第10話〜大爆死〜
「うーん美味しい! ありがとうクロウ!」
「あ、うん。良かったよ……本当に」
都合二七五回。気が遠くなる程の試行回数の果てに漸く手に入れた飴玉を美味しそうに舐めるシロ。
「物欲センサー……」
欲しい物に限って中々手に入らない現象が此処まで強力だとは思わなかった。十連ガチャが二十回目を超えた辺りからシロの表情が悲しげな物に変わった時は焦ったね全く。
「でもまあ、結果オーライってとこか」
結果的に飴玉は手に入ったし、カード召喚ももう暫くは良いやってくらい出来たからな。
・メタルナイト:コスト六
・追い風の剣:コスト五
・ライフポーション(三個)
・キュアポーション(二個)
・コスト上限増加ポーション
・プレミアムカード召喚チケット
他にも銀色のカードから色々と有用そうな物が手に入った。メタルナイトは騎士の全身甲冑のような見た目のモンスターで、シャドウナイトよりも硬質で強そうな感じだ。実際コスト的にも倍だしな。
追い風の剣は装備中の行動全体の速度を少しだけ上げる効果があるらしい。レア度が高いとそういう特殊効果が付与されるんだな。
ライフポーションとキュアポーションは文字通り回復系のアイテムだ。ライフポーションは怪我の回復、キュアポーションは毒や麻痺などの状態異常の回復と、今後冒険者として活動する上で大変有用なアイテムだ。
コスト上限増加ポーションは使用すると十分間だけ召喚コスト上限を十だけ上げるポーションだ。いざという時にはこれを使って一時的に召喚できるモンスターを増やす事が出来るようになる。ピンチの時には迷わず使おう。
そして忘れちゃいけないのがこのプレミアムカード召喚チケットだ。二百回以上ガチャを回してたった一回だけ出た金色のカードから出て来たこれは、文字通りプレミアムカード召喚を行う事が出来る素晴らしいアイテムだ。まさかガチャで手に入るとは思わなかった。……しかも本命の飴玉よりも先に出て来たからな。物欲センサー恐るべし。
しかしそうなってくると気になってくるのがプレミアムカード召喚だ。未だゴールドカード以上のレアカードはチケットのみでどんなのが出るのか分からない。
でもなぁ、今くじ運悪いんだよなぁ。いや、いつもそれ程良くは無いけど、今はそれに輪を掛けて酷い。別段何のレアリティも無いノーマルカードの飴玉一つに二百回以上ガチャ回したくらいだしなぁ。
「うーん……」
「どうしたの?」
「いや、プレミアムカード召喚が出来るチケットが手に入ったんだけど……」
「召喚しないの?」
「召喚はしたいんだけど、使い勝手の悪いの出て来たらどうしようかと思って」
「そっかぁ。そればっかりは召喚してみないと分からないしね」
下手に用途が限定されるカードが出て来られでもしたら、一生死蔵する可能性すら考えられる。呪われた武具とか絶対使わないからな。
「でも、私もちょっと興味あるかな。シャドウナイトだって客観的に見れば結構強い魔物だしね。それより強い魔物ってどんなのがあるんだろう」
「そうだな」
シロの言う事にも一理ある。使えるかどうかは兎も角、高ランクのカードがどの程度凄い物なのかを知るためにも、召喚してみるというのは悪い手じゃ無い。
というか、遅かれ早かれ使う事にはなるんだよな……。
「よし、じゃあやってみるか」
チケットを使用して、プレミアム召喚を起動。
すると金色の魔法陣が現れ、其処から金色のカードが現れた。
暗殺メイド マリアベル:コスト九
出て来たのはモンスター(?)カードだった。月明かりに照らされ、ナイフを手に持った茶髪に眼鏡の女性のイラストが描かれたカードが手元に現れる。
確かにこういう感じのゲームでは美少女キャラは定番だけど、まさか本当に出て来るとは。というかこれモンスターって呼んで良いのか? 人間だから召使いとか使い魔とかの方が良いのか? うーん……分けるの面倒だから全部モンスターで良いや。
それはさておき、レア度が上がったからか、コストもだいぶ重くなってる。シャドウの三倍だ。今のコスト上限の半分を超える。このカードを召喚したら、このマリアベルとかいうキャラをカードに戻すか、レベルを上げない限りは今日のような数で押す戦術は取れなくなるな。その分個の力が上がってるんだろうけど、このメイドさんを魔物と戦わせるのは抵抗がある。ゲームとかだとバリバリ使うけどさ、此処ファンタジーっぽいけど現実だし。
そんな事を考えていると、シロが肩をくっつけるレベルで体を寄せて来た。
「うぉっ!?」
「どんなのが来たの?」
「え? シロにはカードの中身が見えないのか?」
「うん。本も白紙にしか見えないよ」
「そうだったのか」
此処に来て新たな事実が判明した。確かに、出来るかどうかは兎も角、戦闘中にカードの中身を盗み見られたりしたら戦術も何もあったもんじゃ無いしな。
「それで、どんなのが来たの?」
「あぁ〜、簡単に言うと、メイドさん?」
「メイド? あの家の掃除とかやる使用人の?」
「そう」
「……メイドって戦えるの?」
うん。気持ちは分かる。普通メイドって戦う人じゃ無いからな。戦闘メイドが存在する創作物の方がおかしい訳で。まあ嫌いじゃ無いけどね。
「一応暗殺メイドって書いてあるから、暗殺とか出来るんじゃね?」
「あぁ、そっちかぁ」
「え?」
なんか暗殺というフレーズで妙に納得されてしまった。
何? この世界って暗殺技能持ってるメイドって割とありふれてたりするの? 何それ怖い。
「それじゃあ折角だし、召喚してみる?」
「そうだな……」
人の姿をしているって事は意思疎通は可能だろうし、どういう事が出来るのか早い内に把握しといた方が良いだろう。……別にメイドさんが美人だから実物はどうなんだとかそういうのじゃ無いからね?
「じゃあ召喚してみるか」
「うん。やってみよ」
と、その時、俺の腹から空腹を告げる音が鳴り響いた。
「……夕飯の後にな」
「う、うん。そうしよっか。料理持って来て貰うね」
そう言ってそそくさと部屋を出て行くシロ。なんというか、自分でやるって言っておきながら自分で出鼻を挫いた感じですっごい恥ずかしいです。穴があったら入りたいくらい。ベッドの下とか……あ、これ隙間無いタイプなんですね。
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