第45話 安心と不安の別行動

 ブラックマが始動した。

 休憩所で堂々と隠れエ○チした後から。


 再び17階にダンジョンワープしてきた。


「20階で安全に活動するために、しばらくここでドロップアイテム集めを続ける」


 レオーナ号令の下、ミツミを先頭に歩き始める。

 忍者に索敵能力の有無は不明だが、ここならモンスターの足音が響くのでミツミの耳で場所の把握は容易だろう。

 休憩所での休憩行為に気付いたくらいだし。

 先頭を行かせる理由は不明だが、俺と頭のデキが違うし経験も豊富なので後から考えてみるとレオーナの判断が正解なのだろう。

 案外忍者には、斥候系の能力の大半を持っているか内包した能力があるのかもしれない。


 エルネシアも意識を切り替えたのか、騎士としてドウゾウの鼻や足での攻撃を巧みに捌いている。

 心なしか下半身のキレは悪いような気がしなくもない、若干力んでいるような内股になっているような?

 俺から持っていったミルクを腹に納めながら、平気な振りして日常と変わらぬ態度で過ごす美少女……やっべ、なんか目覚めそうになってるし燃えるんだけど!?


 △△▽▽◁▷◁▷


 材質なんて金属だったらなんでも良いんで、後衛3人には軽い金属甲冑を用意して移動時の体力消費を減らす方向で作っていく予定だ。

 しかしレオーナとアマルディアは剣と盾こそ鉄の物を作って渡してあるが、本人達は言わないだけでエルネシアと同じミスリル製の甲冑が欲しいはずだ。

 そんな素振そぶりを見せないので予想でしかないが、ミスリル回収における俺の負担を考えると言い出せないとかなんじゃないだろうか?


「そんなわけで50階に行ってくるわ」

「待って、シバだけが苦労する必要がない」

「そうだ、私もアマルディアも現状の装備で不足はしていないのだから……」


「2人共わかってんだろ、今用意しなくてもいずれ鋼鉄甲冑でも物足りないモンスターと戦う事になるって」

「それは……」


「この階なら仕事してない俺が抜けても戦闘を継続できるけど、この先上に行って鋼鉄じゃ耐えられないってなった時に、俺抜きで戦える階まで下がって戦う方が無駄だって、2人なら分かってんだろ」


 嘘はつきたくない、けど俺への負担等を考えると何も言えなくなる2人。


「楽なら後からさせて貰うから、今は自分の女のために苦労させてくれ」


 そう言い残してダンジョンワープで50階まで移動した。


 △△▽▽◁▷◁▷


 爆雷を撒きながら50階を歩き回り、爆発音がすればそっちに向かって走る。

 モンスターの集団を見つければ攻撃魔法の弾幕に拳を叩きつけて道を切り開き、俺とオストリッチーの背後にそれぞれライトウォールを使って奴等の逃げ場をなくす。


 薄く7色に光る胸骨を引き抜くとオストリッチーは消滅して、ミスリルの胸骨がドロップアイテムとしてそのまま手の中に残る。

 この方法で倒した時のみオストリッチーのアイテムドロップ率は100パーセントになる。


 胸骨を倉庫に収納しながら次の個体に向けて走り、同じ様に周囲の骨を砕いてからミスリルの胸骨を引き抜く。

 退路を絶たれ接近され、味方に当たるからと満足に魔法を使えなくなった魔法使い系のモンスターなんて凶熊の敵にはならない。


 乱戦に持ち込んで数の優位を十分に発揮させずに倒し、必要なら回復して次の集団を探して歩く。

 効率的に一周回れる順路が頭に入っているので、順路を巡りながら臨機応変に近くの集団に襲いかかる。


 単身ここへと来ているので魔力を節約するためにメンバーの甲冑は作っていない。

 その代わりに魔力は魔法に使い、時間効率を上げて見敵必殺を最速で行っている。

 モンスターは俺が1匹残らず駆逐してやるとばかりに蹂躙し、殲滅し、鏖殺していたら、切りの良い時間になっていたのでダンジョンワープで仲間の戦場である17階へ向かう。


「あっちか」


 ドウゾウを拳の一撃で消し飛ばしながら20分程歩き仲間達との合流をはたす。


「おーい、戻ったぞー、あと夕方だし帰るぞー」


 俺の足音に気付いていたミツミが、チームで俺から最も離れた位置に移動してこっちを指さしている。

 俺も成長しているので曲がり角の先くらいなら把握できる。

 ミツミの指先を見ていたエルネシア達は同時に俺の帰還に気付いたようで、唯一走り出したエルネシアと曲がり角でぶつかりそうになった。


「シバさん、おかえりなさ、きゃっ」


 左右の壁を蹴り超速の横っ飛びをしてエルネシアの背後に回り込み抱きとめる。

 あのままでも本人のバランス感覚で転倒する事もなかっただろうけど、甲冑越しでも美少女恋人なら抱きしめたいって思うじゃん?

 柔らかさ皆無だけど顔が近付くし、ね?


 エルネシアも生活が安定し始めて本来の性格が出始めたのか、強さや人間性をひっくるめてお互いを信頼してると確信しているからか、このところよく甘える様になったし俺の無茶にも見える行動を止めずに肯定する事が増えてきた。

 もしかして、これって愛?

 ズバリ、そうでしょうか?


「よく戻ったなシバ、怪我等はないか? 我等はそなたとの付き合いが短いゆえ、言葉で大丈夫と言われても今一実感できずにいてな、かなり心配しておったのだぞ」

「無事で良かった」


 レオーナとアマルディアからも心配の声と出迎えがあった。


「こいつと2人で延々ギリギリの生存生活を続けてたからな、生き死にを見極める力だけはかなりあるつもりだぜ?」

「それでも、私達が心配しない理由にはならんさ、おかえりシバ」

「おう、ただいまゼオラ、レオーナもアマルディアも心配かけたな」


 3人と会話していたら母性コンビが左右から抱きついてきた。


「おかあ、んんっ、お姉ちゃんはシバ君を信用してたからね、大丈夫だって思ってたよー」

「ママ達の愛は無限大だからね」

「その危ない設定、まだ続いてたんだ……それにここで長話しするわけにもいかないからな、全員集まってくれ続きは外に出てからにしよう」


 この声を合図に6人が抱きついてきて、ミツミは1番体の大きなネネの背中に、俺から隠れるように手を伸ばして触れていた。

 ダンジョンワープでダンジョンから出た瞬間にミツミは距離を取り、エルネシア達も離れさせた。

 今となってはたかが10キロ程度の道のりだが、仕事上がりの10キロはひと手間だなあと思ってしまう。


 かといってオストリッチー荷車は振動が凄すぎてまともに乗ってられそうにないしなー。

 帰路は女性陣の反省会をBGMにしながら、楽な移動ができる乗り物はないかと考えていた。

 ミツミとの関係も誰かと相談しなくちゃならないし、公私共に色々あり過ぎて困るぅぅぅ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る