第20話 充実しだす食材

 ダンジョン3階4階と早々にクリアして、現在昼頃で5階に上がって来たばかり。

 4階のモンスターはドクスリーフといって、クスリーフを毒々しい紫にしただけしか違いが無かった。

 ドロップアイテムは解毒ポーションの材料で、これも紫の広葉樹の葉だった。

 ネネと交互にファイアショットを使うだけの簡単なお仕事でした。


 歩いていると燃えていて地面で暴れている蝶か蛾が居た。

 襲ってくる様子もないのでしばらく観察していたら燃え死んだのか消滅した。


「エルちゃん、今の知ってる?」

「いえ、初めて見ますし聞いた事もない意味不明なモンスターです」

「他の冒険者が来てるなら、燃やしてあれだけ効果があったならほっとかないでしょうし、何かあって逃げてたとしても戦闘のあった魔力の乱れがないよのねえ」


 エルネシアに見られて首を振る。

 いや、魔力の乱れとかわかんねえから。

 血か本人の資質か知らんけど、ネネの感性が特別なんだろう。

 父が天使だって言ってたし、ひょっとしたら血なんじゃないだろうか。

 体格や性格は母譲りなんだろう、乳牛系獣人って言ってたし体も性格もおおらかで、母乳が出るのも案外元からそういう種族特性だったのかも知れない。かなりデリケートな問題だから聞けないし言わないけど。

 しかしアレはいい物だ。

 味は濃い牛乳そのものだし、一部の成長が実感できるし。

 あっ、また燃え死んだ。


「なあ、もしかしてアレって別の方法で倒したらアイテムドロップするとかじゃないか? 2時間かけて何も落とさないのは流石におかしいと思うんだが」

「そうかもしれません」

「なら順番に属性を試していきましょうか」

「応」


 そもそもアイテムドロップ率自体が100パーセントじゃないので、各属性十数回試してみてから次の属性へと変えていく。

 いや、しかし……


「まさか水で消火してから火と雷以外で倒さなきゃドロップなしとか、条件厳し過ぎんだろ!?」


 そうこの燃えるモンスターは水を属性魔法で消火して生き残らせてから燃えない水、地、風、光、闇、氷属性の魔法か物理攻撃で倒さないとアイテムをドロップしなかったのだ。

 なぜ雷がダメなのかはアイテムを見て判明した。

 絹糸だった。

 うん、通電したら簡単に発火するよねー。


「今は食料優先だからスルーするけど、いずれ服やシーツ用に集めに戻ってこよう」

『賛成』


 絹だから本来は蛾の前の蛹なんだけど、山羊が羊だったりするダンジョンだからあの燃えてるモンスターはワンチャン蝶なんて可能性もあるかもしれない。

 そんな事を思いながらボスが燃え尽きるのを待っていた。


 6階。

 空飛ぶ稲か麦のモンスターだった。

 農家じゃないから、稲か麦の見分けがつかないから。

 ドロップアイテムも大麦、小麦、玄米とさらに区別しにくくさせているし。

 だが、それにしても。


「米だーーーーーーーーーーーーーー!!」

『キャッ』

「パンにパスタだーーーーーーーーー!!」


 大麦は麦茶しか使い道知らないけど他は加工したら主食になる。

 酵母がないからパンよりナン向きかもしれないけど、炭水化物が食えるのは運動するエネルギー的に助かる。

 まだ食べてもないのに喜びに泣いてしまった。

 集めた小麦を木のボウルに入れて魔力を通して加工していく。

 小麦粉だけ分けて別のボウルに入れて塩と水だけて素手になって浄化してこねる。

 索敵が疎かになりそうなのでネネと交代する。


 完成した小麦粉の大玉を久しぶりに出したリュックサックに入れて運ぶ。

 時々熱操作で冷却して大体1時間寝かせる。

 あとは帰ってから切って茹でたらうどんになる。

 出汁になるのが魚肉しかないから、脱水してすり潰して粉末にすれば少しは使えるか?


 玄米は精米した方が美味いが、現状白米を食べて青汁を止めると脚気になりそうなので玄米で食べようと思う。

 羊肉に少しは脂肪があるので、これで三大栄養素はそろった。

 次は野菜と果物でビタミンとミネラルが欲しいところだが……


 7階。

 根で歩く木に様々な果物が成っているモンスターが現れた。


「増し増し氷槍こおりやり!! 走れ、もしかしたら果物がドロップしてるかもしれないぞ」

『ッ!』

「はい!」

「うん!」


 発見した瞬間に過去の経験から燃やさない魔法で倒してみた。

 ドロップしていたのは西瓜だった。


「西瓜はフルーツじゃねー、野菜だー!! でも食う」


 2人にまな板を持ってもらい西瓜を切る。

 まず四等分にしてから余りを倉庫に収納し、早速かぶりつく。


「うめー」

『美味しい』


 不審者の如くキョロキョロ索敵しながらも久しぶりの西瓜に舌鼓を打つ。

 また別の木が現れたので魔力増し増しアイスランスで倒して走る。西瓜を食べながら。

 次は桃だった。


「しばらくは2・6・7階を中心に狩りをして食料の充実をはかろう。その日の分が集まったら上に行って地図を埋めて、野菜の出る階も探そう」

「そうしましょう」

「はーい」


 効率化のためにも俺はソロで、エルネシアとネネはペアで別の階を回れるようにしたい。

 しかし果物の木は思ったよりもかなり危険だった。


 枝を振り回して果物を投げてくるのだが、これが爆弾なのだ。

 映画で見た手榴弾よりも低威力だが、エルネシアでさえ爆風で壁に叩きつけられ一時的に行動不能に陥った。

 そのくせ爆弾を全て使わせてから倒すとドロップアイテムはなくなる。

 残った果物の数か何かでドロップの種類等が決まるようだ。


「2人は下で稲モドキを狩るか?」

「ちょっと2人で相談させてね」


 ネネには何か考えがあるようで、エルネシアも同意見だったらしく確認だけで終わったようだ。


「先を見据えて私達がここで狩ります、相性が悪いからと避けていては上の階で通用しなくなりますから」

「私達を信じて、お願い」


 爆風で倒れたエルネシアの姿が思い浮かぶ。

 こんな時どう答えたら正解なのか、これまで読んできたラノベには載ってなかったと思う。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ※今回からしばらくはモンスターの名前が不明になります、良かったら予想してみてね。

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