第41話〜移動〜
魔の森を行く三人の後ろを付いて行く。一人が怪我をしているからスピードは無いけど、一応二体のシャドウアサシンが周囲を警戒してくれているし、万が一の時には影に潜んだ奴と傍にはメタルナイトも居るから、俺はあまり警戒せずに済んでいる。
というか、ただでさえ見知らぬ人達と一緒に行動しているせいで若干緊張気味なのに、そっちにまで気を配る余裕は無い。俺のキャパシティーはそんなに大きく無いんよ。
「そういえばまだお礼言って無かったね。助けてくれてありがとう」
そんな俺の気も知らず、戦士の娘がフランクに接して来る。この世界コミュ力高い奴多くね? それともネットの普及していないこの世界ではこれが当たり前なのか? コミュ障には生き辛い世の中だな。
「あぁ、はい」
「どういたしまして。私はシロ。こっちがクロウね」
「どうも」
言葉に詰まる俺の代わりにシロが答えてくれた。もう俺喋らない方が円滑に進むんじゃねえの?
「私はシャロン。こっちの肩を貸してくれてるのがアルマで、前を歩いてくれているのがリーリエ。宜しくね」
「うん。こっちこそ宜しく!」
ほら、もう和やかに自己紹介をしているよ。俺だったらもう暫くは名前も知らない状態で話進める事になってただろうな。因みに俺はそんな彼女達の横で狼っぽい魔物がシャドウアサシンに始末されてるのを眺めながらこっそりカード化して回収したりしてます。だから何の役にも立って無い訳じゃ無いんだよ。適材適所って奴です。
「えっ? じゃあ二人共ウッドランクなのにあの場所に居たの?」
「ランクはあくまで依頼を受けるのに必要なだけだからね。魔物を倒して素材を売るだけならランクは関係無いし、魔物を倒せるならそっちの方が良いと思ったんだよ」
「へえ、そんな事が出来るんだ。ギルドからはなるべくランクに合った依頼を受けるように言われてたから、そんな事考えた事も無かった」
「それも間違ってはいないよ。実際実力に合わせて戦う相手を選ばないと、返り討ちに遭っちゃうからね。私達は偶々こっちのやり方の方が効率が良かっただけだし」
本来なら俺達も普通に依頼を受けながらやっても良かったんだけどね。生活費とかレベル上げとか浪漫とか諸々優先した結果そうなってしまったんだからしょうがない。
「そうだよね。そんな強そうな魔物を使役出来るんだもんね」
俺の傍を護衛するように歩くメタルナイトを見ながら感心したように言う。まあ実際一対一ならオークでも圧倒出来るくらいには強いからな。
「そう言うシャロン達はオーク討伐の依頼で来たの?」
「ううん。オークは合ってるけど、私達は魔の森でオークが増えて来ているから、集落があるんじゃないか調査に来たんだ」
あぁなんだ。もう調査している奴が居たのか。じゃあオークが増えてるって情報持ってっても報奨金は貰えそうに無いな。
「そうなんだ。それで、見つけたの?」
「いやぁ、それが集落を見つける前にオークに見つかっちゃって。一度退却しようと逃げながら戦ってたんだ」
そこへ俺達が来た訳か。
「まあこんだけ大量に集まってるなら間違い無くあるでしょうけど、確信させるだけの証拠を集められなかったのが悔やまれるわね。流石に今から戻る訳にも行かないし」
「ごめんね。私が怪我しちゃったばっかりに」
「良いのよ。どの道あれ以上無茶するのも危険だったし、結局戻る事になってたと思うわ」
その割には表情が少し優れない。
「それにしても、何で見つかったのかしら? 位置取りも無茶な場所じゃ無かったし、下手を打ったつもりも無いのに。急にオークが私達に気付いたのよね」
「確かに不思議だよね。いつもなら見つかる筈無いのに」
という事らしい。話の内容がどこかきな臭い気がするのは俺だけだろうか。
「多分それはアルマの肩に付けられてるのが原因だと思うよ」
「肩?」
そう言われてシロが指差した方の肩を見るが、特に何かがあるようには見えない。アルマもそう思ったのか、確認するように肩の辺りの匂いを嗅ぐ。
「ッ! これ、魔物寄せの餌袋の中身と同じ匂い!」
「じゃあ、オークはその匂いを嗅ぎ付けたんだ!」
「御丁寧に意識しないと気付かないくらい薄めて使われてるね。これだと獣人でも直ぐには気付かないよ。完全に狙われたと見るべきだね」
「ッ、あいつらっ!」
思い当たる節があるのか、アルマが犬歯を剥き出しにして憤慨する。
「その様子だと心当たりがあるみたいだね」
「うん。今朝突っ掛かって来た冒険者がアルマの肩を掴んだの。多分それだと思う」
状況的に限り無く黒だな。他に心当たりが無いならほぼ確定だろう。
「前々からしつこくちょっかい掛けて来たけど、まさかこんな事して来るなんて! 次会ったら絶対にぶん殴ってやる!」
物騒な事だけど、まあ仲間が負傷した遠因だし、方法的に明らかに悪意を持っての事だろうから、別におかしくは無いんだよな。俺もそんな事されたら絶対何らかの形でやり返すし。
……所で、安全な場所ってまだですか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。