第5話

私はお客様に渡す花を用意すると同時に思考を巡らせた。


私の考えが正しければ、二人はきっと同じことを思っているのに言葉にしないばかりに伝わっていないのだろう。


大人とはとても不器用なものだ。

もしかしたら、大人だけじゃなくて、人というものはとても不器用なものかもしれない。

だとしたら、誰かの助けが必要で今、私は彼らの助けることができるかもしれない。


だから、私の考えを伝えてみよう。


「お待たせしました」

お客さんは微笑んで私を迎えてくれた。

私もおかげで少し肩の荷が下りる。一呼吸置いて話を切り出す

「今から話すのは私の想像なので間違っているかもしれません。なので、聞いて頂かなくても結構です。それでも聞いて頂けるなら幸いです」

お客さんは再び微笑んで頷いてくれた。

「それでは、お話しします」

大きく深呼吸し、お客様の顔を見る。お客様はやっぱり微笑んでくれている。


「恋人さんが先日、お客様に渡されたアスター。この花の花言葉は、信じる恋。ここで私は一つ疑問に思いました。なぜ、青色を選んだのか」


お客様は真剣に私の目を見て話を聞いてくれている。


「ほとんどのお客様が贈り物には赤や黄色などの暖色の花をお選びになります。しかし、なぜ恋人さんは青という寒色を選ばれたのか。そこで私は青という色自体に意味があるのでは、と考えました。花というのはその花自体の花言葉と色別にも花言葉が存在します」


お客様は少し驚きながら話を聞いてくれている。

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