第34話〜もう一枚〜
「じゃあ気を取り直して。もう一枚あるから引いてみるな」
「うん」
レヴィリアの存在で一瞬忘れそうになったが、まだプレミアムチケットは一枚残っている。流石に確率的に考えて邪神以上のインパクトは無いだろうけど、死蔵する事になったのと比べれば実用性のある物が出て来てくれるだろう。……そうだと良いな。折角手に入れたのに二枚共肥やしとか悲し過ぎる。
なんか良いの来いと念じつつ、二回目のプレミアムカード召喚を行う。今度は色が変化する事無く金色で止まり、カードの中身が表示された。
報復の盾:コスト五
「……盾?」
「盾? 防具の?」
「うん」
出て来たのは黒地に赤で何かしらの獣っぽいデザインが施された盾だった。これ何のデザイン? 狼? 虎? 良く分からん。
効果としては、『盾が受けたダメージを攻撃した相手にも与える』というものだ。やはりレア度が上がると付与効果もそれなりの物になるな。
「なんか攻撃受けると反撃してくれるっぽい」
「へえ、そんな効果が付いた装備も手に入るんだね。凄いなぁ」
「そうなの?」
この手のゲームとかだとこういう感じのアイテムは普通に手に入るから、あまり実感無いんだよね。
「うん。そういう特殊な効果の付いた武器とか防具って希少だから、大抵ランクの高いベテランの冒険者とか、有名な騎士とかしか持っていない事が多いからね。強力な効果が付与された物なら、貴族が代々家宝にしたり、国宝として大事に保管されたりしてるよ」
「あぁ、なるほど」
ゲームだと当たり前に出て来るようなアイテムも、現実で考えれば相応の価値になるだろう。
例えばライフポーション。王都で買い物中に知った事だけど、民間での傷薬は薬草が主流で、ポーションのような所謂魔法薬の類は中堅の冒険者や貴族が買う事が多いらしい。場所にもよるが、品質の低い物でも銅貨十数枚以上、物によっては銀貨を支払うような高級品もあるそうな。
そんでもって、現実で考えれば鉄の武具ですらそれなりの額になるんだから、特殊効果付きなら希少価値も相まって値段も跳ね上がるんだろう。そりゃあ成り立ての木っ端冒険者には手に入らないわな。
「となると、ウッドランクの今でそんなの持ってたら確実に目を付けられるな」
「うーん、まあ大丈夫だと思うけど……」
「甘いぞシロ。世の中にはそういう獲物に集る蟻のような連中がわんさか居るんだからさ。注意しないと危ないんだって」
異世界物でよくある話だけど、冒険者なんて大多数は真っ当な職に付けないならず者一歩手前な奴ばかりだ。油断していると難癖付けられて身ぐるみ剥がされる恐れがある。何だかスラムみたいだな。
まあこれに関しては完全に独断と偏見だし、王都ではそういう事にならなかったし、更に言えばローグライで拠点の更新をした時にも絡まれたりはしなかったから、もしかしたらこの世界では違うのかもしれないけど。
しかし油断してはいけない。今日が偶々大人しかっただけかもしれないし、金目の物を持っていなかったから絡まれなかっただけかもしれない。
特に俺は特殊なスキルを持ってるし、シロは見た目的にも肩書き的にも存在そのものが目立つ。変に目を付けられないに越した事は無いだろう。
まあそれでも難癖を付けられたなら相応の対応をするけどさ。黙ってやられるつもりは無いし。
という訳で、報復の盾も暫くの間死蔵する事が決定した。まあこっちは表立って使わなければ良いから、人目の付かない所で召喚して使うのも有りだから完全に死蔵するとは限らないけど。
「取り敢えずこれで召喚は終わりだな」
二つ共直ぐに使用出来るようなのじゃ無かったな。使えるカードが出て来れば此処から先の活動も少しは楽になるかとも思ったけど。
いや、もしかしたら俺が理解出来ていないだけで既に有用なカードを持っているかもしれない。以前の大爆死以降碌にカードの中身を見ていなかったから、後で確認してみた方が良いかもしれないな。
「それじゃあ用事も終わったし、お風呂入ろっか」
「うん……え?」
俺の腕を抱いてにこやかに言ってくるシロ。その言い方だともしかしなくても一緒に入るって事ですか?
「お風呂の準備でしたら完了しております」
「うぉっ! いつの間に」
ていうか扉を開けた音すら聞こえなかったのに、どうやって入ったんだ? もしかして気配も扉を開ける音も消して入ってきてたの? 恐るべし暗殺メイドの力……!
「じゃあ三人で入ろっ!」
「かしこまりました。お供致します」
「マジすか……」
あれよあれよと美少女と美女の両手に花で風呂に入る事が決定してしまった。いや、既にもっと凄い事しちゃってるから恥ずかしがる必要は無いんだけどさ。
何というか、その……お二人さん、何でそんな妖しい雰囲気醸してんの? シロ、その何か含んで居るような笑みは何? マリアベルは無表情なのに何でそんな至近距離で色っぽい吐息を出すの?
……おい、二人共何か言えよ。
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