第6話ミューズヘーネ様

「運がわりぃ~ねぇ、少年。クーシュトリガに遭遇するなんて。くぅくくっ、ふふっはははっ」

目の前の女子が突然吹き出し、豪快に笑いだす。

「お前誰だよ、何でこんなことすんだっ!」

「怒鳴んなよ、状況が理解できてねぇのかァ。そのきたねぇー、口をグチャグチャにすんぞっ!質問すんじゃねぇよォ」

さっきとはうってかわって、ドスのきいたひどく冷めた声が小柄な女子から発せられた。ひどく荒ぶっている目の前の女子。

俺は、耳を疑う。

俺の身体が恐怖で震える。

「少々、やりすぎでは。彼が怯えています」

低く、落ち着いた声が女子を制しようとする。

「しったことかっ、キースキリュス。クーシュトリガがいらねぇモンつくりやがるのがわりぃーんだよ」

そう言い、俺の顔に蹴りをいれてきた女子。

顔に激しい痛みが走ると同時に、椅子が倒れる。

「いたぁ......うぅ」

「今ァ、口開いたよなァ~」

顔を近付けてきた女子が今にも殺しそうな瞳をギラギラ輝かせ、拳をつくる。

「やっ、やめてっ、やめてくだ──」

「そこまでにしてやれ。戻りましょう、ミューズヘーネ様」

女子の後ろからとめにはいった人物のおかげで助かった。

「分かったわ。またお会いしましょう、少年」

俺に笑顔を向けるミューズヘーネという女子。

キースキリュスと呼ばれていた人物に腕と脚のロープを解いてもらった。

「ありがとう、ございます」

「君がお嬢様に会わないことを祈るよ。では」

立ち去るキースキリュスを見送る。

ここはどこなんだ。あの野郎のせいでこんな目に。

顔の痛みが続いていて、最悪だ。理不尽だ、この世界!




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