第8話聖霊、ハクビ

「必ず助けるよ、少年。今、終わらせるから」

その言葉を発したのは、空中にふわふわ浮いている聖霊。40cmのフェレットだった。

「髭の君がやったんだよね?少年のお腹を──」

「カレの顔を見て抑えられなくなったんだぁぁ。そそられてねぇ~」

髭の男性が聖霊の質問に応答した。顔を歪ませ、恍惚とした表情を聖霊に向けながら。

「常軌を逸してるよね、君って。周りからそう言われない?」

「ええぇ~、そう思われてるのかなぁ~。言われてこなかったからちぃぃーとっも、自覚がないな。おかしい~なぁぁ、っとぉ──」

髭の男性が聖霊に走りかかっていき、腹に一撃を喰らわす直前に聖霊の周りの空気が一気に冷える。

「触らないでぇっ、ねっぇぇ。薄汚い、キミィィー」

叫ぶ聖霊。

何十ものの太いつららが出来上がり、髭の男性めがけ飛んでいく。

髭の男性は遠くまで飛び、建物の壁に衝突して、壁に身体を預ける。つららの尖った先端で身体から血がじわじわと流れ、タラーッと血が地面に垂れる。

「いぃやぁぁ、久々に喰らったなぁ。あの真っ直ぐぅな瞳ぃのぉ、うぶぅ...ああぁ、血のぅーにお、いぃ...は。くすぐられるぅぅぅぅ、後二、三発でヤバいなぁ...聖霊ごときにここまでぇ、グハァ...ハァハァ」

吐血しながら、自分の血の匂いに興奮している髭の男性。恍惚と笑みを浮かべ、身体の痛さに歪んでいる顔にも見えるほど。

髭の男性は、血で赤く染まる地面に手をつけて、地面につけた手を舌で舐めまわす。

常軌を逸していて、狂いに狂った狂人。

「またぁ、手合わせできるっのを、たの...しみ......ぃ──」

髭の男性はそう言い残し、闇に消えていく。


聖霊は、倒れて意識のない少年に近づき、傷ついた少年の腹に手をかざし、傷をふさいでいく。


──死なないで死なないで死なないで死なないで。生きてぇっ、少年っ。


応急手当てが終わり、聖霊使いで契約を交わしたボク、ハクビの契約者、メリイアに念をおくる。


数分後に駆けつけてきたメリイアが、少年の傷を治した。



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