第9話〜魔導書の使い方〜
ホテルに戻って来た俺は、夕食待ちの時間の合間にシロがシャワーを浴びている内に、召喚の魔導書の機能を確認していた。
今日使ってみて思ったが、俺はこの召喚の魔導書というスキルについて知らな過ぎた。スキルだけあってある程度の知識は頭に入っているんだが、細かい部分はどうしても知ろうとしないと頭に浮かんでこない。
だから一度細部まで知るために魔導書のページをめくりながら確認しているという訳だ。
「フゥ……ん? 魔導書を見てどうしたの?」
シャワーから上がったシロがバスローブ姿で戻って来た。毎度思うけど、見てるだけで心拍数上がるくらい美人なんだよなぁ。ある意味心臓に悪い。
「魔導書の機能を詳しく調べてたんだよ」
「へえ……何か分かった?」
「色々と。思ってた以上に多機能なのな」
先ずは名前の通りの召喚機能。所持しているカードを現物に召喚する能力だ。
使えるカードは味方となる魔物を召喚出来る『モンスターカード』、剣や盾などの装備品、または食料品や道具などを召喚する『アイテムカード』、そして魔法のような敵味方、もしくは場になんらかの効果を発揮する『効果カード』の三種類。
モンスターカードから召喚された魔物は味方として戦ってくれる。ある程度は命令すれば聞いてくれるし、逆にある程度自由に戦わせる事も出来る。但しモンスターがやられてカードに戻ると回復するまでのリキャストタイムが発生し、それが無くなるまで再召喚は出来ない。
だからモンスターが、全員やられてしまった場合、リキャストタイムが終わるまでは身一つでなんとかしなければならないという訳だ。全滅には気を付けないとな。
アイテムカードは装備品や消耗品などを召喚する事が出来、召喚したアイテムは使用前ならカードに戻す事が出来るが、消費してしまうとカードに戻せなくなる。まあ当然っちゃ当然なんだけど。そしてこの機能を応用する事で、俺が手に入れたアイテムなら何でもカード化して持ち歩く事が出来るし、それらをパーツ毎に分解する事も出来る。昼間のブラックブルのようにな。
消耗品は薬草とかの回復アイテムの他に、水や食べ物のような食料品や、今朝引いた飴玉のような嗜好品もこれに分類される。装備品の場合は壊れるまではカードに戻す事が出来るが、消耗の度合いは回復しない。だから長く使いたい時は何らかの方法で消耗度合いを回復させないといけない。鍛冶屋に修理に出せばどうにかなるかね?
そして最後に効果カードだが、これは基本使い切りとなる。一度使えば成功しようが失敗しようが消費されて消えてしまう。現に今日使ったスタンショットも既に所持カードからは消えてしまっていた。
その分使い方次第では戦況を有利に進めたりピンチをひっくり返す事が出来るから、カード毎の効果をしっかり把握して、有用なのはストックしておいた方が良いだろう。今のところカード召喚する余裕は無いけど。
因みにだが、モンスターカードと装備品系のアイテムカードには召喚コストが存在しており、上限を超えて召喚する事が出来ない。現在の上限が十五で、鉄の剣がコスト一、シャドウナイトとシャドウアサシンがコスト三だから、今のところは上限を超えるような事にはならないだろう。まあゲームとかでもコスト上限で悩むのは中盤以降な事が多いから、今の所は気にする必要は無いだろう。
逆に効果カードは使い切りな分コストが無い。最悪コスト上限一杯召喚しても効果カードは使用可能だ。ますます使い方には気を付けないとな。
次にカード召喚機能だ。これは言ってしまえばカードガチャと呼んで良い代物だが、このガチャにも種類がある事が判明した。
一つ目は最初に回した『
二つ目は『
三つ目は『プレミアム召喚』。これは文字通り他二つよりも豪華なカードが出る特別なカード召喚だ。使うには特別な条件で手に入るプレミアムチケットが必要らしく、そのチケットの入手条件は『特別な行動を起こした時に入手出来る』という非常にアバウトなものだった。
その代わり出て来るカードはシルバーより上のゴールド以上が確定しており、召喚出来ればかなりの戦力アップを期待出来る。序盤は早い内に回しておきたいところだな。
他にもカードをBPとGzに変換するカード返還や、カードの順番を並び替えるソート機能、条件に合ったカードのみを表示するフィルター機能などもあるし、まだロックされて使えない機能もあるみたいだ。
「つまり、カードを駆使して魔物を倒して、それで稼いだ金やポイントで更にカードを召喚するっていう感じだな」
「魔物を倒せばカードが召喚出来て、それで戦力を補強して更に強い魔物を倒すって事?」
「まあそんな感じ」
その内魔物を倒していれば課金せずともカード召喚を回せるようになるだろう。取り敢えずその辺を目標にしたい。少なくとも金で悩むような生活からは抜け出したい。
そんな事を思っていると、扉がノックされた。
「あ、ご飯が来たみたい」
いつものようにシロが対応して、料理を乗せたカードを持って来る。
ただ、今回のは料理とは別に両手に収まるサイズの小さな巾着袋が乗っていた。
「その袋は?」
「これ? これはね……はい」
シロが紐を解いて中身を見せると、そこには金色のメダルのような……ってこれもしかしなくても金貨やんけ。
「おぉ。金貨の実物なんて初めて見たかもしれない」
「そうなんだ。はい、どうぞ」
「え?」
取り出した金貨を全部手渡された。
「えっと、これは?」
「これだけあれば、いっぱいカード召喚出来るでしょ?」
「まあそうだけど」
まさかこれ全部くれるって事? マジで?
「でも、良いのか? これ結構な金額だろ?」
銀貨一枚百ガルツなのと同じ計算としても、金貨一枚一万ガルツだ。露店の串焼肉が三ガルツ、日本の焼き鳥が一本数百円で換算すると、銅貨一枚の金額がおよそ百円で、銀貨一枚一万円、金貨一枚百万円と計算出来る。それが両手一杯になるくらい。もう地球に居た頃でも手にした事の無い金額が手元にある。自分で稼いだ金じゃ無いけど。
流石にこれをはいどうもと受け取れる金額じゃ無い。いや、くれるというなら貰うけどさ、逆に何要求されんの? 魂とか吸い取られるんか?
「うん……実はね、朝に貰った飴がまた食べたくて……」
何この子、めっちゃ可愛いんですけど。しかも大量の金貨渡されて恥じらいながら飴頂戴とか意味分かんない。分かんないけどモジモジするシロがめっちゃ可愛いのだけは分かる。
そう、シロは可愛い。そして可愛いは正義だ。俺は正義に準じ、正義を守るためにあらゆる手を尽くす。そのためには今の手持ちでは足りず、それ故事を成すために他者からの施しを甘んじて受ける事も厭わない。正義のためには金貨が必要であり、絶対的な正義を為すための部品でしか無い。……そう思う事にした。
「そ、そういう事ならしょうかないよな、うん。じゃあ早速カード召喚で飴を召喚しましょうか」
待ってろよシロ。今飴ちゃん用意してやるからな。
ヒャッハー!! ガチャの時間だオラァ!!
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