々と、華麗に優雅に避けていき、


「セイ!」


と言う掛け声で、刃となっている右腕で肋骨を切り裂いていく。

切り裂かれた骨は、砂の様になって、再生することは無い。


「ギィィィィィ」


と言う音を立てるガシャドクロ。


 その後も、攻撃を華麗に避けつつ、様々な部位を、切り裂いていったが、

突如、糸のような物が蘭子の体に、巻き付く。


「………」


それは、クイーンアラクネの糸であった。そのまま、引寄せられていく

クイーンアラクネは、六本あった腕の内、

三本を蘭子によって失っていたが、残りの腕を、刃に変形させ、

引寄せた蘭子に襲い掛かる。


 だが蘭子は、


「はぁ!」


と言う掛け声と共に衝撃波を放ち、巻き付いた糸を吹き飛ばし

自由になると、刃となった右腕で、

クイーンアラクネの残りの腕を、すべて切り落とす。


「クキャア!」


と言う声を上げつつ、青い炎を吐き出すも、再び斬撃で打ち消し、

更にビームの様な無属性の攻撃を仕掛けてくるが、そっちは軽く避け、

蘭子はクイーンアラクネの胸を切り裂き、そのまま大きく跳躍し、

蜘蛛の下半身に着地したかと思うと、そこ思いっきり切り裂いた。


「クキャァァァァァァァァァ!」


と言う悲鳴にも似た咆哮を上げる。


 ここで、


「ギィィィィィ」


と言う音ともに、ガシャドクロのビームや鬼火が飛んでくる。

蘭子は、宙を舞うような華麗な動きで、避けていき、

その際に、回転動作を見せるが、その時、異形の左手から

レーザーの様な攻撃が、数発ほど発射され、

ガシャドクロの骨を破壊していき、

そして状況は、両腕が破壊され、下半身は存在せず、背骨と肩の骨があるだけ。


 関節を、外された時は、場所によっては元に戻るまで動けない事があるが、

破壊された場合は、空中に浮かんで、動くことができる。


「セイヤ!」


と言う掛け声で、首の骨が切り裂かれ、本体が入っている頭部だけとなった。

これで、完全に防御スキルは無力化された。


「ギィィィィィ」


と言う音を上げつつも、鬼火とレーザー火炎放射と、

雷で攻撃を仕掛けて来る。


「クキャア!」


更にクイーンアラクネもボロボロの体で、防御スキルは無力化されているが

針や青い炎、ビーム攻撃で、襲って来る。


 蘭子は、右腕を刃から、異形の手に変化させ、

そして両方の掌に、光を宿す。その状態で敵の攻撃を

華麗に優雅な動きで、避け続ける。今、力を溜めているのだ。

やがて、その時を迎えると、右手をガシャドクロ、

左手をクイーンアラクネに向け、


「それでは、ごきげんよう」


と言うと左右の掌から、強力なビーム砲が発射され、二体の魔獣を貫く。

魔獣たちは、悲鳴を上げる事無く、絶命した。






 各自、魔獣を倒した赤い怪人、蒼穹、蘭子は集い。

残りの上級魔獣であるレックスドラゴン、レッドドラゴン、

デモスゴードを前にした。他の上級魔獣が倒されたことで、

コントロールに集中できるからか、

レックスドラゴン、レッドドラゴンの二体が動き始めた。

なおデモスゴードはまだ動かないが、戦いは、まだまだ続く。


 さて三人も、ブローカー連中も気づかぬところで、魔法陣が出現していた。

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