3「修一と少年と友人の親」
さて後悔はしたものの、結局は衝動には贖えず翌日から始まって、
毎日ではないものの、時折、修一は工場に通う日々。
そこでは、真一がロボの修復を、行い。奥の部屋の方では、
部長が何かをしていた。真一は、まだ小学生であるが器用な手つきで、
工具を使いこなし、作業を行っていた。
最初、真一が作る様子を見ているだけだった。
修一は、物が作る事も好きだが、作られるところを見るのも好きである。
(機械的な物が、作られていく瞬間は、妙にワクワクするなあ)
加えて人型ロボットと言うのが、余計に興味をそそる。
「ちょっと手を貸してもらってもいいですか?」
「ああ……」
とただ見ているだけでなく、時々作業を手伝う事もあった。
また合間に話をすることもあり、その時の会話と、これまでの会話を含め
敬語で話すので
(礼儀正しいと言うか、随分と大人びてるな。)
という印象を修一は抱いた。また会話の中から、物知りで
大人顔負けの知識を持っている事も分かった。
(神童って奴なのかな)
さてそんな真一の作業が危なげないかと言うと、やはり、そこは子供、
時折、機械で指や手を挟みそうになったり、はんだごてで火傷しそうになったりと、
危なっかしい瞬間は、何度もあり、その度に、
「危ない!」
と言って修一が助けに入る。
「ありがとうございます……」
と真一は、礼を言うが
(ロボだけじゃなく、真一の方も気を付けなきゃいけないな。)
その内、真一の見守りも兼ねるようになっていて、部長からも
「桜井が来てくれて、助かる。なんせこっちも作業してったから、
直ぐには動けないからな」
別に、真一の見守りの為に来ていたわけではないが、
やっぱり、彼の正義感と言う病気なのか、放っては置けなくなった。
ロボの修理は、進み、外れていた右腕と左足取り付けていたが、
まだまだ先は長い。なお修理と言っても、完全に治すわけではない。
真一がマシンクロで、ロボに同調した結果、知った事はあるが、
このロボには自己修復機能があるという。
修復時には、金属を用意する必要があるが、どんなものでもいいらしい。
自己修復を行う装置は無傷なのだが、この機能は、破損が、
ある程度以上になると機能しなくなるという。
ロボの破損は、その程度を超えるものであった。
そこで、自己修復が機能し始める。自己修復限界点と呼ぶべきものを目指して、
修理を行う。しかし、これに関しては、マシンクロをもってしても、
目安が全く分からない。だからひたすら、修理を続けるしかない。
作業が続く中
「えーと、コードは……」
部品を探し始める真一
「コード?」
その時、修一は、自分の側に、袋に入ったコード類がある事に気づく、
この町以外のホームセンターでも、売られているごく普通な配線器具で
「これか?」
と言って、真一の元に持っていくと
「それです」
修一は、コードを渡すと、真一は礼を言って、受け取った後。必要な分だけ、
切り取り、先を剥いて、剥き出しになった線を、同じく先を剥き出しにした
別のコードと接続するため、二つのコード向いた部分を接続子に居れ、
圧着ペンチでかしめる。同様に複数個所のコードを接続していく。
「ふぅ……」
コードの作業を終えると、一息付いて、休憩に入ったので、修一は話しかける
「そういや、修復に使ってる部品って、普通なものだよな」
「はい」
コードに限らず修復に使っている部品には、超科学的な物は、一切なく。
修一の言う通り、この世界に元より存在する普通なものである。
「一応異世界から来たロボだよな。超科学系なら、ともなく、
この世界の部品で大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。修復が動き出せば、
これらは、ちゃんとした部品に変わるはずですから」
つまりは応急措置みたいなものと言う事。
そしてもう一つ気になる事が
「そう言えば、お金とかどうしてるんだ。部品代とか、ロボットの代金とか」
「ロボットの代金は、高くはありませんでしたよ。」
この後、真一は値段を言って、修一は驚きながら、
「そりゃ安い!」
それは、小学生のお小遣いでも、十分買えるほど安かった。
まあ元手が掛かっていない上に、ゴミ同然の代物であるからだが
「でも部品代は?」
「アルバイト」
「どんな?」
すると困ったようなそぶりを見せて
「いえないんですよ……」
「いえない?」
そう言い張って、アルバイトについては、話を聞くことは出来なかった。
さて、その後は
「実際に、起動させてみますね」
とロボの動作テストを行った。リモコンが動かないので、真一が
リュックサックに入れてある自作パソコンとロボを有線でつないで行う
なお動力源は、超科学の永久機関的な物で、ここも無事であった。
もちろん、ここが無事でないと、装置が無事でも
自己修復が出来ないのであるが。
なお動作と言っても、手足を簡単に動かせる程度、まだ立ち上がれず、
先は長いようだった。
翌日、その日は、修一は部活が無く、真一も工場には来ない。
そして修一は、放課後、友人たちと集まり、
「interwineに行こうぜ」
と零也が言い出し、皆、賛同する中、秋人は、賛同しつつも、
どこか気まずそう。
(どうかしたのか?)
と修一は思った。そして店が近づくと。
「ゴメン、今日は用事思い出したから、帰るね」
と言って、一人帰ってしまった。急な事と言うのもあるが、
その前の様子もあって、
「どうしたんだろ、秋人……」
と修一が言うと
「そういや、なんか変だったな」
と同意するように零也が言い、鳳介も同じく
「何かあるな……」
と言った。
その後、店に着くと、店の前には、大きく従業員募集の張り紙が貼ってあった。
(まだ募集してるんだな)
interwineでは、従業員が一人辞めたので、新しい従業員の募集を、
結構前からしているのだが、未だ決まっていないようである。
店に入ってみると、結構客がいて、修一達は開いている席に座ると、
ウェイトレスが、水とおしぼりを持ってきたのだが、その人は
修一にとっては初めて見る顔で、中々の美人。
顔立ちは日本人的であるが、髪の色はオレンジで髪型はロングヘヤー。
目の色はきれいな青色をしている女性であった。
そのウェイトレスの姿を見た零也が
「あれ、樹里さん?」
と言い出した、どうやら零也の知っている人の様である
「どうしてここに?」
と聞くと、
「人手が足りないって聞いて、手伝いに来たの、
ク……雨宮さんには恩があるから……」
ここで修一は、零也に
「零也、ところで、その人は誰?」
と聞くと、
「この人は、有間樹里さん。秋人のお母さんだよ」
するとウェイトレスこと樹里は、
「いつも、息子が世話になってます」
と頭を下げた。
「世話だなんて、こっちが世話になってるくらいで……」
と返す修一、実際この街に来たばかりの彼は、秋人に色々と、教えてもらっている。
「ところで、今日、秋人は?」
「用事があるとかで、先に帰っちゃいましたけど……」
「そう……注文が決まったら呼んでくださいね」
そう言って、去っていった。零也の話では、彼女は、父親は日本人だが、
母親が外国人のハーフなので、髪の色や目の色が、日本人離れしているとの事。
(そう言えば秋人と家族の話をした事ないな)
と思いつつも
「あのさ、秋人の様子がおかしかったのって……」
「絶対に、あの人の所為だな。親が働いてる店に行くってのは、気まずいもんな」
すると別のウェイトレスがやって来て
「だったら、気まずくさせてあげましょうか」
「!」
零也の顏が引きつった。そのウェイトレスは、肩まで届くくらいの髪に
凛とした顔立ちの中々の美人だった。特に目が、力強さを感じさせ、
印象的である。そして今、そのウェイトレスは不敵な笑みを浮かべていた。
修一は、彼女のその笑みから、圧迫感を覚えつつも
「零也、どちら様?」
と聞く、彼の様子から、明らかに関係者だと思えたからだ。
「俺の母さん……」
そのウェイトレスこと、零也の母親は、先ず鳳介に
「鳳介君は、相変わらずクールね」
「どうも……」
と返す鳳介。そして次に彼女は修一の方を向くと
「貴方が、桜井修一君ね。初めまして、零也の母の天童陽香よ」
「初めまして……」
と返す修一を、彼女はじっと見つめ、
「やっぱり、親子ね。涼一君そっくり」
「えっ!」
「眼鏡をかけようものなら瓜二つだわ」
「どうして、父さんの事を……」
涼一と言うのは、修一が生まれる前に、亡くなった父親である。
「私、貴方のお父さんとは、同じ高校の同級生なの」
これは予想外の事だった。
(そういや、零也の家族は、母さんとも知り合いって事だけど、
それは、父さんとの繋がりがあったからなのだろうか……)
なお修一は、父親の事は、あまり知らない。功美も夫婦仲が良かったと言う事以外
話そうとしない。
(この人、父さんの事を、何か知ってるのかな……)
と思い、その事を聞こうとすると、割り込むように零也が、
「どうして、ここに居るの!」
と陽香に言うと、
「人手不足って聞いたのと、職業体験よ。ネタ作りの為のね」
「ネタ作りって……」
「それより、注文はある?」
「まだ決まってない……」
「そう、じゃあ、決まったら呼んでね~」
と言って、軽い足取りで去っていく。
彼女が去った後、
「あ~」
と声を上げ気まずそうにする零也。修一は、零也の家族の事は、あまり聞いたことは無いが、母親と何かある事は、気づいていた。
「どうする?注文やめて帰るか?」
と修一が言うと、
「俺も、帰ってもいいが……」
鳳介も同意するが、
「さすがに、それは悪いから、何か頼もうぜ」
と言って、メニューを開いた。その後、注文を取りに来たのも
頼んだものを運んできたのも、別のウェイトレスであったので
彼女と、顔を会わせることは無かったものの、微妙な空気は、拭いされず、
食事を終えると、会計を済ませ、全員さっさと店を出て、その日は解散となった。
そして土曜日、工場では、いつもどおり真一が、作業を行い。
修一が、見守ると言う事をしていたが、今日はいつもと違った。
動作テストの様に、真一の自作パソコンから伸びたコードを、ロボに接続し、彼は、ワイヤレスキーボードを、それは腕に着けているのとは別物で、
大きめ。それを作業台に置き、打ち込んでいた。
しかし動作テストをしているわけではない。
そこに、部長がやって来て
「桜井、ちょっと頼みがあるんだが……」
その手には、デジカメがあった。
「改良したブースターのテストをしてぇんだが、
撮影用のドローンが壊れちまってよぉ。撮影係、頼めねぇか?」
当然ながら、テストは屋外で行う
「いいですけど」
心配そうに、真一の方に目を向ける修一、すると
「大丈夫ですよ、今日はプログラミングだけですから、
怪我する事はありませんから」
自己修復機能は、制御コンピュータが、破損した際は、
ハードだけでなくプログラムも治すという。修復限界点を目指すには、
制御コンピュータを治しつつも、プログラムの修復も、必要と思われ、
その為、彼はプログラミング作業をしているのだ。なお作業には、
自作パソコンと、モニターはHMDを使っている。
なお自己修復は中枢のコンピュータチップだけは、治せない。
そもそも、ここが壊れたら、動力源が無事でも、自己修復自体出来ない。ちなみに、中枢は無事である。
そして真一の話しから、怪我の心配はないと思った修一は、工場に真一を置いて、
部長と、出かけた。いや予感がして、後ろ髪を引かれる思いがした。
しかし、この予感は、違う意味で後に当たるのである。
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