第2話 川
上水を越え、仙川を
小さな橋のうえからでも見ていれば川も面白い。色々と幼い頃も、母のことも川波に乗って流れては来るが、いらぬ記憶とやらも流れていくようで、すぐに同じ記憶が同じ表情で次々と流れてくるのは、困る。芸がない金太郎のように記憶が同じ顔で、同じ表情で、からかうように流れているのだ。
そのなかに一本の空のペットボトルが
だから結局、懐かしいと美しいは
橋の欄干に、だれが書いたか落書きが、川に注ぐ私の視線を切ってはくれた。
そういえば、
幼い頃の観光だった。初めて父母に連れられて、姉と手を繋ぎ、行ったのは十月の薄い紅葉だった。
しかし、欄干の殴り書きか、道端の落書きだったか、霜と一緒に溶け出でたか、風に吹かれて飛んで来た分けでもあるまい、よみ人しらずと何故吐き捨てたか。その上それを
私はいま六月、
橋を渡りきったとて、道が別れている分けでもなく、続くのは一本道で、振り返って見る川も、ただただ一本の流れ。
おまえはこの世の地獄か、世は極楽かと、記憶に問われて答えられぬが、下げて見渡す流れの川の、汚れ淀みも照らされて、綺麗などとは野暮なこと、情け無情の花の色、言葉に詰まる顔色は、色と言えども殊更に、
(つづく)
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