4「日曜日」
そして日曜日、三人には修一の家に来た。居間に通されると、既に来客が
「よお、お前らも来たのか」
「アキラ君」
その人物の名は、アキラ・エディフェル、
赤毛で、肩まで届く髪を後ろでまとめていて、
瞳の色がバイオレットとエメラルドグリーンのオッドアイで、
日本人離れした顔立ちをしていて、あと一応男との事だが、女性的な風貌と、
声も女性的。
そして今アキラは、座布団に座り、居間のテレビの置いてある場所で
テレビゲームに興じていた
「いつも通り、連絡もなく突然やってきた」
「やっぱり」
修一の言葉に納得したような様子を見せる秋人達、
アキラは、秋人達と同じく修一が、この街に来てから出来た友人で、
秋人達とも顔見知り、修一達や零也とも違う学校に通い、
住んでいる地域も違うからあまり会えないが、
日曜に時々遊びに来る。ただし事前連絡は入れない。修一は慣れっこであるが
「それにしても、」
一方、秋人は家の中を見渡しながら
「結構いい所に住んでるんだね。部屋もきれいだし」
「そうか、確かに前に住んでた所に比べたら、広いとは思うけど、
それと、お前らが来るから掃除したんだよ」
ちなみに、修一は、普段からきちんと掃除しており、今回は来客があるから、
より念入りにしただけである。
ここで零也が
「前は、どんな所に?」
と聞くと
「前は2LDKのアパート」
そして鳳介が
「俺……この家って、前から知ってるんだよな。ランニングの時、
この家の前通るから。確か、ずっと空き家だったよな」
「ああ、この家、母さんの実家らしいんだけど、俺の爺さん婆さんが、
亡くなってから、誰も住んでなくて、母さんが、
時々こっちに来て掃除とかしてたらしいけど」
家についての話をしていたら、アキラが
「おい、そんなところで突っ立てないで、こっちで一緒にゲームやろうぜ。」
と誘う。なおアキラがやっていたゲームはとある有名な対戦ゲームであった。
すると零也が
「いいな、ちょうどやりたかったんだ」
そして鳳介の方を向きながら
「こないだの雪辱戦をな。」
修一を含めた4人は居間の、テレビの置いてある場所に移動した。
修一は、もとより、居間のテレビで、みんなでゲームをする予定だった。
ここのテレビは大きくて、多人数でゲームをするには適していた。
そして、修一が残りの人数分の座布団を引くと、みんな座って、ゲームに興じ、
随分と盛り上がった。そして
「あ~~~~~~~~~負けた」
零也が悔しそうな様子で声を上げた。そのゲームは多人数対戦ができ、
5人全員で対戦していたわけであるが、最初に脱落したのは、
秋人で、零也は2番目、少し間が開いて、脱落しアキラ。そして
「俺も、負けだ。強いなお前」
「ほんとほんと、すっげーな!」
と清々しそうに言う修一と清々しさだけじゃなく、妙にテンションが高めのアキラ。
そう最後に勝ったのは鳳介だった。
(負けたのに、なんか清々しくて心地いいや、いつもの『病気』も出ないし、
それにしても)
「でも意外だな。お前、ゲームとかあまりやらなさそうだから」
修一の個人的な見解であるが、鳳介は、武道一筋で、
こう言う娯楽には興味がないものと考えていた。
修一の言葉に対し鳳介は、テレビ画面を見ながら冷静な口調で答える。
「この手のゲームは、反射神経を鍛えてくれるから、ゲームも修行の内だ。それと」
鳳介は、修一の方を向いて
「お前も、十分強い。」
先に脱落した二人に比べ、三人の戦いは、結構激しかった。
特に修一と鳳介の戦いは拮抗し、なかなか勝負がつかず、
最終的には鳳介が勝つものの、辛うじてと言うところだった。
「そうそう、修一も、すっげ―強かった!」
とアキラも同意する。
更に鳳介は言った
「その腕前なら大会に出れる。いや出たことはないのか?」
「出たことないし、つーか大げさだろ。」
と修一が返すが、すると秋人が
「そんな事ないよ。鳳介君、大会で優勝するくらいのゲーマーだから、」
「えっ!」
修一は、あからさまな驚きの表情を見せた。更に秋人は続ける
「そんな鳳介君を相手に、あそこまで戦えるのはすごい事なんだよ」
「確かに、腕前がいいのはわかるけど」
修一は、鳳介の方を見ながら
「格闘大会ならまだしも、ゲーム大会って、意外っていうか、似合わないと言うか」
先も述べたことであるが修一は、鳳介に対し武道一筋と言う
勝手なイメージを持っている。
そんな修一に対し鳳介は冷静な口調を維持しながら
「ゲーム大会なら出れる。『煌月』の名前を出さなくてもいいからな」
「え?」
修一は、その一言が妙に意味深に感じた。その事を聞こうとしたが、
割り込むように零也が
「二戦目やろうぜ」
と言ったので、そのまま二戦目をやる流れになってしまい、聞きそびれてしまった。
そして二戦目の結果は、
「勝った……」
「すごいよ!修一君」
結果は、さっき同じく、零也と秋人、アキラの順に脱落。
しかしさっきとは違い最後に勝ったのは修一だった。
「いい戦いだった」
と清々しい顔で鳳介は、言った。だが肝心の修一は、うかない顔をしている
「どうした、お前、勝ったんだぞ、もっと嬉しそうにしろよ」
と、修一に声をかける零也
「そうそう!もっと喜べよ!」
とアキラが修一の肩をたたきながら言う
「ああ……」
修一は勝った瞬間は、確かにうれしかった。
だが直後、それに水を差す考えが頭に浮かんでしまい。
この勝利を素直に喜べなくなってしまった。
「それじゃ、三戦目……」
と零也が言いかけた所で修一が
「一休みしようぜ。飲み物とおやつ取ってくる」
そう言って、修一は席を立った。
「どうしたんだろ修一君」
と秋人が心配そうに言うと
「満足の行く勝ち方じゃなかったとか、結構ギリギリ戦いだったし」
と零也が答えると
「そうかなぁ……」
秋人は、納得いかないようである。鳳介は黙ったまま修一の方を見ていて、
アキラは、特に何も思っていないようで、蚊帳の外という感じ。
一方、零也には、かなりどうでもいいことだが気になることが出来ていた。
そして修一が自身の分を含め、四人分のチーズスフレケーキとジュースを
トレイに入れて戻ってきて、それらを配り終えるタイミングで、尋ねた。
「あの扉は?」
居間の一角にある特に、変わったところのないドア。何の変哲もないものであるが
零也は、気になったようである
「それは、表玄関への扉だよ。普段は鍵をかけてる」
「じゃあ、下宿人が出入りしてる方のか」
「そう」
この家には、玄関が二つある。一つが、扉の向こうにあり、
広い通りに面している通称、表玄関。
もう一方、修一が普段、出入り使っていて狭めの裏路地に面している裏玄関。
それぞれに別々のドアホンがついている。
本来なら表の方が玄関で、裏の方が勝手口となるのだろうが、どちらも造りが、
玄関なので、修一や、その母親などが、勝手にそう呼んでいた。
そして今日、4人がこの家に入ってきたのは、この裏玄関。
勿論、修一の指定によるものである。
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