第24話〜今後の予定〜

 翌朝、鳥の鳴き声を聞きながら目を覚ました。傍にはシロが俺にくっついて寝息を立てている。これが朝チュンというやつか。初めての経験だな。

 というかまだ外が薄暗い気がするんですけど。これ、もしかしなくても早く起き過ぎた感じ? 昨日は色々あってここ二日間より遅く寝た筈なんだけど、寝起きは寧ろ快適だ。俺もこの世界に染まって来たって事なんだろうか。


「おはよう御座います、御主人様」

「いつの間に……」


 さっき軽く見回した時には誰も居なかった筈なのに。これが暗殺メイドの力なのか……!


「申し訳御座いません。ただ今朝食の準備をさせておりますので、もう少々お待ち下さい」

「それは良いんだけど、俺どんくらい早く起きた?」

「まだ朝の鐘が鳴っておりませんので、相当早くお目覚めになられたかと」

「マジか……」


 完全に早く起き過ぎた感じだ。何なら二度寝しても良いように感じる。


「じゃあもう一回寝るから、時間になったら起こして──」


 と言いかけて、シロがモゾモゾと俺の方に擦り寄って来た。


「んぅ……くろ〜?」

「おう。起こしちゃったか?」


 シロは寝惚け眼で俺を見ると、ニヘラと笑って抱き付いて来た。


「くろ〜、くろ〜」


 幸せそうにスリスリするシロが可愛すぎて鼻血出そう。


「おぉよしよし。可愛いなぁシロは」

「〜♪」


 シロを抱きしめて頭を撫でると、ネコみたいにピッタリと密着して来る。それが可愛くてつい撫でながら甘やかしてしまう。なんか眠気も覚めてしまったけど、もう良いや。暫くこうしてよう。


「……御食事の用意をして来ますね」


 軽く目を細めてからそう言って部屋を出て行くマリアベル。今の間は一体どういう意味なんだろうか? 微笑ましかったか? それとも呆れられたか?

 今はどっちでも良いか。シロ可愛いよシロ。




 今日の朝食も美味い。柔らかい白パンにハムとサラダ、それとあっさりめのスープ。食べ易くて結構。


「うぅぅ〜」


 対面で顔を真っ赤にして食べているシロ。流石にあの甘えようは恥ずかしかったみたいだ。


「俺としては二人きりの時は良いと思うけど」

「マリアベルが居たよ?」

「あいつは茶化したりしなさそうだから大丈夫だろ」


 あいつは職務には忠実だ。主人の言動を茶化すような真似はしないだろう。多分。


「というか、シロは俺とそういう関係になったの後悔してんの?」

「……ううん」

「じゃあ良かったと思ってる?」

「…………うん」

「じゃあ良いじゃん」


 俺としてもシロが俺の事をそんなに思ってくれてるのは嬉しいし、普段色々としてくれるシロが俺に甘えてくれるのは素直に嬉しい。見てて可愛いし。


「俺はシロに甘えられるの嬉しいよ。俺に心開いてくれてるみたいで」

「ムゥ、そういうのズルいと思う」

「ハッハッハ」


 何とでも言いなさい。それでシロの可愛い姿が見れるんなら安い物だ。


「それより、今後の方針なんだけどさ。俺としては、さっさと王都を出た方が良いと思う」


 元々王都を出るつもりではいたが、シロの事もあって先延ばしにしていた。今まではホテルのオーナーの娘辺りだと思っていたからな。

 でも違うというなら話は別だ。良い思い出なんてシロと王都を散策したくらいしか無いような場所だ。嫌な思いの方が多いんだし、そんな場所さっさと出るに限る。昨日のような事がまた起こらないとも限らないからな。


「うん、私は良いと思うよ」

「それは良かった。となると次はどこへ行くかだな」

「まだ決めてないの?」

「まだ決めてないな。というか、俺まだこの世界について碌に知らないし。どこに何があるか分からないから決めようが無いんだよ」


 今日まで重要度の高い順にやって来たから情報収集はまだやって無かった。まあそういうのは大体シロに聞けば事足りるから大丈夫だと思ってたのもあるんだけど。

 え? シロとのデートは重要度高いのかって? いや、あれは気晴らしとして重要だったというかまだあの時は友達だったからデートじゃ無いし! というか連鎖的に黒歴史思い出すから触れるなや!

 まあそれはそれとして、やはりシロが俺が異世界から来た事を知ってるから説明に言葉を選ぶ必要が無いのはやり易いな。


「という訳で、どこに行くのが良いのか教えてシロさん」

「何で急にさん付け?」

「良いから良いから」


 そういうのは深く考えない方が楽だぞ。


「うーんそうだね。クロウはどんな場所に行きたい?」

「そうだな……俺的には、安定して金を稼げて、レベルを上げられて、シロと安心して暮らせるような場所が良いな」


 他にも色々要求はあるけど、この三つは最低限出来ないと困る。


「安心して暮らせるかは努力するとして、残り二つをクリアするなら、やっぱり冒険者として活動し易い所が良いと思うな」

「そういう場所って王国内にあったりする?」

「あるよ。そうなると、冒険者の街ローグライか、ダンジョン都市デルセルタ辺りが良いと思う」


 冒険者の街に、ダンジョン都市か。どちらもラノベ染みた雰囲気があって面白そうではあるけど、実際どうなのかは分からないんだよな。


「シロ的にはどっちが良いと思う?」

「私? 私はクロウと一緒ならどっちでも良いけど」

「それはそれで嬉しいんだけど、出来ればシロのオススメの場所を教えて欲しいかな」

「うーん、どっちを優先するかによるかな。移動に時間が掛からないのはローグライかな。寄り合い馬車で大体五日もあれば行けると思う。デルセルタは王都から距離があるから、寄り合い馬車でも十日日くらい掛かるけど、ダンジョンから発見される魔道具は高値で売れる事があるそうだから、大きく稼ぐならこっちかな」

「魔物の強さはどうなんだ?」

「どっちも王都近郊より幅が広いから一概には言えないかな。場所によって強くなったり弱くなったりするし」

「そうか……となると、ローグライかな」


 ダンジョンは魅力的だけど、流石に十日間も移動だけに費やすのは今の段階ではキツい。


「じゃあ目的地も決まったところで、ご飯も食べ終わったし、準備しよっか」

「オッケー」


 食事を終えて、外出の準備をする。さっさと終わらせて王都を脱出してしまおう。

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