第44話〜退散〜
オークジェネラルは首を落とされたまま動かない。取り敢えず倒せたと見て良いだろう。何かシャロンが緊張感ある感じで言うから最後に変に緊張してしまったけど、思ってたより簡単に終わったな。
……いや、マリアベルが凄いだけか? メタルナイトは吹き飛ばされてたし。
「あ、そういえばメタルナイトは?」
作戦に集中して意識していなかったけど、結構派手に吹っ飛んでたような気がするけど大丈夫だろうか?
吹き飛んで行った方を見ると、丁度メタルナイトが起き上がっている所だった。軽く見た感じ盛大に盾がひしゃげているものの、命には別状なさそうだ。まあ動く甲冑に命云々が適応されるのかは深く考えないけどな。
「取り敢えず大丈夫そう?」
「──ッ」
メタルナイトが頷いて答える。表情が無いから詳しくは分からないけど、若干動きがぎこちない程度で倒れる程では無いようだ。
「そうか。一応カードに戻しておくから、少し休んどけ」
戦闘で忘れそうになってたけど、今は急がないといけないんだった。鈍重なメタルナイトはどっちにせよ役に立たないのでカードに戻して、またシャドウアサシン二体を召喚しておく。
「じゃあ邪魔者は片付けたし、急ぐか」
「いや、それならもう大丈夫みたいだよ」
「え、そうなの?」
確か後ろから大量のオークが迫って来てるんじゃ無かったっけ?
「うん。大将がやられて怖気付いたんだろうね。他のオーク達は皆んな一斉に離れて行ったよ」
「そうなんだ」
それじゃあ別に急いで倒さなくても良かったんじゃ……いや、追い付かれたら普通に総力戦になるからこの方が良かったのか。
「じゃあもう急がなくても良い感じ?」
「うん。でもさっきみたいなのがまた起こらないとも限らないから、どちらにせよローグライに戻った方が良いだろうね」
「分かった」
じゃあとっとと後片付けして帰るか。
「えー……という訳で、とっととローグライに戻るんですけど、それで良いですか?」
「え? あ、うん。そうしよう」
呆気に取られていた三人を正気に戻して帰るように促す。ついでにオークジェネラルの死体も鉄の剣と一緒に回収しておく。アルマが何か言いたそうにしているけど、話す気は無いからそのまま口を噤つぐんでくれると助かる。そして助けた恩を感じて何も言わなくても黙ってくれたりしないかね? ……無理かね。
「それにしても、マリアベルさん……だっけ? オークジェネラルを一撃で倒しちゃうなんて凄い強いよね」
道中、シャロンがマリアベルの武勇を称賛する。
「ありがとう御座います。これも全ては、御主人様のお力の賜物です」
「え?」
いや、俺何もしてないんですけど。召喚しただけだよね? メタルナイト嗾けしかけて、安全圏からちょっかい掛けただけだよね?
シロも当然のように頷かないで、誇張され過ぎて恥ずかしいから。シャロンは兎も角、アルマが胡散臭そうな目で見てるから。
「確かに凄かったよね。魔物を召喚したり、倒した魔物を本の中に入れたり。その本って魔道具?」
「えーっと、まあ……」
目の前で色々と見せてしまってはいるけど、口で説明しなければまだ曖昧な状態に出来る……筈。明言さえしなければ想像の範囲内でしか無いし。だからあまり知られたく無いから詮索しないで欲しいんだけど……。
「シャロン。あまり詮索するのは良く無いわよ」
「あぁごめんね! つい気になっちゃったものだから。だって凄くない? 魔物をシュバって召喚して、倒したらシュッて消せるんだもん」
「そうですね。魔物を全部回収して持って帰るなんて、冒険者にとっては羨ましいですよね」
「まあ、確かに凄いわよね。本は」
うん、そうだよね。凄いよね、本は。……分かってるから本だけを強調すんのは止めろ。
「そういう訳で、あまり口外しないでくれると嬉しいかな。今の状態であまり目立つのは良く無いだろうからね」
「あ、うん。分かったよ」
結局シロが解決してくれた。もうこれからは交渉はシロに任せようかな。そっちの方が早い気がする。
でもなぁ、俺が撒いた種をシロに刈らせるのはどうなんだろうか? 流石にクズっぽいか?
「クロウ、どうかした?」
「あぁいや、何でも無い。ちょっと変な事で悩んでただけ」
「そうだったんだ。ちょっと聞いておきたい事があったんだけど、後にした方が良い?」
「いやいや、本当に個人的な事だから気にしないで。それより聞いておきたい事って?」
「あ、うん。もう直ぐローグライに戻るけど、マリーどうする?」
「マリアベル?」
シロに言われてマリアベルを見る。マリアベルがどうかし────あぁそうか。マリアベルはカード化で城門を介さずに直接出て来てしまったから、急に連れて戻ると色々と問題がある訳か。
「マリアベル。一旦戻って貰っても良い?」
「かしこまりました。まだ屋敷内での用事が残っておりますので、可能な限り早く再召喚して頂けると幸いです」
「分かった」
許可を貰ったのでマリアベルをカードに戻す。これで城門で疑われるような事は無くなった。
「……これ、その気になれば街中で魔物を召喚して暴れ回れるよね」
「ですね」
「そうなったら確実にあいつの仕業よね」
横から別の疑いが浮上してしまったが、そこは無視した。今の所するつもりは無いし。だから魔導書の悪用方を推測するのは止めい。
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