7「銃の神とソウルウェポン」
修一が持っている銃、DXMは、中学の頃、かつて住んでいた家の押し入れで、
箱に入った状態で見つけたもの、最初は、玩具だと思った。
一緒に入っていたパソコンで自作したと思われる説明書には、
おかしな事が書かれていた。母親も、詳しくは知らないとの事だった。
ただし修一には、惚けているようにも見えたが。
説明書には、DXMは「銃の神」と書かれていた。「神の銃」と書こうとして
間違えたのかは、定かではない。その特性は様々な弾丸、
中には、弾丸じゃない物含まれるが。それらを生成し打ち出すことのできる銃
と記載されている。
使いすぎると、一時的に撃てなくはなるものの、事実上、無限に弾が撃てる銃でもある。なお弾には誘導性があるので、命中率は高い。
また生体認証みたいなものがあり、本人の許可なく第三者が使うことはできず、
更に許可できるのは発砲だけで、弾の切り替えは使い手本人にしかできない。
そして使い手が求めると、何処にあっても、手元に転送さえてくる。
(この街に来る前は、よく世話になったな。
いやに世話になってちゃいけないんだけどな)
攻撃が届きそうな距離まで来て、
「火炎弾!」
と声を上げると、銃のシリンダーが「カチッ」という音立てて動く、
これが切り替えの合図であると共に、撃てる弾である意味する。
もし撃てない弾を所望すれば、シリンダーは動かないらしい。
修一が接近すると、再び蔦の様な物を伸ばして捕まえようとしてくるが
さっきは不意打ちで、下手を打ったが、今度は、そんなことは無く、
軽々とした動きで避けていき、避けきれない分は、火炎弾を撃ち、燃やしつつ、
本体の方にも攻撃を加える。あちこちから火の手が上がり、苦しそうにしているから
効果は抜群のようだが、
「弾切れか……」
弾はいずれ補充されるが、時間がかかるので、別の弾丸に切り替える。
残弾は、弾丸ごとに独立しているからだ。
「除草弾」
銃のシリンダーが動く
(いけるのか……)
実は適当に、効きそうな物を言ってみただけで、植物だから、除草剤。
そうこの弾は除草剤入りの弾丸である。
ガディウッドは口を大きく開くと、種の様な物が、マシンガンの様に飛んできた。
更には、目のような部分から緑色のレーザー光線の様な物を撃って来るが、
修一は、相変わらず、軽々としたアクション映画の如くのアクロバティックな
動きで避けつつも、開いた口を狙って、弾丸を撃つ。
それは体内に直接に撃ち込めば、効果が抜群であろうと、
修一が勝手に思ったからである。
なお、動きが軽々としているのは、元いた世界で魔獣と戦っていたアキラも
この世界の住人であるが、妙に魔獣との戦いに手慣れている蒼穹も同じで、
アクロバティックとは言えないが、上手い具合に敵の攻撃を避けつつも、
敵に攻撃を仕掛けている。
(あんまり、効果は無いな……)
除草剤が、直ぐに効果が出ない様に、除草弾の効果も、直ぐに出ないようだった。
一方、蒼穹の方は、引き続き、火炎放射と冷気放射を交互に行い、
強度の確認のため、時折蹴りを入れていた。
「セイヤァ!」
との掛け声と共に放たれた蹴りが、胴体に当たるとその部分にヒビが入った。
「あと少し……」
引き続き、同じ攻撃を繰り返す。
アキラの方はと言うと、
「はぁ、はぁ、はぁ……」
少し息は上がっているが、攻撃の方は疲れを感じさせない。
むしろ、勢いが上がって来ている。
「アハハハハハ……」
ますますアキラの興奮は大きくなっているようで、
敵は、手や前足での攻撃の他、口から針や、胴体から粘着性の糸や、
電撃の様な物を飛ばしてきたが、針は剣で弾き、糸は切り裂き、電撃は避けつつも、
「ウォリヤ!」
と言う掛け声と共に、敵の前足と伸ばしていた上半身の腕を、二本ほど切り裂いた。
「はぁ、はぁ、へへへ……」
笑みを浮かべるが、そこに何処か狂気を感じるものだった。
一方、修一は、除草弾を使い果たしたので
「強酸弾」
シリンダーが動く。まだ火炎弾は回復していないので、
(酸が効くかな)
取り敢えず、思いついた弾を、撃ちこんでいく。咆哮と言っていいのか、何かが軋むような音を口から発して、苦しんでいるようだったので、効果はあるようだったが、
どうも手ごたえが感じられない。更に
(何だ、あれ?)
ガディウッドの上部には、枝があり葉が茂っていたのだが、
そこに、二つの風船の様な物が膨らんでいる事に気づいた。
いやな予感がして、銃を撃つが、破壊することはできず、やがて、それは、大きな塊となった。
(まるで木の実だ……)
そう思った次の瞬間、それは、ナチュラゴーレムとアラクネに向けて射出された。
木の実が、魔獣たちに命中すると、ゴーレムの傷は消え、
アラクネの切り落とされた、前足や腕が治る。そう木の実には、回復効果があった。
これには蒼穹は
「そんなぁ~」
と不満げな声を上げるが、アキラは、この事に関し特にリアクションは無く
ひたすら攻撃を続けていく。
そして、アラクネの前足とアキラの剣がぶつかり合って、その果てに
剣が飛ばされてしまう。
「まだまだぁ!」
と声を上げると、アキラの手に今度は、赤い槍が出現して、
ここからは槍での戦いとなった。
なお、蒼穹は、槍の出現を、ゴーレムの攻撃を避けながら見ており、
「えぇっ!」
驚きの声を上げた。一方、剣の方は修一の元に飛ばされていった。
そして、二体の魔獣は治せたが、ガディウッドは、出来ないのか、
まだ余裕があるのか不明だが、所々燃えている自分を治すことなく、
ひたすら、蔦や種、緑色のレーザー光線で、修一を攻撃して来た。
修一は、それを回避していたが、そこにアキラの剣が飛んできて、地面に刺さった。
その剣で、何かをしようとしたわけじゃない。攻撃を回避する中、
偶然、触れてしまったのだ。
「!」
触れた直後、剣は消滅した。だが触れた瞬間、修一の身体に電気のような物が走り、頭の中で、
【『ウェポンクリエイション』、解放。】
という声が響き、頭にイメージの様な物が浮かびだす。
触れたのが剣であったからかは不明だが、それは剣の形になっていった。
(何だ)
この時、修一の動きが止まってしまい。蔓の様な物が、修一へと、
襲い掛かって来る。そして、蔓が修一に触れようとした次の瞬間、
蔓はズタズタに切り裂かれていた。
修一の手には、頭に浮かんできたイメージ通りの剣があった。
(コイツが、ソウルウェポン)
それは、ウェポンクリエイションと呼ばれる能力で、
作られる特殊な力を持つ武器である。
生み出した人間の魂の一部が、武器になったものと言われ、その名がつけられたが、
実際は、その人間のイメージが具現化したもので、唯一無二の存在と言われ、
更には作った人間にしか使えない。先の様に本人の手を離れたソウルウェポンは、
長くは存在できないし、他人が触れると直ぐに消える。
修一の手に現れた剣は、片刃で、飾り気はあるものの派手でなく
シンプルなデザインであり、どことなく海外の剣と言う感じだが、
現実には、実在してなさそうな剣と言う感じである。
(昔遊んだゲームの主人公が、こんな剣を持っていたような……)
そして武器の特性は、自然と修一の頭に入ってくる。
ガディウッドは、再び種と、レーザーを撃って来るが、
修一の剣は巨大な盾に姿を変えていた。修一はそれで攻撃を防ぐ
なおレーザーは防がれるだけだが、種は、盾に吸収されたかと思うと、
倍の量が、盾から射出され、敵にダメージを与える。
そして射出を終えると、盾は、ショットガンの様な物に変形し
修一は、引き金を引いた。発射されたのは無数の光の玉であった。
それらは、ガディウッドに命中し、着弾と共に爆発の様なものが起き、
威力は、これまで撃って来たどの弾よりも強く思えた。
更に再び蔓が襲い掛かって来るが、再び剣に戻り、切り裂いていき、
そのまま接近して、幹を切り裂く。接近すると、今度は枝のような物が伸びて来て
修一に襲い掛かるが、それも剣で切り裂いていった。
そうこの武器の特性は、剣を基本形態としつつ、様々な武器に変形する事。
以降、DXMに加え、ソウルウェポンが加わり、
攻撃のバリエーションが増えた事で、状況は修一にとって、有利となって行った。
更に
(ダメージを与えられてるって気がする)
修一は確かな手ごたえを感じていた。以降も、敵の攻撃を避け、
時に打ち払いながら、攻撃を仕掛けていく。
そして、突如、ガディウッドが一段と大きな咆哮の様な物を上げると
上部の葉が枯れ始めた。またこの時、さっきと同じ実のような物が
出来て来ていたが、これも膨らみ切らず、地面に落ちた。
更に、口から種を飛ばそうとしたのか、発射できずに、
口からボタボタと、地面に落ちた。
(除草剤が効いてきたのか……んっ?)
敵が咆哮を上げた際に、警戒して間合いを取っていた修一であるが、
彼は、ガディウッドの顔の中心が痙攣している事に気づいた。
何かありそうな気がした修一は、場所が場所なので、
攻撃が届く銃を向ける。
「ホローポイント弾……」
シリンダーが「カチッ」という音立てて動く。
火炎弾は、まだなので思いついた弾を、口にした。
引き金に手を掛けた。すると妨害と言わんばかりに蔓が襲いかかって来たが、
見るからに弱弱しく、巻き付いてきたが締め付けは殆どなく
さらに種を飛ばそうともしているようだが、叶わず種は地面に落ちた。
修一は、これらを無視して、引き金を引いた。
発射された弾丸は、銃そのものの力もあり、
その痙攣している部分に命中した。次の瞬間、木を伐採した時のような
「メキメキメキ」と言う感じの大きなことが聞こえて、
葉は一気に枯れ、全身にひびが入り、崩れてくることは無かったが、
動かなくなり、絶命したようだった
「あっ……」
ガディウッドは、火炎弾によって未だ所々燃えている。
それを見た修一は、このままにしておけなかったので
「消火弾……」
シリンダーが動き、その後、発砲する。この弾は、消火剤が詰められた弾。
大きさの割には大量の消火剤は詰められていて、着弾と同時に、
それが、ばら撒かれる。それを数発撃って、火を消した。
さて魔獣には勝利したが、喜びは感じない。
(またやっちまった……俺は何て普通でない事を……)
むしろ後悔に近いような感じしていた。
ガディウッドが倒される少し前、蒼穹は相変わらず、
加熱と冷却を繰り返し、ゴーレムの装甲にひびが入るところまで来ていた。
「チェストー!」
掛け声と共に、放たれた蹴りでゴーレムの腹部の辺りが、割れて
筋肉のような物がむき出しになった。敵の攻撃を回避するため
一旦間合いを取る。
あとは、そこに攻撃を仕掛ければいい、使う攻撃は
大抵のものが、効果があるから何でもいいが、
(コイツは、あんまり使いたくないけど、急がなきゃいけない。
またさっきみたいに治療されても、溜まったもんじゃないから)
彼女は、敵の攻撃の合間を縫って、再接近し、むき出しなった部分に
手を当てた。
次の瞬間、ゴーレムは小刻みに震え出したかと思うと
口から湯気のような物を吐き出した。ゴーレムは蒼穹を掴もうとするが、
上手く動けない様子で、接近しているにもかかわらず上手くつかめずにいる
更に、口を開け、蒸気と共に、気弾は出たが、思いっきり外れる。
目からの攻撃も同様である。そして再度、蒼穹に手を伸ばすが、
口から大量の蒸気を吐き出したかと思うと、その状態のまま動きを止めた。
そして目は白目をむいている。
(コイツは絶命したら白目をむくんだっけ)
その通り、ゴーレムは絶命した。
「ふぅ……」
勝利の喜びはない、ただ疲れただけであった。
一方、槍を手にアラクネと戦うアキラ、アラクネは槍に突かれ、
全身、傷だらけで、動きもだいぶ鈍くなっている。
しかし、魔獣にもプライドがあるのだろうか、その状態でも逃げようせず
果敢に攻撃を仕掛けてくる。そんなアラクネに対し、
嬉々として槍を振るうアキラ、やがて
「いいぜ、この感じ……使える」
と言うと槍が消え、再び赤い剣が姿を見せる。それを構えると、
その顔から笑顔は消え、真面目な表情になり、アラクネへと突っ込んでいき
「奥義、ミサキ切り!」
と叫んで、剣を振るった。次の瞬間、アラクネの足が三本、腕が二本、
そして胴体に大きな傷と、首が切り落とされ。その瞬間、アラクネは絶命した。
勝利したのに、喜んでいる様子はない。むしろ空虚な表情になっている
奥義を使う前から笑顔は消えていたが、戦っている時とは
真逆で、すっかり冷めてしまったような感じである。
ゴーレムを倒し、この様子を見ていた蒼穹は
「ええええええ!」
と驚いたような声を上げる。
(なんで、アキラ君が煌月流の奥義を、まさか!)
なお、修一がガディウッドを倒したのはこの直後である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます