第5話 散歩
実際、時間つぶしの散歩なのか、あるいはとち狂った記憶の
歯磨きのチューブから中身を搾り出すことに、かなりのコツと力が必要なように、雑巾を絞って汚水を搾り出すのにも力がいるのだ。そんなふうに愚癡をポタポタと落として歩いている。
散歩はそんなものではない。
初めの一歩の際、そんな気はさらさらなかった。ただただ時間をつぶす人生の無駄使い程度のものだったろう。体力の浪費と活力の
後悔と愚癡、過去だけならまだしも、馬鹿げたことに先の不安とまで闘っている。過ぎたことを運に任すなら、まだ情に救われもするが、先のことを運、不運で味付けることほど無味乾燥な非力さはない。
中途半端にも、ここまで年食い潰してきて知ってるだろう、いずれにせよ運は尽きるんだと。減り始めたら大変な勢いでさ、何をしても止められず、寝ている間も目減りしていくが
(つづく)
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