欠陥人間
とある欠陥人間
欠陥人間
「不健全な精神状態ですね」
昨日の健康調査票が返された。
「人が信じられないようです」
「ネガティブな思考をお持ちですね」
「最近楽しいことがありませんでしたね?」
昨日学校にメンタル医者がやって来て、僕を診断した。
「最近不安を感じていますか。」
「はい。」
「友達と遊んでいますか。」
「いいえ。」
「友達は居ますか。」
「いません。」
「他に最近困っていることはありますか?」
「手短に言うと、
先ず、
家族の偽の愛情が煩わしいです。
学校がくだらない勉強を押し付けてきます。
なかなか親友が見つかりません。
大人になってから働いてお金を稼げないと僕は死んでしまうようです。
未だに人生の攻略法を誰も教えてくれません。
そもそも人生に意味なんてあるんですか?
飼っているウサギは可愛いですが、多分それはウサギの気持ちが分からないからで、多分喋りだしたりしたら可愛いとは思えなくなります。
誰も信頼できない、誰とも本当の意味で理解し合えない。
そんなクソみたいな世の中に生まれてきてしまったのに、そのことについて親に文句を言うと世間様から『親不孝者』と言われてしまいます。
あとは、
僕の悩みを聞くだけで何も解決してくれる気のないヤブ医者が目の前にいることくらいですね。」
とりあえず思いついたことを10個くらい言ってみた。
ハイ次の人、と医者はニコニコしながら言うだけだった。
今日、健康調査表を返された僕は
「この前診断しましたが、貴方の息子さんは
「そうなんですか……。 分かりました。 頑張って一緒に
心配そうな顔して母親が僕に向かって言う。
「原因としては中二病、友達不足、人間不信、自意識の肥大化、あとはボカロ曲の聞きすぎですかね。 アニメを見ているのも悪影響だと言えます。 中でも最大の原因は『考えすぎる』ということです。 もっとバカだったら人生楽だったのに。 とにかく、この症状は放っておくと悪化し、いずれ社会不適合者になります。
先ず、大学生になる前に二次元にドップリ浸かってしまいますね。 大学生になった後も孤立し、リア友の代わりとして学校に二次キャラのtシャツを着ていくようになります。 そのあとは就活もせず、働かない権利を主張しだし、ニートになります。 30歳までにうつ病にかかり、35歳で薬物中毒になり、40歳になるまでにはもう自死しています。」
「まあ。 怖いですわね。 どうにかして直せないですか?」
「安心してください。 まだ間に合います。 息子さんの精神をちょっと矯正手術しちゃえばいいんですよ。 立派な人間になれないのは病気のせいであり、『本当の』お子さんは真人間になる素質がありますから。」
「まあそんなことができるんですか?」
「ええ、できます。 なんたって私は『メンタル医者』ですから。」
「あの、お値段の方は……?」
「安心してください。 国の政策で、未成年なら無料で改造手術を受けられるんですよ。 未来を担う大切若者たちなので、早く
「無料でやってくれるんですね! ありがとうございます、ありがとうございます。 ほら、貴方もお辞儀!」
母親が僕の頭を持ってお辞儀させようとする。
「何勝手に決めてるんだよ! 今まで黙っていたけど、こんなのおかしいよ! いやだよ。」
「ダメ、恥ずかしがらないの。 今の貴方は病気だから分からないだけで、本当は貴方も直してもらいたいはずだから。 お医者様がせっかくタダにしてくれているんだからやってもらわないと。 あ、すみませんね。 うちの息子が駄々こねちゃって。」
「仕方ないですよ、病気なのだから。 手術が終わったらきっと通常通りになってますよ。」
医者と母親と、二人がかりで僕を抑え、手術室へ運ばれた。
僕の頭がベッドに固定され、医者が大きなノコギリを取り出した。
「ちょっと痛いと思うけど、我慢してください。」
ああ、本当に僕は矯正手術を受けるんだな……。
でも、この医者じゃなくても、この社会に居る限り、いずれ誰かに同じことをされたんだろうけど。
ギギギ。
「これで終わり、っと。」
「本当にこれで息子は直ったんですか?」
「ええ。 あと一分以内にもとの
医者と母親が頭の上で会話をする。
ああ、あの
親も、先生も、道行く大人も全員同じ顔だったんだ……。
鏡に映る自分の顔も、同じに見えてきた……。
それが、
「オイシャサン、シュジュツアリガトウ。 オカアサン、ナンカアタマノツカエガトレタヨ。 コレデボクモマニンゲンダ。」
欠陥人間 とある欠陥人間 @yondekudasai
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