第10話ミューズヘーネとの再会

俺は、その場に立ち尽くしていた。

ガラガラと音が聞こえ、目の前に豪奢な箱型四輪馬車がとまり、御者が俺に声をかけてきた。

「この前の少年ではありませんか?」

見上げるとこの前助けてくれた老紳士だった。たしか、キースキリュスと呼ばれていた人だ。

「キースキリュスさん、でしたよね。この前はありがとうございます。キースキリュスさんがいるということは──」

「キースキリュス。邪魔者が立ちはだかっているの?」

ミューズヘーネの声が聞こえた。

「いえ、そのようなことは」

「そう。早めに片付けてちょうだい」

「みっ、ミューズヘーネぇー。このやろうぉぉぉ」

馬車の扉が開いて、ミューズヘーネの顔だけが出てきた。

「騒がしいわね、黙らせてちょうだい。キースキリュス」

命令して、扉が閉まる。

「先を急いでおりますので、それでは」

言い残し、馬車が走り出す。

俺は、その場で座りこみ両手で顔を覆い、叫び続けた。

「あっっっっのやろうぉぉぉぉぉぉああああああああああああああああああああああああああああああ」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る