第44話 知らぬは当事者1人なり

 16階ボス攻略後、17階入口にて休憩なう。


「シバ、この階での注意点は何かあるのか?」

「じゃあ、チーム全員分の甲冑のが完成まるまでは上に行かない事だな」


 俺が最上階の50階まで冒険を終えていると知ってから、レオーナは俺から最低限の情報収集をしている。

 ただあまり頼りすぎると不測の事態の対応力が養えないからと、絶対に必要な注意点のみを聞くだけにすると言ってきた。

 この辺の匙加減もベテランの勘なのだろう。

 個人的には小出しにせずに情報全部渡したいんだけどな。


「その理由は聞いておかねばな、どうしてなのだ?」

「20階のピラザニアは生命体目がけて全力で空を泳いで突撃してきて、肉を食い千切ろうと噛み付いてくるんだが金属だけは嫌うようで、どんな素材でも良いから金属製の全身防具を纏うとある程度までしか接近しなくなるんだよ」


「なるほど、しかしそなたは変身してダンジョンで冒険しているのではなかったのか?」


 俺のが移ったのか、レオーナもダンジョンでは冒険と言うようになったのか。


「当時訓練生への指導が始まってたからな、変身解除して試せる事は大体試したんだよ」

「なんでそういつもいつもシバさんは独断で危険な事を平気でしちゃうんですか、少しは心配する恋人の私達の身にもなってください!」

「うおっ、あっはいすいません、絶対しないとは誓えませんが可能な限りみんなに頼ると誓います、誓うから泣くなよ」


 全員にも聞こえるようにレオーナと質疑応答していたら、突然エルネシアに半泣きで迫られた。


「泣いちゃ悪いんですか、でも泣けてきちゃうんですから仕方がないじゃないですか、こんなに心配させてるのは一体誰だと思ってるんです。あの時だって置き手紙1つで急に居なくなって捨てられちゃったのかって不安にさせられましたし、帰ってきたら帰ってきたであの伝説の凶熊に囮になりに向かったって、大丈夫じゃなかったんだろうなって心配した直後に、時間はかかったけどなんとかぶっ倒してドロップアイテムにしてやったぜって聞かされて驚かされますし、今度は1人で50階まで行ってるし、危険なモンスターに変身を解除して生身で向かったって、これだけ聞かされて心配しないなら恋人なんてしてませんし、これだけ恋人に心配させてるんですからシバさんはもっと慎重に、もっと心配してる私達の事まで考えてから行動してください」


「ごめん、心配かけたな。全員1度外に出よう、このまま進んでも怪我するだけだ」


 エルネシアを抱きしめたまま5人の手が俺に触れて、ミツミがゼオラの服を掴んだのでダンジョンワープでダンジョンから脱出、3つある休憩所の俺達用に入る。

 抱えているエルネシアはコアラの子供の様にしがみついて離れようとしないので、そのままテーブルのイスに腰かける。

 ボス後の休憩はここを使った方が良さそうなものだが、ここだと緊張感が完全に緩んでしまうので短い休憩には不向きなのだそうだ。


 6腕の上4本でエルネシアの背中を抱きしめて兜を外して頭を撫でているのだが、弱さをみせてくれた彼女が可愛くてキュンキュンしちゃったら一部が俺の出番かと勘違いしてスタンダップしちゃった。


「いいですよ」


 それに気付いたエルネシアが耳元で囁いたので我慢できなかった。

 2人の下半身の衣類を収納すると下2本の腕で濡らしてからドッキングしてしまった。

 ヤバイこれ、今までにない感覚が凄いあって気持ちいい。

 あっ、耳の良い奴等に気付かれてニヤニヤされて、それを見て聴覚普通の奴等も察しやがった。

 ドッキングした時、粘性の高い水音がしたもんね、そりゃ気付くよね。

 だが抱き合う形で俺の背後のカベしか見えないエルは気付かず、ドッキングの感覚を堪能して浸っている。


「んっ……」


 動かせないからって脈動させて刺激してきましたよこの娘。

 お返しにこっちもビクンビクンさせて感じさせる。


「あっ」

「時間も取れた事だし、昨日の続きでチームの名前を決めようと思うのだが、皆異論はないか? ……なら始めよう」


 レオーナの宣言により有耶無耶になって中断されていた会議が再開した。


「なら私から………………隠れエ○チ」

「ーーーッ!」


 ああああああ、アマルディアの提案にエルネシアが反応して、手足も含めて全身でギュウギュウって締め付けてくるぅぅぅ!


「今後ずっと我等は隠れエ○チ呼ばわりさせるから却下だな、魅力的な行為ではあるのだがな」

「私いつかしてみたい」


 ビクンッ!

 また不規則な締め付けが、締め付けが。


「モンスターハンターはどんなパーティーの名前があったの? 私は当時ハンターとは無縁だったからよく知らなくて」


 流れを変えようとしてくれたのか、ネネがレオーナに問いかける。


「金色の輝き、真紅の誓い等パーティーのシンボルカラーを含めた名前。聖天に座せ、月火天翔等の空や頂きをイメージした名前。あとは5年10年してから後悔したパターンだと、未来の英雄だとかブレイブストーリーなんて少年の憧れを名前にして、笑える名付けセンスだけは英雄級だとか勇者だと笑われ続けて改名した等だな」

「結構いっぱいあるのねー」


 そうか、ネネは少女時代……

 パーティーの数だけ名前があるのは当然だけど、参考にするにはピンキリなんだよなあ。

 とりあえず確定してるのは無難な名前にしようって事だよな。


 その後も会議は穏やかに進み、反面エルネシアは持ち前の超敏感体質が災いして高みに至るし、その時のアレがこうなったので俺もビクンビクン出しちゃったりした。

 鼻の良い獣人2人が気付きこちらを見ていて、ミツミは顔を真っ赤にしてチラチラと、レオーナはニヤニヤしてやがる。

 今浄化すると光で他のメンバーにもばれるので、後でトイレに行く振りをして隠れて使おう。

 3腕で分身を抜いたら、こんな事だけ進歩した倉庫から直接着用する技術で服を出して目に見える証拠を隠す。


 証拠隠滅をしている間にチーム名はブラッククマを略してブラックマになった。

 俺が村人含む全員を何かしらから助けた人物なので、変身した俺をチームの名前にしたそうだ。

 シンボルカラーは黒で、いずれ黒熊のマークを考えて装備に装飾するんだとか。

 マークは女性陣が考えて全員が納得したら可決、装飾は村の職人に頼む事になった。

 何でもかんでも俺にさせてたら休めないからと気を遣われた。


 気遣いは嬉しいしありがたい事だが、それよりも耳に当たるエルネシアの熱い吐息の方が気になってしまって、再度スタンダップしそうなんだが、ががが。

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