第6話
「青色のアスターの花言葉は二つあります。一つ目は、信頼。二つ目は、あなたを信じているけど心配。これは私の想像ですが、恋人さんはきっと後者をお客様に伝えたかったのだと思います」
ミステリー小説に出てくる探偵のような推理とは異なるが、幼い頃から大好きで共に過ごしてきた花の話をするのは気分がいい。
「なぜ、そう思うのですか?」
お客様の質問に丁寧に応えていく。
「最初に疑問に思ったのは、お客様がいつも笑顔だったことです。可笑しい話ですが、初対面の私でもなぜか、心地良いと思ってしまったんです」
不思議そうな顔をしているお客様でも、奥には笑顔があるのが私にも伝わってくる。
「なので、恋人に贈る花と聞いて納得しました。私以外にもお客様の笑顔が心地よいと感じる人がいると分かったからです。でも、それは、同時に恋人さんはどれだけ不安なのかとも考えてしまいます。初対面の人にでもこの素敵な笑顔。恋人さんは不安で溜まらないでしょう」
お客様の笑顔が初めて途絶えた瞬間だった。
同性にしか分からないことも多くある。例え、恋人同士であっても性別の壁は大きい。嫉妬心は性別問わず持ち合わせているが、女性の方が強く感じることが一般的に多いと言われている。
「そこで私からご提案させていただく花は、アネモネの紫です。花言葉は、あなたを信じて待つ」
お客さんはクスッと笑った。
「お花屋さんは何でもお見通しですね。」
「何でもは、知りませんよ。こちらで宜しいですか?」
「はい。というかそれでお願いします」
お客様はやっぱり笑顔。だから、私もその笑顔に劣らない勢いの完璧営業スマイルで返す。
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