第49話〜BP召喚〜
家に帰り、夕食や風呂などの諸々の雑事の後、俺はリビングのソファーに腰掛けて今日のリザルトを確認していた。
結果としては大量のオークの死体に、その中から解体した幾つかのオーク素材、ゴブリン、フォレストウルフが何体か。そしてオークジェネラルの魔石以外の素材に、魔石の売却額の銅貨八十枚。
それから大量の経験値だ。
クロウ アカツキ
職業:冒険者 LV:18
今日一日でレベルが六つも上がったのは上出来なのではないだろうか。まあ他の冒険者がどうなのか分からないから何とも言えないけど。
あと、それらとは別に魔物から得られた物がもう一つあった。それは戦闘によって得られるカード召喚ポイントの
今日一日に沢山魔物を討伐したからか、さっき確認した時には二三三五ポイント溜まっていた。BP召喚は一回百ポイントだから、十連が二回引けるな。
「そう言えば、このガチャするのは初めてなんだよな……」
他二つには結構お世話になっているが、BP召喚は今回が初だ。具体的にGzガルツ召喚と出て来る物に差はあるのか知りたいけど、残念ながらこのスキルはヘルプ機能とかは無い。頭に入っている知識にも回すのに必要なのが金からポイントになったくらいしか伝わって来ないし、もしかしたら殆ど変わらないのかもしれないな。
「何はともあれ、先ずは一回」
BP召喚を十連で使用する。召喚の見た目はGz召喚の時と寸分違わず、魔法陣からカードが十枚召喚される感じだった。
結果としては、銀が三枚、茶色が八枚だった。
・飴玉
・スタンショット
・鉄の鍋
・ロングボウ
・ライフポーション(銀)
・調味料セット(銀)
・カップラーメン
・ストロベリーショートケーキ
・インスタントサモン(銀)
・牛乳
・ファイアーボール
「うーん……」
何と言えば良いのか言葉に詰まるな。品切れになっていたライフポーションが手に入ったり、ちょっと面白そうなカードが出て来たりしたけど、代わりにモンスターカードが一枚も出ないという微妙な感じだった。
まあその分食料や生活用品が充実するのは良いんだけど、正直今なら食べ物は買えば良いから特にありがた味は感じ無い。精々ケーキとかカップ麺とかだろうか。
……そういえば、まだシロにはケーキを食べさせた事はなかったな。地獄の大爆死の際にも何枚か出てたけど、あの時は飴玉を狙って必死だったから普通にスルーしてたわ。今思えば、何でケーキで代用しなかったんだろうな。
「あ、クロウ。魔導書を見てたの?」
噂をすれば、シロがリビングに来た。
「丁度良かった。今シロに見せたい物があったんだよ」
「えっ、なになに!? もしかして飴!?」
目をキラキラさせて傍へ来るシロ。物凄い食いつきだ。そんなに飴玉気に入ってたのね。
「もしかしたら飴より美味しい物かもな」
「飴よりも!? そ、それって一体……!」
あれ? 何か思ってた以上にハードル上がった気がする。墓穴掘った?
いや、事実ケーキは飴玉より高価だ。シロもきっと喜んでくれる筈。
という訳でショートケーキを召喚する。生クリームや苺の使われたイメージ通りのショートケーキだ。
「はい、どうぞ」
「これは?」
「ケーキって名前のスイーツ。めっちゃ美味い」
厨房から拝借して来たフォークを手渡して食べるように促す。シロは恐る恐るフォークをケーキに刺し、一口分掬い取り、口に運ぶ。
「ん、んんん〜〜〜〜〜!!」
途端に悶えるような喜びの声を上げ、口に入れたケーキに舌鼓を打つ。表情は幸せそうに綻び、一目見て喜んでいるのが分かる。
「美味しい! すっごい美味しいよクロウ!」
「そりゃ良かった」
そう言って貰えるなら出した甲斐があるって物だ。
しかし……なんかシロが食べてるのを見てたら俺も食べたくなって来たな。在庫はそんなに無いけど、もう一つくらい食べても問題無いだろう。
なので俺の分も召喚する。丁度チョコレートケーキがあったからそっちにした。
「クロウ、それは?」
「これはチョコレートケーキ」
「それもケーキなの?」
そう言うシロの目はチョコレートケーキに向いている。完全にロックオンしていた。
「……一口要るか?」
「良いの!?」
「うん」
ていうか言わないとずっと見て来そうだし。
「ほれ、あーん」
「あーん」
シロにチョコレートケーキを食べさせると、またしても美味しそうな反応をする。
「うん、これも美味しね! こっちは甘さと酸っぱさが合わさって堪らないけど、そっちは色んな味が合わさって何とも言えない美味しさがあるよ!」
「そうだな」
やっぱり女性は甘い物が好きなんだろうな。またスイーツが溜まったら出してやろう。
さて、俺も食べよう。とケーキを掬った時、ふと手に持ったフォークに目が行った。そういえばこれって間接キスになるんだよな。あのシロの柔らかな唇が……いやいや、落ち着け俺。昨日の夜とかもっと凄い事してるだろうに。
意識的に何も考えないようにしてケーキを口にする。うん。味は普通に美味しい。何というか、コンビニで売ってそうな味がした。美味しいは美味しいんだけど、昔母親が買って来たケーキ屋の物と比べると見劣りしてしまう。まあその辺はガチャ次第だからしょうが無いんだろうけどさ。この御時世食えるだけマシだろうし。
「美味しかったぁ」
「美味しかったな」
俺もシロもあっという間に食べ終わってしまった。こういうのは一つ食べると他のも食べたくなるけど、あまり在庫に余裕が無いからまた今度だな。
そういえば、マリアベルにも食べさせた方が良いのかね? メイドとはいえ、マリアベルも女性であれば甘いのが嫌いでも無い限り食べるだろう。一応聞いてみた方が良いかもしれないな。
そう思っていると、丁度マリアベルが部屋に来た。
「御主人様、お風呂の支度が整いました」
「おう、分かった。ところでマリアベルもこれ食べる?」
「……それは何でしょうか?」
「ケーキって言う食べ物。甘くて美味しい」
ざっくりとした説明だけど、口で言うより食べた方が早いから省略する。女性は基本甘い物が好きだと思っているから、それさえ分かれば良いやという発想だったんだけど、マリアベルの表情は変わらない。……あれ? もしかして甘い物駄目なの?
「御主人様。次からそういう物を口にする際は事前にご連絡下さい。お食事もそれに合わせる必要が御座いますので」
「ん? あぁ、はい」
栄養バランスとかその辺の観点から、食べるなら事前に報告しろって事ね。てっきり甘い物は苦手なのかと思った。
「それはそうと、ケーキ食べる?」
「そうですね。御主人様の御好意を無碍にする訳には行きません。後で頂きます」
「別にこの場で食べても文句は無いけど」
「後で、頂きますね」
「あ、はい」
何か尋常じゃ無い圧力を感じたので素直に引き下がる。これはきっと食い下がってはいけない奴だ。何と無くそんな気がする。
「それでは、失礼致します」
そう言ってマリアベルはショートケーキを片手に一礼して部屋を出て行った。
「……あれ、絶対直ぐに食べるよね」
「やっぱり?」
なんかいつもより気持ち動きが早く見えたんだけど、やっばり食べたかったんだな。メイドのプライドと食欲のせめぎ合いだった訳だ。
……でもそうなると、ケーキを食べたマリアベルがどんなリアクションするのか気になる所ではある。シロみたいにとは言わないけど、やっぱり表情を綻ばせたりするのかね?
見てみたい気もするけど、そんな事をしたら今度こそ怒られたりしそうだな。……しょうがない、今回は諦めよう。
……でもいつかは見てみたいよな。
ハズレ勇者の異世界生活 ラスト @last-000
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ハズレ勇者の異世界生活の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。