第19話 ダンジョン3階
ダンジョン3階。
現れたのは白くない緑の方のネギだった。
二股の根っこを足代わりにしてテクテク歩いている。
「クスリーフ、ドロップアイテムはポーションの原料になります」
自分の腰の石剣を見て……
「俺の剣じゃ殴っても葉っぱが流れてダメージ与えられなさそう」
「そうですね、それにシバさんは働き過ぎなのでしばらくは私達に任せてください」
「そうね、私達に投げられる仕事は全部投げちゃって、シバ君はゆっくり休んでて」
クスリーフの本体? は根に近い部分のようで、葉をいくら切られても平気のようだった。
代わりに攻撃手段が葉による殴打か締めつけくらいなので、魔法で焼くか葉を切って踏み潰せば勝てるみたいだ。
ドロップアイテムは緑の広葉樹の葉。
クスリーフと葉の形状が違うんですけど、あのその。
休憩を挟みつつも既に7時間近くダンジョンで冒険しているので、そろそろ帰ろうと思う。
2人の手を取って念じてみる、予想通りだとすれば……ダンジョンワープ!
予想と違ってダンジョンの入口の外に出て来た。
好きな階に行けると思ったんだが……要検証だな。
「キャッ、なにこれ! シバ君エルちゃん、さっきまでダンジョンに居たのに、あっと言う間に外に出て来ちゃってるの」
「落ち着いてくださいネネさん、探索者のダンジョンワープです。ダンジョン内から一瞬で外に出たり到達済みの階に行けたりする能力です」
「えっ、あっ、そうかシバ君か、あーびっくりしたー」
「悪い、今から何するかって言うの忘れてたわ」
忘れちゃいけない報連相大事。
「もう夕方だし、走るぞ」
「はい」
「はーい」
万が一のモンスター放出を考えて、ダンジョン冒険用の新住居の居岩は10キロくらい離れた位置に置いてある。
さらに居岩の周囲を魔力増し増しロックウォールを東西南北に防壁として設置した。
ロックウォールの高さは40メートルにもなるので、家に出入りするには倉庫に収納して通ってまた出してとかなり厳重な守りにしてある。
日当たりも考えて庭を広く取ってあるし、いざとなったら防壁全てを外に新たに作って広げる事もできる。
物がないので新居はかなりカンタンな作りになっている。
かつての日本家屋のように煮炊き用の土間と、そこから上がった部屋が1つだけ、気候が暑いし囲炉裏はない。
部屋からは廊下に出られて脱衣所とさらに奥には風呂場。
臭い問題がどうなるか不明だったのでトイレは渡り廊下の先に作った。
『ただいま』
浄化で汚れを落としてから家に入る。
装備を収納するだけで脱げる俺がエルネシアの甲冑を脱ぐ手伝いをして、自分の装備を外し終えたネネも参加する。
これに関しては出発前に決めてあったのでスムーズに進んでいるが、改善点や問題があれば日常生活の中で修正されていくだろう。
戦闘に関しては俺達の中で1番知識も経験も豊富なエルネシアに装備の点検を任せて、ネネと2人土間で料理をする。
干し肉がなくなって魚肉になり、青汁と焼き魚肉だけの生活から肉と魚を選べる生活になった。
ここに来るまでに何十日? 何ヶ月? まだ半年は経ってないと思うけど、日本じゃ考えられない質と量の苦労のせいか、もう何年もこの世界に居る気がするよ。
煮炊き用の設備もないので石台の上で石の調理器具で作業をしていく。
肉はネネにカットを任せて薄切りにしてもらって、皿に盛り付けてもらってから最後に熱操作で熱を通して収納。
それにしてもあの切れない石の包丁でよくやるよ、魔法使いなのに料理の腕もいいのか……
海水から作った味付け用の塩を倉庫から出して別の皿に。
胡椒も白黒に分けて液体操作と熱操作を使って加工していく。
料理人
鑑定(食材)
調理知識
調理補正
うむ新職業ゲット、これは継続した調理環境で焼くだけじゃない食材加工をしたから?
食材加工だけなら干し肉作ってるしな。
別の皿に白黒胡椒も盛って今日の料理は完成だ。
食前に青汁の草を出したらオッケー。
なおこの青汁の草は根っこごと抜いて収納してあったりするので、試験的に少し庭に植えてある。
水を少なく、普通、多くと与える量を変えて根付くか増えるかの実験だ。
味は悪いが俺達はこれがあったから生きてこれたのは間違いないからな、ダンジョンでのドロップアイテムが偏っていた場合の栄養補給も、問題になる前から対応しておかなくちゃ。
ホント勇者の不撓不屈だったか、あのマイナス感情にならないやつ、あれには本当に感謝しかないわ。
あれがなかったなら色んな重圧に負けてもう死んでただろうしな。
誰だよ勇者(笑)なんて言ってた奴は、プリプリ。
エルネシアの点検が終わる頃なので青汁畑から帰る。
それぞれ用に作ったスリッパだが、中々好評だった。
靴を履くより段違いに手間がかからないからな、ラノベは無数にあったのにスリッパの描写が少ないなんて理解できない。
板張りの部屋に植物繊維マットを敷いてあるのでそこに座る。
大小卓はなく、お盆の上に青汁と肉と塩胡椒の皿を置いてそれぞれの前に。
手を合わせて。
『いただきます』
全員迷わず青汁の草の茎を噛んで、汁を吸いながら顔をしかめる。
ネネだけは体が大きいので2本だ、ご愁傷さまです。
肉の量は俺が2なら、エルネシアが3で、ネネが4だ。
これはエルネシアの運動量とネネの体格に合わせた必要カロリーを満たすためだ。
米等の主食がないので物足りないが、この物足りなさにも常にある空腹感にももう慣れた。
食休みを挟んでから入浴。
浴槽も3人用に縦横2メートルにまで広げてある。
俺は基本浴槽のどこか一辺の真ん中にもたれているので、エルネシアとネネは左右に座りもたれるか抱きついてきて、対面に座ると仕草やポーズで誘惑してくる、そして耐えきれずに……
味を知ってからというもの、誘惑に弱くなったなー。
風呂を出たら部屋に拡大して3人用になったマットレスで休む。
マットレスは風呂より大きく3メートル四方。
毎日の母乳効果か、やっとサイズイコール年齢になってきた。
目指せ、ハタチのムスコ!!
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