4「その頃、学校にて」

 さて不津校の廊下に、秋人、鳳介、春奈、麻衣、愛梨の五人の姿があって、

秋人と春奈は、スマホで、電話をしていた。


「ダメだ。修一君、出ないよ」


心配そうな表情をする秋人、一方、春奈も心配そうに


「長瀬さん、電話を切ってるみたい……」


この五人が、集まっているのは、少し前に、教師に職員室に

呼び出されていたからで、

その時に、修一とメイが無断欠席をした事を知るのであった。

学年の違う愛梨除く四人は、もちろん二人が学校を欠席している事は知っていた。

そして、この五人が呼ばれたのは、秋人と鳳介は、修一と、

春奈、麻衣、そして愛梨は、メイと親しいからと言う理由である。

ただし、春奈、麻衣に関して、親しいと言われても少々疑問符が付くところがある。


 なお二人が、学校に来ないので担任教師は、それぞれの家に電話を開けたが

修一の場合が、誰も出ず、担任教師は連絡先として、修一の母である功美の

携帯番号は知っていたが、こっちも留守電になっていて、

メッセージは、入れたものの、直接伝えることが出来なかった。

一方メイの方は、家に電話したら、母親が出て、


「メイなら、朝、普通に学校に行ったみたいやけど……」


との事。


 その後、担任教師は、他の教師との相談の上、警察への通報も含め

今後の事を考えなければならないので、

その前に、親しい生徒から、話を聞くと言う事になったのである。


 メイの方は、春奈たちが、最近、様子がおかしかったことを話し、

教師も彼女の行動については、部室での事やコスプレの事以外は把握していた。

だから、その事が関係しているのではないかと言う話になったが、

修一に関しては、ここ最近、おかしな事もないし、秋人達も、教師も、

突然の事に、首を傾げるしかない訳である。


 話を聞き終えた後、教師たちが、今後の事を話し合うとして、

五人は、職員室から帰されたが、五人は教師たちとは別に、

自分たちで何かできないかと、五人は集まっていた。


「一応、零也君に、メールしておいた。確か今日は、校外学習とか言ってたから、

もし修一君や長瀬さんを見かけたら連絡してって」


そして秋人、春奈、麻衣が心配そうにしている反面、

愛梨は、あっけらかんとした様子で


「あの二人が、揃ってサボりってことはさぁ~

一緒に行動してるのかなぁ~」


鳳介は、落ち着き払った様子で


「その可能性はあるな。だとすれば、別に心配する必要はないと思うが」

「どうして?」


と不安げに聞く秋人、


「桜井は、強いからな。何かあっても対応できるはずだ」


鳳介は、シミュレーターの一件だけでなく、

武術をしている事から来る勘のような物で、修一の強さを感じていた。


「部長も、似たような事を言ってたなぁ~

桜井君、途轍もない能力者かもしれないって」


と聞いてはいるものの、修一の強さについては、

いまいち実感の湧かない様子の愛梨であったが。


「けど、メイちゃんは強いんだよ~もし一緒にいるなら、

桜井君も安心だと思う」


修一の強さはともかく、愛梨はメイの能力については、よく知っているようで、

自信ありげに言った。


「………」


秋人は、異界の時、修一が規格外である事を知り、

その強さも、実感はしているのだが、それでも不安を拭い去れずにいた。


 ここで、春奈が、


「もし二人が一緒だとして、どうしてこんな事を」


と言うと、ここまで無口だった麻衣が、小さく消え入りそうな声で、


「駆け落ち……」

「えっ?」


この後は、大きめの声で、


「駆け落ち……」


声が聞こえた春奈は、


「それは、飛躍しすぎじゃ」

「だって……以前からの知り合いみたいだし……

もしかしたら、付き合っていて、親に反対かなんかされて……」


すると愛梨は、諭すように、


「それは、飛躍しすぎだよ~確かに、メイちゃんは、桜井君に

気があるみたいだけどさあ」

「そうなんですか?」


と驚いたような声を上げる秋人。


「けど桜井君には、その気は全くないみたい」


思い出したように鳳介が


「そう言えば、桜井は、『恋愛に希望が持てない』って言ってたな」


秋人も


「そういやそんな事、言ってた……」


すると愛梨が冗談めかして


「それって、ネットの体験記とか、

それを原作にした漫画とかの読み過ぎだったりして」


すると春奈が


「確かに、ああいうの読んでると、結婚とか、恋愛とか、したくなくなりますよね」

「最後は、スカッとさせてくれるけど、そこにいたる話を見てるとね~

しかも、実話かも知れないと来てるしさ」


すると麻衣が、小さな声で


「……DVに、浮気に。ATM扱い。希望が無さすぎ」


すると秋人は、


「僕も見た事ありますけど、ああいうのって特殊な事例でしょ。

まさかそんな事で……」


愛梨は笑いながら、


「もちろん冗談だから、真に受けちゃ、だめだよ~」


と言った。

 

 そして秋人は

 

「まあ、修一君の恋愛に関する事は、一旦置いとくとして、

修一君の事だから、本人の言うところの、好奇心って言う

病気じゃないかな。

多分、長瀬さんが、学校と違う方に向かってるのをみて……」


鳳介も、


「あり得るな」


と同意した。そしてここで春奈が、


「もしかして、昨日、私が、長瀬さんの事を相談したからかも

それで気になって……」


秋人達の予想は、当たっているのだった。


 そうこうしていると教員室の方が、騒がしくなってきた。


「なんだろう?」


実はこの時、メイが学校に来ていないとの連絡を受け、

心配になった千恵子が、学校に乗り込んで来たのだった。






 学校での状況はつゆ知らず、修一達は、電車に乗っていた。

昼食後、会計を済ませ店を出た二人は、メイが先を行く形で

駅に行き、そのまま電車に乗って、丁度帰りの方面だったので、


(このまま、帰るのかな)


と思ったものの実際はと言うと、途中で彼女は下車したので

修一も後を追って降りた。その後、駅前のバス停に移動した。

バスを持っている間、


「ごめん……付き合わせちゃって」


とメイから言われたものの、


「気にするなよ。俺は好きでやってるんだから……」


すると、


「あの時と同じ……」


この直後、バスがやって来て、二人は乗り込む。

そして席に座ると、修一は、さっきのメイの言葉から、

ふと昔の事を思い出した。


 あの時、修一は、どうにも彼女の事が気になった。

別に好きなったとかそういうのではない。

何か大きなもの抱えている様な気がして、それが何か知りたかった。

彼の病気である好奇心の延長である。その為、修一は彼女を付けていた。


 しかし彼の追跡は、すぐにバレてしまい。


「付いてこなくていい……」


と言われたが、直後、奴らが現れた。

そいつらは最初、刑事を名乗っていて、警察手帳を見せつつ、

メイの事を保護しに来たと言ったが、

どうも修一は、信頼できなくて、


「アンタら本物か、手帳、誤字だらけだぞ」


とカマをかけた。すると連中は、血相を変えて、


「そんなバカな。完璧に偽造できてるはずじゃ」


と言って手帳を確認し始めた。

引っかかるどころか、思いのほかマヌケであった。


「偽造?アンタら、偽刑事か!」


と言ったら、相手はハッとなって、嵌められた事に気づき、

襲い掛かってきた。この時、修一は、DXMを既に召還していて、

それを使って、返り討ちにした。正確には鳥もちを使って、

相手を動けなくして、その隙に、メイを連れて逃げ出した。


 この時メイを襲っていたのは、とある犯罪組織の一員で、

彼女は、その組織に、幼いころに攫われ、サイボーグにされたのだ。

そして、襲って来た偽刑事も、サイボーグであった。

物語とかでよくある話であるが、メイは、攫われてきたこと思い出し、


「親元に帰りたい……」


と言う理由で、組織を抜けてきたのであった。

なお出会った当時は、メイの記憶があいまいで、

彼女は、名前が思い出せず、唯一、覚えていたのは、

長瀬と言う名字だけあり、

その名残で修一は、今も彼女の事を、「長瀬」と呼んでいた。


 さて好奇心だけでなく、正義感と言う病気も出てきた修一は、

彼女を家に匿い、組織と戦う道を選んだのであった。


(それにしても、最初はへぼだったな)


最初の内、刺客として現れた奴らは、サイボーグで、

常人よりかは強いのかもしれないが、

修一と言うか、彼の持つDXMの敵ではなく、尽く返り討ちにした。


 さてバスの車窓から、大きな湖が見えた。


(ここはネスブール湖、確かゲートで出現した湖だったな)


その湖の畔にある観光地のバス停で、二人は降りた。

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