第68話 金の唐揚げ 銀のおにぎり


ある日の昼休み。

僕と由香たちと昼食を食べに中庭にきた。

普段は教室で昼食を食べるのだが、今日は天気がいいので中庭まで出張してきたのだ。お外でランチとかお洒落すぎる。


中庭にはいくつものグループが弁当を食べていた。

いちばん奥の一角にシートを広げた。

雑談しながら美味しい昼食をいただく。うまーいうまーい。

女性陣はクラスメイトの恋愛事情の話で盛り上がっている。

僕がご飯を食べながらボーっと辺りを見回してると、中庭の最奥の木陰に女子生徒が一人でご飯を食べているのを見つけた。

木陰でひっそりと食事をしているので、女子生徒の姿まではわからない。

その時は、一人で飯食ってるな程度で特に何も思わなかった。

一人なんてつまらないんじゃないかな。

どんな人かわからないけど誘ったらくるかな。

ナンパって怒られるから誘わないけどね。





翌日

昨日に続いて中庭で昼食。

今日は昨日のメンバーの他に松木さん、安藤さん、小島さんも参加していた。

プール行った女子会メンバーである。

僕も女子会メンバーの一員である。

前日と同じ場所にシートを広げる。

ふと中庭の最奥を見ると昨日の女子生徒がまた一人で昼食を食べていた。


「あの子は昨日も一人でご飯食べていた」


僕の言葉にみんなの視線が一斉に女子生徒に向かう。

上履きの色からすると僕たちと同学年だ。


「あ、あの子は柳川瞳美(やながわひとみ)ちゃんだよ。3組だったっけ?私、同じ中学だった」


安藤さんが教えてくれた。


「一人でご飯なんて寂しくないのかな?」


僕の言葉に安藤さんは、


「あのこは中学校の時もいつも一人だったよ。周りが誘っても乗ってこないの。別にイジメられるとかはなかったけどね。顔立ちは可愛いのにやぼったいから損してるよね」

「へー、そんなんだ」


彼女を見てみると確かにやぼったいと言うのが理解できる。

長い髪はもっさりとしていて、眼鏡も地味な感じのものだ。

制服のスカートも標準の長さで、今どきのパンツギリギリまで丈を上げてる女子生徒たちとは違う。

ちなみにここにいるメンバーのスカート丈は短い。

さっきからパンツがよく見える。

彼女たちのパンツは、僕の脳内フォルダに沢山保管されているので、今更保管することはない。

慣れすぎて性的興奮は起きない。

興奮などしない。

おかずになんてしない。


……嘘。

今でも大好物です。


「僕はとても寂しそうに見えるけど」


彼女を見た僕のお節介魂に火がつきそうだ。

ほっといてと言われると、ストーカーしたくなるような。


「よし、お昼一緒に食べるか誘ってみようか」


僕の突然の思いつきだ。

当然、みんなは反対をする。

イヤでの反対じゃなくて、一人が大好きな彼女の邪魔になるので反対らしい。

でも僕の一方的なお節介魂はすでに火がついたようだ。


「行ってくる!」


僕はシートを飛び出して彼女の下に向かう。

右手に唐揚げ、左手にはおにぎりを持って。


「ねぇ、君っ!」


僕が話しかけると彼女はビクッとしてこちらを向いた。

目と目があう。

彼女は無言で固まっている。

僕も彼女の目を見て動かない。

しばらく見つめあうが状況は変わらない。

僕は一歩前に出る。

彼女は動かない。

もうちょっと前に出る。

彼女は身構えた。


「ねぇ、君。あなたが落としたのは金の唐揚げですか?銀のおにぎりですか?」


彼女は固まったまま無言だ。

もう一度。


「金の唐揚げですか?銀のおにぎりですか?」


彼女はものすごく身構えた。


「金の唐揚げですか?銀のおにぎりですか?」


彼女は手元にあったお弁当を急いで片付けて走り去った。

走り去ったのだ。

僕は両手を突き出したまま由香たちの下に帰った。


「どこの変質者でしょうか」


由香の一言。


「少し涙ぐんでたよ」


松木さんの一言。


「私が謝ってきましょうか?」


安藤さんの一言。


「真尋くんのやらかし案件。ちょーうけるんですけど」


遥、僕は恥ずかしい気持ちで胸がいっぱいだ。


「あたし動画撮りました!」


小島さん、あなたって人は。


「菜月さん、パフェとか食べたくない?奢るからさ、ちょっと話しようか」


まずは小島さんに動画を消してもらうように交渉しないと。




放課後、僕は3組にきている。

驚かせた彼女に謝罪しに行く。

一人だと聞く耳もって貰えないかもしれないので、面識のある安藤さんにも同伴してもらっている。


「柳川さんっ、ちょっといいかな」


安藤さんは帰宅しようとしている柳川さんを呼び止めた。


「ごめんね。前川くんが柳川さんに話があるって。話だけでも聞いてあげて」


安藤さんはそう言って一歩下がる。

安藤さんの後ろにいた僕を見て固まる柳川さん。


「お昼は驚かせてごめん。僕は前川真尋といいます。僕と友達になってください」


握手しようと右手を差し出すがスルーされる。

しょうがない、柳川さんに僕は変質者じゃない事を、ちゃんと説明する。

そして一人でご飯食べてたから、一緒に食事をしようと誘いをかける目的だったとも伝えた。


「明日は一緒に食べないかい?男は僕しかいないけど、女子は7人いるよ」


柳川さんは断ってくるけど、僕は何度も誘うつもりだ。

お節介魂のせいだろう。

みんなで食べるご飯は美味しいとか楽しいとかそれっぽい事を話した。

安藤さんからの助け舟もあり、最終的には柳川さんが折れた。


「じゃ、明日のお昼に迎えに来るね」


柳川さん、明日学校休めなければいいけど。

由香たちにも柳川さんの事を説明した。

真紀は、


「あの子の何が真尋くんのハートに火をつけたのか」


と不思議がる一方で、遥の回答は、


「あの子のおっぱい大きかったよ」


その一言で何故か納得するみんな。


「違うよ。僕は純粋なお節介魂で、彼女に学生生活を楽しんでもらいたいんだよ。おっぱいなんて関係ない。大きくても小さくても僕は大好きだから」


柳川さんの姿を思い出しながら僕は言った。

そういえば彼女の制服は胸元がかなりきつそうだったな。ぐへへ。

柔らかいのかなぁ。張りがあって弾力があるのかなぁ。






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