4「散策」
日曜日が来た。この日までに、アキラは、空気の読めない所はあるものの
明るく元気な性格もあって、修一も含め、その友人たちとも打ち解けていて、
講習が終わると、皆で会って談笑したり、遊んだりした。本格的な街の案内は、
日曜日にとっておき、大抵は、駅前の広場や、駅近くのゲームセンターに行く。
このゲームセンターでアキラは、クレーンゲームに出会い夢中になった。
また修一の家での生活も、少々時間にルーズな処もあって、
天海蒼穹に、お風呂の件で少々迷惑を掛けたものの、
それ以外で、特に問題を起こした事はなく、何事もない日々が続いた。
そして、その日は駅近くの公園で、待ち合わせる修一達と秋人
「それじゃあ、行こう」
最初は、アキラが迷子になった場所。街並みを改めて見た修一は思った
(産業革命の頃のイギリスの様な感じもするな。けど異世界って感じもする)。
ここは商店街で、どの店も売っているのは、機械的な物ばかり、
みんな、特殊な蒸気機関で動いていて、妙に歯車が目立つデザインをしている。
もちろんこの蒸気機関は、ゲートを介してもたらされた現代科学を超越した存在、
即ち、超科学の代物である。ただ、見た目的に、古臭さがある。
「蒸気機関を扱っているからかな、あちこちの店から蒸気が噴き出してるでしょ。
だから通称スチームタウン」
修一の感想は、
「何だかスチームパンクって感じだな」
アキラはと言うと
「何だか、暑苦しいな」
との事。
あと修一が気になったのは、機械類を店が並ぶ中にポツンとある魚屋である
見たところ老舗と言う感じがしたが、周りの風景と会っていないからだ。
あとこの魚屋は、時期になる期間限定で、ウナギの蒲焼を売っていて、
修一の母親、功美も、ここの蒲焼が好物で、修一がそれを知るのは、
その年の、土用の丑の日である。
そして、秋人は、二人を路地裏に誘い
「この路地を抜けると、また違った風景が見れるよ」
言われた通り、路地を抜けると、今度は、明治から大正時代の西洋館が
立ち並ぶ街並みが、広がっていた。時代の雰囲気はスチームタウンに近いが
異世界と言う感じはしない。ただ現代から見て、時代の違いを感じ取れて、
「何だかタイムスリップしたみたいだな」
と修一は感想を述べた。あと街並みだけじゃなく、通りすがる人の中には
その頃の紳士淑女の格好をしている男女がいるので、
余計に、そう言う感じを覚えた。アキラは特に何も感じて無いようで、
キョトンとしている。
秋人は、ある一軒の洋館を指さしながら
「あの館は、文化財で、大正時代に作られた西洋館なんだけど、
他の洋館は、異築物件なんだ。まるであの館は引寄せたように思わない」
大正の事に作られた西洋館の周りに、近い時代に作られたかのような建物群が
異世界からやって来た。これは、偶然であるが、この事に運命じみたものを感じる人もいる。なおスチームタウンの建物の多くも、これから三人が見て回る場所も、
異築物件の集まりである。
さて三人は、再びスチームタウン方に戻り、続きになっている新たな場所に、
向かった。そこは、電気店の並ぶ、電気街であるが、未来都市の様な街並みで、
妙に煌びやかな場所。
「なんか未来的でしょ。だから通称未来電気街。
どの店も、超科学系の商品を取り扱ってるんだよ」。
各店を軽く覗いてみた所、ロボットやパワードスーツ、
ジェットパックの様な着用式小型航空機、それらのパーツなどが売られていた。
もちろんこれらのゲートからもたらされた技術で、あと同じ超科学を扱っていても、
先のスチームタウンとは、異なり未来的。
「何だかSFの世界だな」
と言うのが修一の感想であった。
またパソコンショップが、何軒かあって、修一はパソコンに興味があるので
建物の入って、商品を確認。店頭に貼られてあるスペック表をみて
「何だ、こりゃ!」
と驚嘆の声を上げた。そこに書かれている性能は、
一般的に出回っている物に比べ、遥かに高性能。しかも、その商品だけでなく、
最初に見たパソコンは、その店でも中ぐらいの性能で、同等品やそれ以上のパソコンもあり、下の性能のパソコンでも、高性能なゲーミングパソコン位の性能である。
あと値段も、性能の割には安い。と言っても万単位の価格なので、
学生である修一達には、直ぐに変える代物ではない。
また他のパソコンショップも見て回ったが、そこで売られているのも同様であった。
(そう言えば、母さんがくれたUMPCは見た目の割には高性能だけど、
もしかして、この街で買ったのか?)
さてアキラは、この商店街の風景に、目を輝かせながら
「ここ、すっげー面白そう!」
街並みや、売っている商品とかが、アキラの好奇心を刺激しているようだった。
「この浮かんでる板、何だ?」
それは、とある店に展示されていたスケートボードの様な形をしているが
ローラは、なく宙に浮いている。
「それはスカイティグボードって言ってね。原理は知らないんだけど
超科学で作られた空飛ぶスケボーだよ。」
修一は、
「SF映画とかでよく見る奴だな。」
秋人は話しを続ける。
「軽く浮かせて、普通のスケボーみたいに使ったり、高く浮かせて、自由自在に、
空を飛んだりできるよ」
「そうなんだ~」
とアキラは、興味は新進な様子
「ただ、コントロールが難しいらしくて、聞いた話じゃ、
魔法使って箒で飛ぶ方が楽だってさ」
と秋人は説明した。ふと値札を見た修一は
「けっこうするな」
値段は、パソコン同様、万単位で、高校生だと、バイトでもしないと手が届かな額。
「確かに、これじゃあ買えないな」
アキラは、この世界に来たあと、持っていたファンタテーラのお金を、
この世界のお金に両替して持っていたが、全然足りなかった。
このボードが欲しかったのか、がっくりしているアキラ。
その様子に、何とも言えない表情をする秋人であったが、
「そうだ、アキラ君って、ファンタテーラじゃ冒険者してたんだっけ?」
「ああ」
「だったら、いい稼ぎがあるよ。」
秋人が、その稼ぎの話をすると、修一は
「それ危険じゃないか?」
と言うと、アキラは
「大丈夫、ファンタテーラでも、同じ事してたから」
と言って余裕たっぷりなアキラの様子に、
(コイツは、本当に心配いらなそうだな)
と思った。
この後は、ごく普通なアーケード商店街を経由して、
ヨーロッパ風の街並みの場所についた。
「ここが魔法街、昔は、花街だったらしいけどね。
魔法関係は、ここで一通りそろうよ」
立ち並んでいる店をのぞいてみると、其々魔法の発動を補助する杖や箒、指輪、
ローブと言った魔法具。生成に、魔法を使う薬、いわゆるポーションや、
その材料となるものや魔法によって生み出されるお菓子など、
とにかく魔法が関わるもの売っている店だらけであった。
「ファンタジーの世界だな」
物珍しさから、修一の目は輝いていたが、一方で、つまらなさそうなアキラ、
「この辺の建物は、ファンタテーラからの異築物件らしいから、
アキラ君には、見慣れた風景だよね」
「まあな」
なお、此処に来るまでの普通の商店街は、物珍しかったのか、
目を輝かしながら、周りを見ていた。
ここで、ふと修一は、思い出した事があった。
「そういや、この辺って美味しいたこ焼き屋が、なかったか?」
修一は、母親から、たこ焼き屋の話を、聞いた事があった。
「あるよ。昔から美味しいって有名な店が」
アキラが
「タコ焼きって、異界料理で、聞いた事はあるけど、見た事ないんだよな」
当然ながら食べて事もない。丁度その時、修一は、
そのたこ焼きを、食べ歩きしている魔法使いたちを見かけた。
「あれがタコ焼きだよ」
と修一が、おしえて、それを見たアキラが
「うまそ~~」
と言ったので、秋人が、
「だったら、食べに行こうか」
と言って、一同たこ焼き屋を目指す。
その途中、秋人に電話が、かかって来た。それに出て、電話を終えると
「ゴメン、ちょっと用事が出来たから。直ぐに戻って来るから、ここで待ってて」
と言って、秋人は行ってしまい、
「どうする?」
とアキラが言うと、修一は、ちょうど喉の渇きを覚え、
「喉が渇いたから、そこの自販機で、ジュースでも、飲もうと思うけど」
丁度、二人の視線の先に、飲み物の自販機らしきものが見えていた。
「俺も……」
アキラも、同意し、二人は自販機の方に向かう。
さて、彼らのいる位置から、死角になる場所に、同じく自販機を目指す人物がいた
そして二人が、自販機の前に来た時、その人物と出くわした。アキラは
「あっ!」
と声を上げ、修一は
「天海……」
「アキラ君と桜井修一!」
そこに居たのは、天海蒼穹であった。
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