2「WTW」
翌日、放課後、interwineに修一、秋人、零也、鳳介の4人の姿があった。
この頃は、まだ出会って間もないが、だいぶ親しくなっていた。
そこでの雑談の後、修一と秋人が、アキラの話をした。もちろん修一の家にいる事も
そして、修一が、
「ゲートから人が出てくるのは初めて見たけど、出てきたって感じじゃないよな
いきなり現れた感じで」
すると零也が
「俺も、最初ゲートから、人や物が飛び出してくるんだと思ってた」
次に秋人が、笑いながら
「僕も、それを一度見たくて、一緒、ゲート探ししたよね」
「したした。一緒に警報が出てる場所に行ってな。
今思うと、かなり危ないことしてたよな」
次に鳳介が
「俺も……あの穴から、何かが飛び出てくると思っていた」
どうやら、みんな同じことを考えていたようで
そして秋人が
「実際は、周囲に出現するんだよ。それこそパッとね」
ここで、零也が
「それにしても、この街に来たばかりで、いきなりホストファミリーとはな
この中で経験が無いのは俺の家だけか」
ここで言うホストファミリーとは、
正式名称、異世界生活支援協力家庭で、来訪者たちが、
この世界での生活に慣れてもらう為に、協力する一般家庭の事。
具体的にすることは、家に住まわせて、この世界での生活様式を
実際に体験させる事で、それがホームステイを思わせたことから
ホストファミリーと呼ばれるようになった。
なお来訪者すべてに、行われている事ではなく、主に未成年を対象に行われている。
修一は、以前、下宿人の話をした際に、秋人の家に来訪者が住んでいると言う
話を聞いていたが
「それじゃ、煌月の所も?」
鳳介は
「前に、二週間ほどな、今は、叔父さんと同じ神社で、住み込みで働いている」
と答えた。
「まあ、俺の家もWTWに登録しているから、
そのうち、お声がかかるんだろうけど……」
と零也は言ったが、修一は、何となくであるが
その言い方に、なにかあるような気がしたが
本当に何となくなのと「病気」も出なかったので、深くは聞かなかった。
修一は、零也の「WTW」の言葉を聞いて時間を確認した。
「どうしたの?」
と秋人が聞くと、
「母さんからWTWに、アキラを迎えに行くように頼まれてて」
「そうか、講習に行ってるんだね」
「行きは、母さんが送っていったんだけど」
ここで零也が、
「来たばっかりで、まだ地理に慣れてないもんな」
修一は
(俺も来たばっかりで、あんまり土地勘ないけど……)
と思いつつも、まだ時間的には早い。
ここでふと思い立って
「そういや、WTWって『来訪者』の支援を行っているって聞くけど
具体的にはどんな組織なんだ?ネットには載ってないし……」
と尋ねると秋人が、説明を始めた
「WTW、正式名は『異世界入国在留管理局』、
一応、入管庁の支部局って扱いなんだよね」
「入国だけ?出国はないのか」
「ゲートは、こっちに来るだけの一方通行だからね。
入国は出来ても出国がないんだよ」
「そういやそうだった」
「ゲート事件前、その存在が知られていなかった頃は、逆だったみたいだけどね」
逸れかけた話を戻す秋人。
「『来訪者』を保護して、聞き取りと、検査とかをして問題が無いと、
なったら、この世界で暮らすための支援、生活講習とか職業訓練とか
住居の斡旋、場合によっては、ホストファミリーの手配とかするみたい」
「もし問題があったら?」
と修一が聞くと
「あまりない話だけど、特別な施設に送られるって聞くね。
問題が解決したら出てくるらしいけど、僕もあまり知らなくて……」
と言う事なので、この事については話題が続かず
話はWTWの他の仕事についてに。
「他にも『異漂物』を回収して、分析したり、『異築物件』の調査とか」
異漂物と言うのは、ゲートを通してやって来る生物以外の物
異築物件は、同じくゲートからやって来る建物の事
「あとは……なんだっけ?」
横から零也が、助け船を出すように
「あと危険物が現れた時の対処もだろ」
「そうそう、ともかくゲートに関わる事、全般の対処を行ってるんだよ」
更に横から零也が
「でも、ゲート自体の研究は気象庁がやってるんだよな」
話を聞き終えた修一は
「なるほど……」
とは言ったが、気になる事が残っていたので聞いた。
「WTWって何かの略称だよな。どういう意味だ」
すると、ここまで黙っていた鳳介が
「『welcome to this world』の略だよな」
秋人は
「そうだよ」
と答えた後
「もともとは、ゲート事件を収めるために奔走した人たちの
組織と言うか、チーム名で管理局の設立後にメンバーの殆どが職員になったから、
管理局事態をWTWって呼ぶようになったんだよね」
WTWは、あくまでも通称であるが、この名前が有名であるが故に
市役所のアナウンスや公的な資料でも、使われ、
公用車にもこの名前が書かれている。
「しかし、なんでネットに載ってないんだろな?」
零也も首をかしげながら
「WTWに限らず、この街に関わる事ってネットに載らないよな」
秋人も
「不思議だよね。それ以外には、大々的に乗ってるのに、
本とか、新聞とかテレビとか」
更に零也が
「聞いた話じゃ、個人の投稿に至るまで、消されるっていうし、
どうも大十字久美が絡んでるって噂だがな」
「大十字久美って、たしか都市伝説……」
と修一が言いかけた時、携帯電話が鳴った。
「アキラからだ」
現在、アキラはWTWから、携帯電話をレンタルしている。
「はい……」
と電話に出てみると
「道に迷った!助けてくれ!」
あまりの大声だったので、スピーカの音が割れるほど
耳元で聞きていた修一は、面食らった顔をし
あと周囲にもまる聞こえ、
「落ち着け、つーか声を落として」
「落とせって!どれくらい!」
「普通でいいんだよ普通で」
一応、昨晩、携帯の使い方は教えていて
異世界によく似たマジックアイテムがあり、使っていたとの事で
すんなりと理解してもらったのであるが
流石に通話の際の声の出し方までは教えていなかった。
「それで、何があった?」
と修一が聞くと、アキラは、声を落とし
「講習が、早く終わって、そんで建物を出て……」
アキラの話では、建物を出た所で、
本来ならば修一に連絡を入れるところであるが
好奇心が湧き、つい街を見て回りたくなり
結果迷った。
「どんな場所にいる」
「どこもレンガ造り、でも俺が住んでた所とは違う」
修一も、土地勘が無いので、聞いたところで分からないから
友人たちを頼る。
「そういう場所は結構多いから、わからないよ」
と秋人が言い、他も同調する。
「ほか何かないか?」
「ふとい鉄の棒がいっぱい。あと時計の中身」
その事を伝えると、余計に分からないのか、みんな頭を傾げるが
鳳介がハッとなったように。
「湯気は出てるか、聞いてくれ……」
と言ったので、修一がそれを聞くと
「街のあちこちから出てる……」
と言う返事が来て、それを伝えると、3人が照らし合わせたように
「「「スチームタウン!」」」
そして秋人は、納得したように
「鉄の棒は、パイプだ。時計の中身は、歯車か」
なお鳳介が「時計の中身」と聞いた時点で、それが歯車と気づいたようであった。
そして、最後の決め手として、湯気の事を聞いたようである。
修一は
「そこに行けばいいんだな」
と聞くと、三人は頷く
「わかった」
と言って修一は、自分の分の精算を済ませ、出ていこうとして、秋人が
「ちょっと待って、修一君、場所わかる?」
「あ……」
なお、桜井修一の携帯電話にはナビゲーション系のアプリは付いておらず、
あと、愛用のUMPCにはついているが、今日は持ってきていない。
結局、友人たちも精算を済ませ一緒に行く事となった。
数分後、アキラの姿を見つけた修一が
「いたいた、おーーーい!」
と呼びかけると
「シュウイチ……助かった……」
と言って、修一のもとにやって来るアキラ、側には三人の姿もあり
「アキトもいたんだ……そっち二人は誰だ?」
修一は、零也と鳳介の事を紹介し、アキラも自己紹介する。
そして、零也は、アキラの顔を見ながら
「話には聞いてたけど、凱斗と同じだな」
鳳介も
「確かに、鴨臥凱斗と同じ目だ」
と言った。
ここで話は、interwineでアキラの話をした時まで戻る
鴨臥凱斗なる人物の事は、アキラの眼の色の話になって、
その際に、名前が出た。アキラと同じ目の色をしているからだそうだ。
修一にとって、初めて聞く名前だったが、苗字には聞き覚えがあったので
「鴨臥、もしかして民間軍事会社の?」
と聞くとすると零也が
「ああ、社長の子供で俺と秋人の幼馴染、今は俺のクラスメイト、
ただ性格がちょっとな……」
秋人が
「昔は、いい子だったんだけど」
とフォローめいた事を言う。
そして零也が、腹立たし気に
「原因は、凱斗の祖母さん所為だよ。絶対に」
と言った。
ここで鳳介が
「性格に、難があるが、武術の腕は確かだ」
それを聞いて、この時点ですでに鳳介が
超技能の使い手と知っていた修一は
鴨臥凱斗もそれかと思い。
「それじゃ、煌月と同じか」
と修一が言ったら、零也が
「いや凱斗の武術は、超技能じゃない。ただ超能力と組み合わせで、
超技能並みの力を発揮してるだけ、
純粋な超技能の使い手の煌月とは違う」
すると鳳介が
「俺は、超能力の制御に、超技能を使ってるだけだから
純粋な超技能の使い手じゃない……」
と自虐的に言った。場の空気が、おかしくなりかけたので、
修一は、ここでアキラが自分の家にいる事を話し話題を変えた。
そして話は今に戻って、アキラと合流した修一達、その後、零也と鳳介は
都合で別れて、3人になった時に秋人が
「修一君、アキラ君、今度の日曜日、僕、ちょうど予定が空いてるからさ
一緒に出掛けない?この街を案内してあげるよ」
この提案に、アキラは乗り、修一も、日曜は暇なのと、街への好奇心、
そして土地勘を身につけるべく、この誘いに乗った。
ちなみに全くの余談であるが、先のinterwineでの雑談の中で、
日曜の予定が話題に上り、零也は、彼女、つまり真綾とのデート、
鳳介は家の手伝いで、日曜は予定が詰まっているとの事。
とにかく日曜日は、修一、秋人、アキラの三人で出かける事となった。
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