第37話〜情報収集〜

 という訳で冒険者ギルドに移動。受付にてランクアップについて聞いてみる。


「ランクアップですか? やっぱり地道に依頼を熟すのが一番だと思います」


 そう答えるのは冒険者ギルドの受付嬢の一人のリエルだ。オレンジ色の髪をした見た目も性格も明るい娘で、昨日の拠点更新の際にもお世話になった人だ。今回も偶々空いていたので話を聞いてみた。


「でも、それだとウッドランクの依頼を強制されるんだよね。良く皆素直に聞いてくれるね」

「え? あぁ、お二人は王都から来たんでしたね。ローグライでは特定の依頼に限り、上のランクでも受ける事が出来るんです」

「そうなの?」

「はい。王都の依頼の殆どは、依頼者の手伝いをするような感じなので、なるべくランク以下の冒険者を寄越さないようにしているんです」


 確かに、実力の無い奴に手伝われても依頼者が困るからな。


「対してローグライは、魔物の討伐や採取などの物品の納品が必要になる依頼が多いんです。なのでランク以下の冒険者であっても、依頼の品が納品出来るのであればそれで構わないという形になるので、ランク以下でも受ける事自体は可能になっています」

「そうなんだ」

「でも基本的に依頼はランクと同じくらいの実力が求められるようになっていますから、出来ればランクに見合った依頼を受けて欲しいんですよね。早くランクを上げようとして上のランクの依頼を受けて帰って来なかった冒険者の方も結構居るので」

「まあ、そりゃそうだろうな」


 基本的に自分より強い魔物に挑んで勝つのは生半可な事じゃ無い。俺の場合は魔導書のモンスターが最低でもブロンズランク相当の強さがあるから大丈夫だと思うけど、それだって例外中の例外だろうし。普通の冒険者には厳しいだろうな。


「それに無理して依頼を受けてから行かなくても、他の依頼中にその素材が手に入った場合は、戻ってから依頼を受けると同時に納品してしまっても構わないそうです」

「あぁ、なるほど」


 態々依頼を受けてから行く必要は無いのか。適当にその辺を散策して、色々と集めてからギルドで納品出来る物を探しても良いんだ。


「でもそうなると、先に依頼を受けていた冒険者が、戻って来た時に依頼を完了されちゃったりするんじゃないの?」

「そうならないように、ローグライでは依頼の貼られた掲示板を分けてるんです。護衛や討伐の依頼は事前に受付に持って行って、採取や納品の依頼は後から持って行っても良いって感じです。なので納品依頼は早い者勝ちって事になりますね」


 依頼者からすれば品物さえ納品してくれれば良い訳だからな。どっちが先かなんてどうでも良いんだろう。


「因みに依頼に無くても買取はしているので、無駄足にはならないですよ」

「まあそりゃあね」


 買取すら拒否されるような事になったらブチ切れられるだろうな。それでも揉めそうではあるけど。


「ところで、ギルドにローグライ周辺の情報を調べられる場所ってあったりしますか?」

「はい。二階の資料室にありますよ」

「あ、そうですか」


 あるんだ資料室。最悪図書館的な場所を探さないと行けなかったからラッキー。


「じゃあ先に、そっちで良いのがあるか調べてみる?」

「そうするか」

「資料室の本を壊すと賠償金が掛かるので、気を付けてくださいね」

「あ、はい」


 最後に忠告だか脅しだか分からない言葉を掛けられて、俺とシロは資料室へと向かった。ところでギルド内がお通夜のように静かだったんだけど、何か悪い事でもあったんかね?




 資料室の扉を開けた途端、紙とインクと埃っぽい臭いが鼻を突いた。


「うっ……!」

「あんまり人の出入りは無いみたいだね」

「だな」


 まあそりゃあそうだよな。この手の世界は識字率は低そうだし、冒険者になる奴は大半が字の読めない一般市民だろう。そんな奴等が態々紙の資料を漁る訳が無い。

 まあ俺もシロも字は読めるから何の問題も無いんだけど。……お、周辺の地図発見。


「クロウ。こっちに魔物と植物の図鑑があったよ」

「オッケー。じゃあこっちの地図と照らし合わせてみるか」


 シロの見つけた図鑑と、俺の見つけた地図を基に、ローグライの情報を集める。ローグライは辺境に位置するだけあって周囲の自然は豊かだ。特にフェキニア山脈と呼ばれる山側にある通称魔の森は広大な自然の宝庫で、自然由来の素材は勿論、多種多様な魔物も生息している。地形も森林、湿地、山岳と色々。山岳では鉱石も取れるらしい。但しランクの高い魔物が多いから余程の高ランクパーティーでないと帰って来れないらしいけど。

 魔物の生息域の分布はかなり分かり易い。簡単に言えばローグライに近い程弱く、森の奥に行く程強くなっている。フェキニア山脈の辺りなんてワイバーンの目撃情報が載ってるくらいだ。

 因みにワイバーンはゴールドランク相当なんだそうな。つまりあの聖騎士より強いかもっていう感じだろうか? だとしたら今の俺じゃ勝ち目無いな。


「さて、色々分かったところで……どこに行くかな」


 恐らく初心者が行くような場所では俺の召喚するモンスターの敵では無いだろう。でもランクの低い魔物を幾ら狩っても経験値的にも金額的にも旨味が無い。

 かと言っていきなりレベルの高い場所に行っても危険だ。召喚モンスターは兎も角、俺自身の力ははただの一般市民並みだ。召喚モンスターが守り切れる場所でないと俺の命が危険に晒される。

 もしかしたらその時はシロが何とかしてくれるのかもしれないけど、そんな機会無いに越した事は無い。それに最低限身を守る力があるのに女の子に守られるって格好悪いし。

 だからブロンズランクの魔物で余裕を持って行動出来る場所が良さそうだな。


「この辺とかどうかな?」


 そう考えていると、シロが良さげな場所を見つけてその地点を指差す。場所的には森の中を少しばかり奥に進んだ、アイアンランクとブロンズランクの魔物の生息域の境目近くだ。

 確かにこの辺ならアイアンランクの魔物で無双した後、行けそうならブロンズランクの魔物を倒しに行ける。


「良いんじゃね?」

「じゃあ決定だね。行こっ!」

「おう」


 資料を片付けて資料室を出る。思えば冒険者稼業は王都で一日だけやって以来二日目だな。実力的には問題無いけど、経験的には初心者も良い所だ。一応気を付けておいた方が良いだろう。

 まあそれはそれとして、折角のレベル上げと資金稼ぎだ。気が向いている内にやれるだけやってしまおう。

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