第6話 クレームブリュレ
〜3日後〜
・ディナーの営業中
「おい、祐司!
Aコースのデザートよろしく!」
待ってましたかの様に
「イエス ボス!」
と返事をして、切りの良いところで洗い物を終えて、やっと任され始めたポジションへ。
祐司はまずはデザートからというムッシュからの指示で、計量とフルーツの準備、盛り付けを任されはじめたのであった。
中でも難易度が高いのが、このAコースのデザートのクレームブリュレであった。
ココットという丸い器で蒸し焼きにしたプリンの様なものの上に砂糖をかけ
バーナーで焦がして上部をキャラメルにするデザートである。
これを味見した時に祐司の頬っぺたは落ちた。
旨すぎる、、、
そしてキャラメルの部分をスプーンでコンコンっと叩いて崩す喜び。
人生史上最高に美味しいデザートと彼は思ったのであった。
ただ、今の彼には難易度が高かった。
今のところ成功してお客さんに提供できたことは一度も無かったのだ。
プリンの部分はシェフがつくってくれて、仕上げなのだが、少し間違えると焦げる。
のせる砂糖の量の塩梅も難しい。
そして軍手をはめて行うのだが、じかんをかけてやると熱さが襲う。
だが、うまく出来た時は彼は至福の喜びを得るのであった。練習でも一回しかないが。。。
そしてお皿にフルーツと苺のソースを点々と流して出すのが彼の仕事である。
気合を入れて、砂糖を振りかける。
帰ってから、イメトレはしている。
妄想は得意だ。
わかったのは、バーナーは小刻みにしすぎない。傾けて端からスタートして溶けた部分を利用する。ということだ。
そして砂糖を均一に厚すぎず薄すぎず敷き詰めること。
シェフがやると器用に全面均一にできる。
あの髭は伊達ではない。ということか。
だが、彼は今回うまく行ったら、悠花さんの連絡先を聞こうと思っていた。
失敗は許されない。
砂糖を振りかける。
これは上手くいった。
そしてバーナー。今回はこっそりと新品を使っている。
残り少ないガスだと安定しないのがわかったからだ。
それはムッシュにやらせれば良い。
彼は姑息だが、自分なりに成功率を上げて挑んだのであった。
格闘すること15秒ほど。
「シェフ!どうっすか?」
完成品をシェフにチェックして貰う。
シェフは自分の仕事を終わらせて見にくる。
「祐司、上手くなったな。
これで出して良いぞ!」
祐司は上機嫌で悠花さんに
デザートのプレートを渡すのであった。
「お願いしまーす!
俺のスペシャルブリュレです!」
悠花さんは少し口角を上げながら
「すごいねー。美味しそう!デザートいきます。」とお客さんの元へとサービスしに行った。
祐司はお店では学校で取らないようなメモをしている。
レシピややり方を彼なりにまとめているのであった。
その1ページを切り取り、何やら数字を書きはじめた。
戻ってきた悠花さんが
「お客さん写真撮ってたよ。良かったね!」
と嬉しそうに言ってくれた。
俺は嬉しくて暑さだけでなく
身体が熱くなっていた。
嬉しさが込み上げていた。
水を一気に飲み、一言。
「悠花さん、デザート一緒に食べにいきたいっす!」
と先ほどの紙を渡しながら
祐司は初アタックをするのであった。
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