6「少年とロボの一区切り」

 さて部活動に、真一の見守り、そして部長のお見舞い

妙に忙しい日々となる修一。


 部活は、部長が入院中なので、修一が部室に一番乗りして

皆が来るまでの間、プラモデルの続きをしていた。そこに、やって来る愛梨


「どう~マキプラのほうは」

「ぼちぼちって所ですね」


西洋騎士風のロボットが出来上がりつつあった。


「いい感じじゃん、カオスセイバー、騎士風って所ね~

剣が『ヤマトタケル』の刀って、アンバランスだけど、なんかいい感じだよね~」

「部屋に飾ってるのに比べれば、まだまだですよ。俺のはミキシングですけど、

あっちはフルスクラッチですもんね。

まあ俺も、フルスクラッチで作ってみたいんですけど」


ここで、思い出したように、


「確か、部長の工房に3Dプリンターがあったはずだよ~

それを使えば、パーツとか作れるんじゃないかなぁ~」

「そんなのあるんですか、気づかなかった」

「あの工房に置いてるの、本人にしか分からない物ばっかだもん」


笑いながら言う。


 修一は、思い立って聞いた


「ところで、部長と副部長ってどういう関係なんです?」

「幼馴染~あーしとっては、優しいお姉ちゃん。

色々影響受けちゃったけどね~おかげで、あーしも立派なオタク」


と本人は言うが、見た目的にはオタク的ではない。


「あと命の恩人かな」

「恩人?」

「詳しくは言えないんだけどねぇ~~~」


それ以上の話は聞けなかったが、


「それと、部長と、あの皿番とどういう関係なんです?」


部長を気遣って、お菊を、皿番と呼ぶことにした修一


「皿番って、うけるんだけど~」


と笑う愛梨であるが、修一は真剣な表情で


「番長同士の因縁ってだけじゃないですよね?」

「………」


笑顔が消え黙り込む愛梨であったが、その後、修一のある指摘を受けて、

話を始め、修一は、あの二人にまつわる因縁を知った。


 さて工場にて、ロボの修復もだいぶ進んでいた。


「それじゃあ、行きますよ」


これまで通り、自作パソコンとロボを有線でつなぎ、

真一が、腕のキーボードを操作すると、ロボはゆっくりとであるが、立ち上がった。

これまでは、手足が軽く動いた程度だったが、ついに起き上がることが出来た。


「それじゃあ、歩行テストに入ります」


ロボは歩きだし、台を降りることは出来た。だが、その後は、直ぐに転ぶ、

なお繋いでいる線に引っかかったわけではない。何も無いところで


(まだまだか)


と修一は思ったが、ロボは再び立ち上がった。

その状態で数歩進んでは転び、数歩進んでは転びを繰り返した。

もちろん何もないところであるが、それでも、


(着実に前進してる……)


そんな感じがした。そしてある時、転倒すると、立ち上がれず。


「ここまでですね」


ロボは結構重いので、工場内あるクレーンで作業台に戻す。

チェーンを結び付けなど、修一も手伝う。


 その最中に、真一は


「今は壊れてますけど、このロボには、質量を軽減する装置があります。

ちょっと修理が難しいんですけど」


この装置で、人間の平均的な体重まで軽くしていると言う。


 作業台の上に乗せると、足を含めた様々の調整を行いつつ、

再度、動作テスト、今度は、立ち上がらず、上半身のみ起こし、

手の動きをチェック、その動きは、ぎこちないものの、

こっちも最初の時に比べてよくなってきていた。


(俺が作ってるわけじゃないけど、なんだか、嬉しいな、完成近づいてくると……)


真一は、


「もうちょっと滑らかに動いてくれればいいんですけど、調整は難しいです」


と言いつつも、口元が笑っていて、HMDの所為で、顔の全体は見えないが、

嬉しそうな顔をしている様な気がした。


(実際に作っているんだから、喜びも人一倍だろうな)


 動作テストと調整を繰り返すなか、左足の、太ももに当たる部分、

左足自体は、本体から外れていたものの、そこは無傷であったが、

その部分が開き、何かが飛び出し、地面に落ちた。


「何だこれ?」


と言いながらも、それを拾う修一。


「刃の無い剣みたいだな」


と修一が言うと


「あっ!それは」


と声を上げる真一。


「何か知ってるのか?」

「ええ……まぁ……」


と言って、何故か落ち着かない様子の真一、その様子が気になりつつも、修一は


「……取り敢えず足に戻しておく」


開きっぱなしになっているロボの、左の太股部分に戻そうとした。

ちょうどその部分には、特に何もなく、刃の無い剣みたいな物を、

取り付けていたと思われるホルダーがあるのみだった。


 そこに収めつつも、


「もしかしてこれって、レーザーソードみたいな物か」


と修一が思い付きをそのまま口にした。すると真一が、


「やっぱり分かりますか」


と言い。どうやら本当にレーザーソードのようだが、


「ちょっと待て、このロボって、お手伝い的な奴じゃないのか?」


ウェイトレスとして使うと聞いて勝手に、そう思っていた。


「確かにお手伝いロボですよ」

「でも何で武器なんか、これじゃあ、戦闘用みたいだ」

「戦闘も出来ます」

「はぁ?」

「このロボは、何でもできるんですよ。究極汎用と言えばいいんでしょうか」


家事や戦闘を含め、あらゆる仕事ができ、しかもどれも完璧にこなすと言う。


「何だか、凄いロボットだな。部長はその事は」

「知ってます」


なお、その話をした時は、このロボをウェイトレスとして使うと言う話はしていない

そもそも、理由も聞かれなかった。後に知った事であるが、

部長は、真一がおかしな事はしないと、信頼していたからとの事。


 ここでふと思い立って


「ところで、店の人はその事は?」

「知ってましたよ」

「知ってたのか!」


と驚く修一。真一自身は、マシンクロによって、汎用性を知ったのであるが、

その後、店の人、女性との事だが、その人が声を掛けて来て、教えてくれたと言う。話を聞いた修一は、


(いくら壊れているとはいえ、戦闘機能のあるロボを、子供に売りつけるとは、

どういう神経してるんだ?)


と思った。


 その後のロボの真一は修復を行い、修一は、真一の見守りと、

ロボが修復されていく様子を見つつ、時折、手伝いつつ、

真一が危なそうなときは、助けると言うような、これまで通りの状況を続け、


「これから、溶接を始めます」


と言って、真一は、HMDを外し、溶接用のマスクをかぶり、

革製の前掛けを付ける。靴やグローブはもとより巨力な耐熱性で、

火花が飛んでも問題ないし、あと体に着けてある他の電子機器類も同様である。

修一は遮光ゴーグルをつけ、少し離れた場所に立つ。

溶接は、今回が初めてじゃないが、危なっかしい事であるし

そもそも、昔から修一は溶接の光と、音を聞くと妙に緊張するのだ。


(昔から、溶接の現場を見る機会が多いけど、慣れないな)


なお、この溶接はDIYの延長であるから資格等はいらない。


 溶接自体は、問題なく終わるが、遮光ゴーグルのお陰で大して、

眩しくないものの、溶接光が輝き、音が鳴るたびに、

修一の身体が、ビクッとなった。


「今日はここまでで……」


 溶接個所を、冷ます必要があるので、今日の作業はここまでとし、

後片付けを始める真一、修一も手伝うが、

その最中、修一はロボから駆動音の様な物が聞こえている事に気づく。


「ロボが動きっぱなしだぞ」

「えっ!」


驚いたような顔をする真一、なお修一は、少し前まで動作テストをしていたので、

その際に、電源を切り忘れたと思っていた。


「まさか、駆動させたままで、溶接してたのか」

「いえ、ちゃんと電源は切りましたよ。まさか!」


そう言うと、真一は、腕時計型のリモコンを手にする。修一もそれを覗き込んだ

リモコンはスマートウォッチの様に文字盤の辺りがモニターになっていて、

しかも起動していた。そうこれまで動かなかったリモコンが始めて動いたのだ。


 モニターには、訳の分からない文字が浮かぶ


「何だこれ?」

「たぶんテクノスガイアの文字」


テクノスガイアと言うのは、超科学の出どころである異世界の事。


「いて!」

「どうした!」

「今、リモコンから、針みたいなものが」


次の瞬間、モニターに、今度は日本語で、「生体登録完了」と表示されていた。


「何だこれ?」


それは、マシンクロでも分からなかった事で、リモコンを手にすれば

誰でも動かせるわけではないと言う事を意味していた。


 だが、それ以上の事が、二人が持ち望んでいた事が、

次の瞬間に分かる事となった。

「生体登録完了」の文字が、消え、「自己修復中」と表示された。


「これは!」

「自己修復が始まったんです」


そう「生体登録」に関しては分からなかったが、自己修復が始まると

リモコンが起動し、その旨を伝えると言うのは、マシンクロで分かっていた。


「それじゃ」

「することは一つです」


 二人は、修復のために用意していた部品などを、

横になっているロボの上に積み上げていく。こうする事でロボは、

これらを吸収し修復が行われていく、なお吸収は前面から行われるので

作業台には影響はない。


「これでよし」


作業台の上には、ロボが埋もれるほどの部品の山が出来上がっていて、


(なんだか、スクラップの山みたいだな)


と修一は思いつつも、


「あとは待つだけだな」

「はい!」


嬉しそうにする二人。なおリモコンにプログレスバーは、表示されるものの、

修復にかかる時間は不明である。限界点からの修復なので、

日単位で、かかるものと思われる。


 ここで真一のスマホが鳴った。スマホは真一が身に着けている電子機器と

連動しているのでHMDには、誰からかかって来たか表示される。


「番長さんからだ」


そのまま、ハンズフリーで会話を始める


「……ありがとうございます。番長さんのお陰ですよ。工場を使わせてくれたり

台車だって……」


こちらの状況は、向こうに筒抜けであるから、状況を知って

電話で祝福を伝えに来たのだと思われる。


 そして通話を終えた後、真一は、頭を深々と下げ、


「桜井さん、ありがとうございます。これまで付き合ってくれて」

「基本、見てただけだし、お礼を言われるほどの事はしてないと思うけどな」


謙遜する修一。


「そうでもないですよ。手伝ってくれましたし、危ないところを

助けてくれたじゃないですか」

「たいしたことじゃないと思うけどな」

「そんな事ないですよ」


改めて、頭を下げる真一に、戸惑い気味になる修一であった。


 その後、リモコンは、真一が持っていくので、


「完了したら、連絡しますよ」

「ああ、楽しみにしてる」


その後、二人は工場を後にした。後は時を待つのみ。

だが、まだ一波乱ある事を二人は知らない。

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