第48話 家族旅行


夏休み後半


今日から2泊3日で家族旅行に行く。

前川家と宮原家の4人でだ。

いつも僕たちの為に頑張って仕事してくれる、綾子ママ&裕子ママに温泉でゆっくりしてもらうためだ。


朝8時。

うちの車で家を出る。

温泉地は静岡県伊東市。

温泉を堪能するんじゃーっ!


道中は休みながらの安全運転。

法廷速度ですごく遅いけど文句は言えない。

由香は僕の隣でルンルンだ。

鼻歌とか歌ってるし。

そんなに温泉が好きなのか。

露天風呂を貸切できたら由香と入るか。

あ、家族風呂って4人で入るのか?

それは気まずい。

裕子ママのボディだったらギリギリいけるか?

うちの母親は無理。

若く見えるし、まぁまぁキレイな部類だと思うけど無理。

だって母親だから。生みの親だから。

気まずいに決まってる。


「ねぇ、まーくんは露天風呂行くの?」

「貸切あったら行くか?」

「うん、行く」


温泉楽しみだ。




伊東へは11時には着いた。

ホテルに車を停めて海に泳ぎに行く。

僕が驚いた事は、綾子ママ&裕子ママが水着持ってきたこと。

自分の母親の水着は衝撃的だ。

なんか僕が恥ずかしくなる。


海水浴場はホテルのすぐ裏。

パラソルとサマーベッドを借りて設置してもらった。

母さん達は浜辺でのんびりとするそうだ。


「日焼けがこわい年頃だしな。注意しなよ、シミができる」


両方のママにグーで殴られた。本当のことなのに。

僕も由香も日焼け止めはばっちり。

由香にはもちろん僕が塗り、僕も塗ってもらった。

母親がいると、まるで疚しい気持ちは起きない。

普段なら間違いなくおっぱいを揉んでいただろう。

不思議だ。


「よし、由香いくぞ。浮き輪は用意したな?」

「バッチリ!」


僕たちは海に駆け出した。

うひょう、海つめたくて気持ちいい。


「海の底が見えるな。これでサメがきてもわかるな」

「サメなんかいないよ。ほら浮き輪に入って!」


由香と浮き輪に入って海を漂う。


「おい、この水しょっぱいぞ!」

「はいはい、さっき係りの人が塩入れてたよ」

「そうか、維持費たいへんだな」


僕らのテンションは少しおかしかった。


「気持ちいいな。よし由香こっちむけ」


由香がこっちを見る。

そのままキスをする。

べろちゅーーーーーーーーぅ。


「由香は美味しいな」

「ばか」


え、それだけ?

なんか。こう……パンチとかないの?

それじゃぁ。

もう一度キス。

今度は唇をハムハムしてやる。


「由香、気持ちいいか?」

「キスって気持ちいいね」


は!?お前は由香の偽物か?


「わかった、お前は由香の偽者だ」

「何言ってるの?頭おかしいのに更におかしくなった?」

「だって素直にキスさせるなんておかしい」

「夏のせいだよ。開放感かな」

「お前、そんなビッチなセリフ言いがって」


こいつ、開放感とかいやらしすぎだろ。

体を開放してくれるのか?

浮き輪の中で由香を抱きしめながら、


「じゃ、えっちなことしようか」

「気持ちが開放してるだけ。まーくんには開放してません」

「おい!夏のせいなんじゃないのか?体も開放してるんじゃないのか?ちょっと位いいんじゃないのか?僕以外だったらいいの?むしろおっぱい揉ませろ!」


だめですーとか言いやがった。

可愛いじゃないか。


しばらく僕たちは浮き輪に揺られて海を楽しんだ。



少し腹がへってきたので陸に上がる。

母さんのところに戻ると、男2人が母さんたちに話しかけていた。

おいおい、サングラスかけてスタイルがよくたっていい年だぞ。

39・40才のマザーに声かけるなんて。

由香を見るとニヤニヤしている。

僕もなぜかニヤニヤが止まらない。

よし、


「母さん戻ったよ。あれ、どちらさんですか?」


男どもが、母さん!?とか言ってる。

じゃ、男たちは少し慌てながら”海楽しんでくださいね”とか言って去っていった。


「なに、母さんたち再婚でもするつもり?」


由香も言うねぇ。


「母さんたちだってまだまだいけてるんだよ」


ぷっ。何言ってるの。笑えるんだけど。

まぁいいや。


「腹へった。海の家でご飯食べたい」

「そうね、何か食べましょうか」


ランチタイムに突入だ。

あと、関係ないけどさ。

なんで母さんたちはビール飲んでるのかな?

バカンスしすぎだろっ!



海の家に入り、壁のメニューを眺める。

ラーメン、カレー、牛丼、焼きそば、イカ焼き、フランク、おにぎり。

とうもろこし、フライドポテト、枝豆、うどん、そば、おでん。

おでん!?

夏なのにおでん!?

需要あるの?


「まーくん決まった?私は、お蕎麦とイカ焼き」

「まじか、じゃあ僕はラーメン、ポテト、おでんにしよう」


母さんたちは、なぜか食事じゃなくて飲みになってる。

ビールと枝豆、おでん。

おい、おでん人気だな!


しばらく待ち料理が並ぶ。


「「頂きます」」「「かんぱ~い」」


ラーメンを食べてみる。普通においしいじゃないか。


「由香、おかしい。ここのラーメン美味しい」

「え、ダメなの?」

「だって海の家の料理は不味いのが常識だろ」

「いつの時代の話よ」


納得できない。が、不味いよりはいい。


「おい、おでんもうまいぞ。食ってみろ」


由香の好物の大根のおでんを差し出す。


「うん、味がしみてるね。美味しいよ」


なんか僕の常識が壊れていく。

由香にそう言ったら、


「どんだけ偏った常識よ」


と言われてしまった。

解せぬ。



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