第33話〜シロの妹〜

 夕食を終え、まったりとティータイムを楽しむ。紅茶なんてあまり飲む機会は無かったけど、割と美味しいもんだな。もしくはマリアベルの腕が良いんかね?

 因みにこの茶葉はマリアベルが王都に居る時に用意しておいたものらしい。いつの間に買ったんだとか、資金はどうしたんだと気になって聞いてみたら、『メイドの嗜みです』とはぐらかされた。君、変な事やって無いよね? ねえ?

 そんな一幕がありつつも、本来の目的は忘れていない。そう、プレミアムカード召喚である。王都で危険な目に遭った俺には戦力の増強が急務だ。出来れば先陣切って戦ってくれる直接戦闘が得意な奴が欲しい。マリアベルはメイドとしての印象が強過ぎて、もう戦力とかそういう風には見れなくなってしまったからな。

 という訳で……、


「じゃあカード召喚するか」

「うん!」


 ノリノリのシロと一緒に、プレミアムカード召喚を行う。今回はチケット二枚で二回分回せる。せめて一体でも良いから戦闘系のモンスターが欲しい。……こういう事言うから物欲センサーが働くのかね?

 まあそういうのはガチャをする上で切っても切れないものだ。出る時は出るし、出ない時は出ないんだから、気にしてもしょうがない。

 なので小難しい事は思考の隅に追いやって、プレミアムチケットを使用してカード召喚を行う。

 金色の魔法陣から金色のカードが出現し────直後、魔法陣から紫電と魔力の奔流が発生した。


「ん?」

「何か魔導書から凄い魔力が溢れ出してるけど、暴走してない? 大丈夫?」

「多分大丈夫だと思う」


 ガチャでこういう演出は高レアリティ確定の証だ。その証拠に金色だったカードに紫電と魔力が集まり、カードの色を金色からプラチナカラーへと変えた。ゴールドがレア度三だとしたら、これはレア度四ってとこか。マリアベルより上ってどんなのだろうか?

 しかしそこで変化は止まらず、更にプラチナから虹色へと変化した。マジかよ。スキルオーブに次いで此処でも虹色出ちゃったよ。召喚の魔導書が機能的にスキルとして破格なのを考えると、虹色のカードからはどんな凄いのが出て来るのか、最早俺には皆目見当も付かない。

 そして虹色のカードが光り輝き、カードの中身が表示された。


 享楽の邪神 レヴィリア:コスト十五


「…………」


 蜂蜜色の髪をしたワンピース姿の少女のカードを見て、そこに表示された名前に唖然とする。

 邪神? シロと同じ? マジで? ていうか魔導書で召喚出来ちゃうの?

 頭の中を色々な疑問で溢れ返りそうになるのを何とかこらえる。こういう時は難しい事は考えず、あるがままを事実として受け入れるのが一番楽で良い。

 実際カードとして出て来た以上召喚する事は可能だろう。但しコストがクソ重いけどな。現在の召喚上限コストは二二、マリアベルを召喚している状態では召喚出来ない高コストだ。最悪レベルが上がって召喚出来るようになるまでは死蔵するしか無いだろうな。


「クロウ、どうかしたの?」

「あぁ、いや……」


 これ、シロに言った方が良いかね? 多分シロも関係ある人物だろうし。


「シロはさ、レヴィリアって神に心当たりはある?」

「レヴィリア? うん、私の妹だけど。急にどうしたの?」

「いや、召喚されたカードに書いてあった」

「え?」


 シロはキョトンとした表情で固まっているが、事実なんだよなぁ。


「本当に?」

「うん。享楽の邪神って書かれたワンピースの女の子が写ってる」

「確かにリアだね」


 合ってるらしい。本当にシロの妹がカードに出て来たのか。


「でも、何でシロの妹がカードに?」


 シロに妹が居たのも初耳だけど、そんなシロの知人がカードになって出て来た事にもビックリだ。どうなってんのこれ?


「うーん……何でだろうね」


 そう言って困ったように苦笑する。君が分からないんじゃ誰も分かんないよ。スキル取った当人の俺ですら分かって無いのに。


「因みにだけど、この妹さんって戦闘力的にはどうなん?」

「そうだね、一応神だから私と同じように魔法を使えなくも無いだろうけど、戦いには向いていないかな」

「やっぱり?」


 見た目からそうなんじゃないかと思ってたけど、やっぱりそうか。

 まあそれでも神様スペックでその辺の雑魚なら体当たり一発で倒せるんだろうけどな。シロの時みたいに。


「じゃあしょうがないか」


 俺はそっとレヴィリアのカードを魔導書にしまった。


「召喚しないの?」

「うん。コスト的に重いし、戦闘向きじゃ無いなら無理して召喚する必要は無いかなって」


 マリアベルは平時でも有能だから常時召喚してるけど、そうで無いなら暫く放っておいても良いと思う。


「シロとしては久し振りに姉妹に会えるかもしれなかったから申し訳ないけど」

「ううん、気にしないで。私も皆んなに黙って来ちゃったから、急に顔を合わせるのは気まずかったし」

「そうか」


 そういう事なら暫くは召喚しないでおこう。緊急時になったら分からないけど、その時はその時だ。

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