第8話 本質


悠花さんとの楽しい初デートを過ごした俺は空も飛べる勢いだった。

帰ってきた俺を見て妹は

「顔がとろりんちょチクチクイガグリ頭」

と呼んでいた。

普段なら言い返す所だが今日は気にしない。

俺はそのまま部屋に帰って爆睡するのであった。


翌日


「おはようございますー!」

祐司は少し照れながらも元気な挨拶でお店に出勤するのであった。

初デート後の悠花さんが意識して恥ずかしいかもなーなど妄想した挙句のことである。

「おはよう!今日も祐司は元気だなー!」

ムッシュは相変わらずだな。と言った感じで返事をくれる。

さてさて悠花さんは?というと

「おはよう!」

割と普通通りでした。

でも小声で

「昨日はご馳走さま。ありがとう。」

と俺の耳元で囁かれて

祐司はやる気が20%upした!(自社比較)


いつも通り仕込みをしている時に

「そういやシェフ、駅前のカフェ行ったんすよー。あそこのブリュレめっちゃ美味いっすよ!コクがあるというか深みもあって、薄くてカリカリで黒い粒も入ってました!でもちょっと高かったっす、、」

実は悠花さんが席を立っている間に会計をしたのだが、飲み物とデザートだけで4000円ほどであった。

4時間分の労働が、、とも思ったが

悠花さんとの時間はプライスレス。お金で買えない価値がある。と思い支払ったのであった。

「おう、祐司。それはバニラビーンズつかってるのと、砂糖もうちではグラニュー糖だけど、多分カソナード使ってるな。

たけーんだよな俺も使いたいけど。」

へー。と相槌をうちながら

「高いからうちではやらないんすか?」

と興味本位で聞いてみた。

「それもあるけど、つくりやすさと収納と

うちの客層もあるんだよな。

うちのハンバーグ食べたことあったっけ?」

シェフは話しながらもカブの皮剥きを続ける。

祐司はそれを見つつ、思い返しながら

「無いっすねー。

でもうちでめっちゃ人気っすよねー!

うまそうっす!」

と答える。

「そうか、そうか。今度作ってやるよ。

実はな、うちのハンバーグは玉ねぎおろして入れてるんだよ。

材料は一般的なのと大差はない。

それで焼き目をつけたら少し水を入れてオーブンで蒸し焼きにする。

それで焼けたら、ハンバーグを取り出して、そのフライパンにソースをいれてつくる。

そんな拘りがあるんだ。」

珍しく熱く料理を語るムッシュを見て、俺はカッコいいと思った。

「玉ねぎって飴色に炒めろ!とかよく言いません?あれがいいんじゃないんすか?」

シェフはまだまだだなあという顔で

「うちの作り方だと、柔らかいジューシーなハンバーグになるんだ。

さっきのブリュレとも繋がるんだけど、うちは駅から離れてるし、お客さんも年配や家族連れも多い。だから肉肉しいのより柔らかくて食べやすい方が好まれるんだ。

それに1人でつくってるから飴色にする時間も大変だしな。

ブリュレもバニラエッセンスだけど

親しみのある味に仕上げてる。

子供からお年寄りまで食べれるように。

そこが大事なんだ。」

ムッシュのその言葉は俺にとって

大事な意味を持つのであった。

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